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お正月はあっという間に

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お正月明けの一週間は、何時もバタバタです。一日が、三日分ぐらいの密度で突き進んでいきます。それは始まった日の夕方に実感しました。本当に昨日までお正月だったのだろうかと。今年は、5日が月曜日なので、一日早く始まりました。お正月が短かったのでその影響もあるのでしょう。年末は、何時もの御常連に、学生時代からの旧友達、そして、年末に二回もいらっしゃったBellwoodさんを一人とカウントしても、10名もの人が"Consequence"を聴きに来てくれたのです。おかげで、連日の飲み会だったので、お正月には、ワインセラーが空になった程です(苦笑)。

連日出掛けていたので、落ち着いて聴く暇はありませんでしたが、それでも、夜遅く帰ってきても、まだ神様はご滞在しているのを確認していました。11月〜12月には相当集中して音を合わせていたので、年末以降は、音がずれていないかだけの確認で済んでいました。皆さんのご感想も良かったので一安心ですが、自分としては、まだまだだと思っています。

いままで、コンシーケンスでは、デジタル系の入力を中心にやってきました。アナログは、38/2トラのマスターテープ級の音源だけです。これは、次元の違う音ですから、じつはどのスピーカーでならしても、びっくりするようなおとがして、ある意味、参考にはなりません。emmの光ケーブルを壊してしまったので、それが元に戻らないと本当の音は出にくいのではと思っています。ほんの少しのさですが、ワールドカップのジャンプ見たく、全部完璧でないと優勝できないのと同じです。
うまくいった場合は、従来到底聴けなかった深い音がします。空気感が違いますね。オルガン曲では、スピーカーから出てくる音とは思えないほどの低く、深い音がします。低音専用の二つのキャビネットと、中高音用の四つのユニットは、筐体が分かれていますが、その理由が分かるような涼しい音がします。

現在、GRFのある部屋では、アナログレコードはGRFで聴いています。今は、GRFの前にコンシークエンスが置かれていますから、旧い録音のレコードは、デコラで聴いています。ほとんどの場合はこれで充分です。コンシーケンスではアナログレコードの帯域を超える音を目指しているので、今まで掛けませんでした。UNICORNと"Consequence"は、CD系のデジタル入力専用で聞いています。

昨日の晩、近くのAさんが、赤ワインご持参で遊びに来られました。最初は、クラシック系でどこまで音がまとまったかを聞いてもらっていましたが、お酒も入ってくると、歌謡曲や日本人のジャズになり、旧い録音の松尾和子などから聞き始めました。これらは、CDに復刻されているものです。それから、矢野顕子、最後は定番のテレサ・テンのルイードのライブで締めました。七時半頃からはじめたのですが、12時をだいぶ回って降り、午前一時に近い時間まで、それらのCDを聞いていました。

スコッチは昨日は、アイラモルトのLAGAVULINでした。ビートのきいた本場の味で、マッサンがいくら頑張っても昭和の初めの頃にこの味は受け入れられなかったでしょう。いまScotchは円安で相当の値上がりをしています。一昨年までの円高の時代に買ったものなので、とても安かったのですが、これからは、1.5倍ぐらいするでしょう。そのJPOPSの音を聴いていて、ひょっとしたらアナログレコードも音色で楽しめるかも知れないと、酔っ払って考えていました。

土曜日になって、年末オーバーホールに出していた前から愛用しているCD34改が戻ってきました。今まで、別々に比較したことはあったのですが、二台並べても試聴は初めてです。二台並べると、今回のZ型のバージョンで、どれほど性能が上がったのかが解ります。人間というのは、つくづく相対的な比較しかできないのものだと思いました。20年以上少しずつ改良を加えられた機械です。2011年の三月に改造したときの写真では、四回の改造が行われていました。


今回戻ってきたら、ヴァージョン7まで進んでいました。Z型以外では、一番新しい改造がなされたようです。

二台並べたのは初めてです。もちろんケーブルや、ACタップによっても音は変わりますから、厳密の意味での比較は結構難しいのです。Z型は一言で言うと低域の解像度が違い、音が自然ですね。14ビットだから、44.1KHzだからというような比較はまったく無意味です。市販の車と、同じ車だけど、徹底してチューンアップしているワークスのレーシングカーほど違います。1400ccのエンジンでも、馬力もトルクも立ち上がりもまったく違う車になるのと同じです。問題は、当方にそれをドライブする腕があるかと問われるのです。

この写真を見ていて気がつきました。CD34とNagraのIV-SJはほとんど一緒に時代ですね。片方は時代を変えていく機械、片方はアナログ技術の集大成です。用途がコンシュマー用とプロ用途の違いなので、当時の価格は、40倍も違っていましたが、今は、CD34改の方が、費用が掛かっているかもしれません。時代の変遷ですね。これらを使ってならしているユニコーンもどんどん化けていきます。

三連休だけど

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一昨年までの休日という休日は、必ずどなたが来られていました。一昨年の暮れに「行ったり来たりの」のドアを閉めさせていただいてからは、ご常連だけが訪れる静かな部屋になりました。この三連休は表の寒さを忘れるほど、いままで聴けていなかったCDを掛けています。例えばBOX物です。 DGGの赤い箱と黄色い箱は大分聴いてきました。それでも、全然聴いていない分野の曲もあります。あまり聴かないのはDECCAのBOXです。DGGに比べると演奏者が限定されるのと、音がやはりきつく感じられるからです。それと押し入れの中を見たら、PHILIPSの青い箱がありました。このCDのほとんどはレコードでも持っていて、以前から聴いている演奏なので、文字通りお蔵入りしていました。

アルゲリッチのPHILIPS録音を調べていたら、最初の頃の録音にこれがありました。三番目の夫ですが、彼女からして見れば、ある短い時期の恋人ぐらいなのでしょうが、演奏も音もすごいです。

最近は日本でも活躍しているデ・ワールトのグラン パルティータです。クレンペラーから比べると随分若々しい演奏ですが、楽器の音色は旧い感じの音です。

逆に何時までも、新鮮で良い音なのは、シェリングとへブラーの演奏です。ベートーヴェンも素晴らしいですが、モーツァルトもピアノが冴え渡ります。レコードもCDもどちらも良い音です。どちらで掛けても同じ音がしなければなりません。

昨日の日曜美術館でも再放送していたホイッスラーの名画を使ったジャケットは、ハイティンクのドッビシーです。表題の他にラ・メールのアルバムも入っています。典型的なPHILIPS・ハイティンクのサワサワサウンドが楽しめます。

逆にこちらは、アラウのピアノの響きが楽しめます。アラウはどの曲を聴いても、その堂々とした響きと、ピアノ本来の深い音がします。不思議なピアニストです。

最後は、有名なイ・ムジチの四季です。これは二回目の録音で、一層響きが洗練されています。久しぶりに聴きました。

これらのCDを聴きながら、二つのCD34改の音の差を聴き比べていました。やはりくらべてみると、大分特性に差があります。新しい方のZ型は、低域の深さや高域の伸びが良く出るようです。しかし、全体のバランスを考えると戻ってきた以前からある方のCD34改が聴きやすいのです。この様にピアノ曲、ヴァイオリンソナタ、ピアノ協奏曲、弦楽合奏、そして管弦楽と様々な分野の、新旧の録音を聴き比べて、和室のユニコーンをどう選ぶかを見極めてきました。

この中から、二三枚を隣の部屋に持って行ってどの様な違いが有るかを確かめてきました。ユニコーンでのバランスの取り方が、音楽を楽しんでいくときには必要だからです。取り替え、違うボックスからもCDを取り出し、聞き比べを行って行きました。孤独な作業ですが、心は充実して行きます。三連休は有意義に過ごせたようです。
 
追伸

先日掛けたブーレーズのペトルーシュカの深い低音が、微妙に違います。これらの最低音は、超低域が良くなったZ型の方が良いですね。どうやらDGにはZ型が、PHILIPSにはバランス重視の前からのCD34改が合うようです。夜になると電源事情がよくなるのか、世間が静かになるのか、音の差が増してきます。やはり冬の夜は良い音がします。



いつもの和室で

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11月より続いてきた"Consequence"騒動も、暮れのお披露目公演で一応、決着が付いたようです。勿論、更なる高みに向かって、いろいろと構想は練っていますが、正月中聴いていたら、今の私のレヴェルでは、出来ることはやり尽くしたと思いました。厳しいご常連さん達からの、暗黙の評価も頂いたようだし、ハレの装置でばかりは聴いていられないので、普段使いのユニコーンに戻ってきたのです。戻ってきた当初は、最低音や最高音の伸びがやはり足りないと感じましたが、ネジの調整(締めるばかりではなく少し戻しもします)も行い、全体のバランスを整えていきました。

CD34の聴き比べも済まし、emmが大きな部屋に行っている以上、こちらには最新?仕様のCD34Z改の方を残しました。基本的には、14BitのままのDAコンバーターやチップを使っているので、詰め込みすぎの新しいCDは時として掛からない時もあるのですが、昔の規格のゆったりとしたタイプのCDとは相性が抜群です。今日はその中から、1990年製のピリーシュのモーツァルトのピアノソナタと、チョン・ミョンフンのプロコイエフのロミオとジュリエットを聴いてみました。

まだ、West Germanyと印刷されている1990年のピリーシュは、とてもきれいですね。考えてみればもう、25年も経っているのです。1944年生まれですから、去年70歳を迎えました。年齢を感じさせないピアンノのタッチは、ますます凄みを帯びてきました。あの小柄の身体からどうしてと思えるほどの、切れ味と力強さを感じます。このCDは音が大変良く、Aさんのところでも、またそれを聞かれたMさんのところでも、定番としてかかります。じつは、ピリーシュ、(昔はピリスいまはピレッシュと書かれるようですが、発音を聞くと私の耳にはピリーシュと聞こえます)のモーツァルトは、6枚有るのですが、この盤は持っていませんでした。日本盤が普及してなかなか原盤が買えなかったからです。先日、通販サイトを見ていたらimport盤もあるということで、取り寄せたら、Made in West Germanyの売れ残りでした。嬉しいですね。音の深さが違います。

いっぽう、1994年のプロコイエフのロミオとジュリエットは永年愛聴している定番です。コンセルトヘボウのオーケストレーションが見事で、おとも最高水準ですね。あの頃のチョン・ミョンフンは輝いていました。日本でも何回か聴きましたが、巨匠ぶって、大向こうを唸らせようとする意図が見えるのが気になり、最近は余りききませんし、CDも余りでないようです。韓国へのDGのプロモーションだったのでしょうか?一時の小澤と同じ感じです。

しかし、この演奏は、その意図が良い方に転がった例です。これとバスティーユの幻想も良いですね。ゲルギエフのレパートリーと重なるのも、余りメジャーから出なくなった理由でしょうか?コンセルトヘボウの力量がよく現れています。バーンスタインのコンセルトヘボウ的な迫力の有る演奏です。ユニコーンから信じられないような低域が出てくるので、テスト的に聴くこともあります。

しかし、この曲は、何と言ってもムラヴィンスキーです。音は少し旧いのですが、一体感と迫力では、他を寄せ付けません。1973年の文化会館で聴いたあの演奏は、忘れられません。

夕方、ファイル化した膨大なアーカイブをどう活用するかの、打ち合わせで来られた専門家の方にも、実はCDの音がどれほどすごいかを聴いていただきました。私自身は、SACDでなければとは思っていません。CDの音をまず全部出して聴いてみるということが大事だからです。その上で、SACDの広大なダイナミクスをどう使うかの問題が出てくるからです。CDがまともに鳴らない装置でSACDが鳴るわけは無いのです。いまは音色とマスターリングの違いを聴いているだけですね。その意味でCD34が持っているいろいろなポテンシャルも再度吟味する必要があるのです。

和室のケーブル選び

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久しぶりにオーディオ的な話です。ん?何時もオーディオ的な話しかしていないではないかと、突っ込まれそうですが、ケーブルの話は余りしていません。これは余りにも舞台裏的な話になるからです。しかし、年末に"Consequence"の調整で手こずっていたのもケーブル選びでした。例外はSD05用の配線で、これは全くケーブルを選びません。それと、NagraやStuderのケーブルも普通の物で問題は無いのです。SPケーブルもメーター数百円、時には数十円のケーブルを使用しています。業務用の二芯シールド線は、XLRの端子が付いても二千円ぐらいという破格な値段で、扱われています。いかにオーディオ用のケーブルが高いかお解りでしょう。

ケーブルは、電源ケーブルも音が変わります。でも、これは信頼置ける製品ならば、それほど血眼になることはありません。問題は、アナログ信号のインターコネックトケーブルです。CDプレーヤーからプリアンプ、プリからメインへと二種類必要です。私は20年来MITケーブルを愛用しています。それも、二十年前の初期の製品だけです。MITがトランスペアリメント社に依託していた頃の製品ですね。現在のねずみ色の製品や、型番の違う物は使っていません。当然新しく買うときは、中古品の中からさがします。品数が限定されているのと、いまだに愛用されている方が多く、滅多に出て来ません。

ケーブルには、グレードが3〜4種類あり、素のベージュ色の被覆の柔らかいケーブルと、その上に黒いネットが被さり、端子にRCが入ったタイプ、そして最高級と呼ばれている、出口側に四角い箱が付いたタイプです。値段は二乗で違っていました。特にSPケーブルはとても電線とは思えないほど価格が高く、香港まで飛行機に乗って、観光してきてもまだ半値以下という差があったのです。現在でも、SPより高いケーブルがありますね。冷静になって考えると、とても滑稽な光景ですが、その当人は熱くなっていますから、女房子供を質に入れてもという状態になっています。身近にそのような本末転倒を見て、絶句したこともありました。

でも、その当時、比較的安価で購入出来たケーブルがいまだに主役の座を降りていないのも事実です。今回の"Consequence"騒ぎの最終コーナーでは、そのケーブルの選択に時間が掛かりました。数あるケーブルの組み合わせを解っていても、やり直さなければならないからです。将棋や碁の読み筋の取捨選択と同じだと書きました。ダメだと解っていても、通常ではない組み合わせにひょっとしたら、奇手が潜んでいるかもしれないからです。青色LEDの素材選びみたいな気の遠くなるほどの検証を行わなければなりません。MITだけに限定しているのでまだ救われています。

それでも、三種類で長さの違いも三通り合計9種類のケーブルをCDとプリ、プリとメインの間で検証するのは、簡単ではありません。一応、プリとメイン間は固定して行い、CD・プリ間が決まってから、距離の短い二種類を比べてみました。ですから、9種類+二通りです。各々元に戻しながらのA・B比較ですから、いうは易く実験は大変です。ケーブルは、距離の短い方がフレッシュな音がしますが、低域や中域とのバランスを考えると、短いケーブルが良いとは限りません。また高級なBOX付きが良いとも限らないのです。箱の中には、LとCが入っていますから、高域や低域どちらから減衰します。箱入りよりCだけのグレードの方が、力強い場合もあるのです。

実際に使用する場合は、決まったケーブルが二本は要ることになります。しかし、今となっては同じ物を二種類揃えるのは至難の業です。現在でも高い方のケーブルは、プリアンプより高いこともあります。そこで、世界中のサイトをみて今回は、ヨーロッパから取り寄せました。香港まで要った理由の最高級グレードのSPケーブルも、"Consequence"用にも必要だったので購入しました。このグレードは20年経っても余り変わりません。それでも当時の定価の20%ぐらいでした。半値八掛けの半値ですね(笑い)

結果は、予想通り、箱付きの最短が一番良いという単純な結論でした。それが問題なんです。同じケーブルを"Consequence"とユニコーン両方に揃えられないからです。お金の問題ではなく、物が見つからないのです。ヨーロッパで見付けたときには、一日ちがいで逃しました。そんな物です。では次の1.5mが良いかというと事は簡単ではなく、2mの方がバランスが取れていました。

その検証を進めるために使用したのは、DGやPHILIPSより幾分高域がきついといわれるDECCAのCDでした。その低域と幾分硬質な高域とのバランスを取るためです。最初は、クリフォード・カーゾンのピアノで、ブリテンが指揮をした、モーツァルトのピアノ協奏曲、冒頭の20番第一楽章ニ短調の暗い嵐がふくようなオーケストラの曲調とピアノの響きを聴きました。そして、27番の二楽章変ホ長調のモーツァルト晩年の諦観がどこまで表現されるかを聴いてみました。

一転して今度は、ラローチャのピアノで、グラナドスのゴイェスカス、ゴヤの絵画を見た印象を書いた曲です。ラローチャのピアノが素晴らしいです。アルゲリッチのような力強いタッチでありながら、外連味がありませんから音楽がとても優しく、また力強く響きます。スペインの太陽のような明るい感じがする素敵な演奏です。音がいいですね。そのピアノ本来のスケール感がどの様に出るかが聴き所です。

それと反対なのは、シフのピアノです。曲はゴールドベルグ変奏曲。グールドのような大向こうを唸らせるような驚きはありません。静かに変奏が展開していき、バッハの世界に入り込めます。柔らかなタッチがどこまで出るかが問題ですね。

最後は、DECCA初めてのデジタル録音盤です。これ以前には、DENONがPCM録音に取り組んでいただけでした。ボスコフスキーの弾き振りのウィーンフィルニューイヤーコンサート1979年の収録です。メジャーレーベル最初のデジタル録音盤で、アナログ録音に比べ音が硬く感じた録音です。デジタルを意識しすぎたのですね。マイクのアレンジやダイナミックの設定、初めてのことで戸惑いもあったことでしょう。これ以降、録音はDDDでデジタル化されました。それ以降のデジタル録音をアナログレコードで聴いて、レコードの方が音が良いというのも、おかしな事です。DAコンバートの質の問題なのですが。

この頃にデジタル録音された演奏を聴くと、まだ、CDが出現する前ですから、レコードのダイナミックレンジにあわせた録音がされています。本格的にデジタル録音と呼ばれるのは、90年以降になってからですね。そのあとの音質は安定してきました。ADDの時代のCDは、アナログレコードの制約の影響を受けていました。アンプの性能もS/N比やダイナミックレンジ、クロストークがレコードの標準だったのです。SP自身は私が、いまだにTANNOYやQUADのSPを使用しているのをご覧のように、CDにしっかり対応しています。アンプも実用上ほとんど問題有りません。問題はCDプレーヤーの再生能力だったのです。

いまだに、レコードの方が音が良いと声を大きくして言われる方を見ると、とても残念に思いますし、オーディオファンとしては、悔しくもあります。アナログ録音はテープが元だし、テープの方が数段音が上なのです。その音を知らず、いまだにカートリッジやアームの問題をぶり返しているのは、自分で世界を狭めているのだと思わざるを得ません。

また、インサイドフォース無用論などを見ると、頭の中でオーディオをしているだけで、実際の音を聞いていないのだとすぐに解りますね。インサイドフォースキャンセラーという名前はどうでも良いのです。その値を0.1g単位で変えると、ヴォーカルの位置が10センチ単位で変わる現実を聴いていないから、そんな話を出来るのだと呆れました。横方向に引っ張られるだけではありません。45/45ステレオでは、横のフォースが変われば、針の溝に当たる部分も変わってきます。その接触を高めることが目的なのです。針が引っ張られているのと、そこから拾われている音は、どちらが目的なのか考えなくとも解る事です。インサイドフォースキャンセラーの影響が気になるなら、リニアアームにすれば良いのです。そしてリニアトラッキングの世界は、いかにCD的な音がするのかに気がつけば、進歩するのですが・・・。

ステレオレコード自体が、妥協と商売の産物なのです。アナログにこだわるのなら、確かに使い勝手は悪いですが、線速度が一定で、クロストークの少ないオープンテープやDATの音を一度聴いてみることが肝心ですね。そしてレコードに成る前の音のテープの音も!実はCDも製盤前の音と、プレスで製作された音は違います。それは同じマスターからCD-AとCD-Rの音を聴き比べて見れば解ります。その違いの認識が、私がテープからDSDファイルをしている理由です。

ケーブルの話の筈でしたが、どうしても、検証も実験もしない、本や人の言っていることだけを鵜呑みにするオーディオが多いので、苦言が出てきます。私も、頭の硬い小言爺さんの世界に足を突っ込みはじめたのでしょう。オーディオに必要な物は、フットワークの軽さと、客観的な物の判断力ですね。そして間違っていると解ったらすぐに新たな道を当たることです。あっ、これは何でも同じですね。物事は簡単には結論は出ません。でも、簡単には諦めずに検証を継続することです。5〜10年経つと自ずから見えてくることも沢山あります。時間が掛かるから、登る山が高いから面白いのですね。




動き過ぎかも

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まだうす暗い通りは気温一度。風がないから立っていられるけど、痺れるような感覚の中来ないタクシーを待っていました。高円寺駅のホームに立つと、いつもの様に特急列車の通過待ちで、続けて来た電車は、二台分の乗客で満員。マスクを忘れたのに気がついた時は、後の祭り。それでも、新宿、四谷で相当数がおり、神田を過ぎて東京駅の怖いエスカレーターに乗ったときは、まだ時間が早いせいか東京駅の構内は空いている方でした。

空いている新大阪行きの列車を選び、もうホームで待っている列車に、席を間違えないように乗ったのは、発車10分前以上でした。折り返しでは無いので、乗車時間が早いのでしょう。早速、コンピューターを拡げて、今日の仕事の資料作りに。本来なら昨日のうちにやっておかなければならないのだけど、最近は朝の内しか頭が動かないので仕方が無く作業に専念。発車間際に女性が隣の席に来られました。慌てて隣の席に拡げていた携帯やお茶などを片付けていると、気を聞かせてくれた彼女は、違う席を車掌にリクエスト。反対側の席に品川まで座っていたのですが、そこは品川からの人が座る席。彼女は後ろの方に空いた席を見付け移って行かれました。

品川をでたら検札が来て、係りの女性が言われるのは、私の席は一つ後ろとのこと。何と彼女の席に私が座っていたことに!赤面して、後方の席まで謝りに言ったら、何とも言えない優しい笑顔で、気にしないで良いのよ!こんなに空いているのだからと慰めてくれました。その優しい笑顔に、接客になれている方だと思いました。多分五十台半ばの頃だと思われますが、その笑顔に癒されました。

京都で降りるとき今一度、お礼を言おうと思って降車口の近くに席に寄っていったら、背をしっかり倒して寝られていました。旅慣れしている人です。恐らく経営者だと思われます。以前はお隣の席の女性が、男性顔向けにバリバリと仕事をされているのにビックリ!その方の青と白のコンビネーションも忘れられません。早起きすると良いことはあるのですが、席を変わっていただいたのには、申し分けなく思いました。

京都から奈良行きの近鉄は、仕事の人の時間は終わり、学生の通学時間帯です。この沿線には沢山の大学が出来ました。車内に一杯だったその子らも田辺の駅で降りると、奈良駅のローカル線急行は一気に平均年齢が上がりました。奈良駅は、何時もローカル駅。地下からタクシー乗り場に出る階段もエスカレーターもありません。お昼休みも使って二時間の打ち合わせを終えると、すでに一時を回っています。

大阪から来た車に便乗して、そのまま春日山の横の抜け道を使って、旧い裏道を上り下りして、名阪国道にショートカットで合流しました。地元の人に教わった抜け道です。峠を二つ越えるのですが、その坂が急なのには驚かされます。この道を通ると10キロほど短いのと、天理まで行かないで済むので、渋滞しているときは30分ぐらい早道です。でた名阪国道には何も無いので、次の目的地の亀山で遅い昼食を取ることにしました。

亀山の街で、カレーうどんをカキ込むと、もう三時です。こんどは高速に戻って、東名阪から伊勢湾自動車道へ。豊田からはふだんは混むので滅多に通ることがない東名に足を踏み入れました。岡崎のあたりの混雑も、新東名が開通すれば緩和されるでしょうが、路肩の崩落などで、今期末の開通が一年順延されたの残念ですね。

車の目的地は、大井川を越えた藤枝駅。ちなみにその大井川の西側は60Hz、東側は50Hzです。そこで私を降ろして貰い、在来線で静岡行きに乗ったのは、6時45分を過ぎていました。電車は五分遅れでようやく到着。乗った途端に、マスクを持っていないことまた気がつきました。若い人は傍若無人に咳をします。隣でも、対面でも咳が止まりません。静岡県はいまインフルエンザが大流行中だと思い出しました。静岡駅までの5駅が長かったです。静岡駅では、30分の待ち合わせで、静岡駅にとまるひかりに乗りました。三島駅も停まりますから、準急みたいな物です。止まらないのは、隣の新富士と熱海、小田原だけですから。

東京駅に滑り込んだのは、九時少し前。朝、ここを発って、14時間後に戻ってきたことになります。途中の300キロを車で通ったことを考えると、往復1000キロを打ち合わせ時間を引くと、ほぼ10時間ですから、平均時速100キロで移動していたことになります。すこし、動き過ぎかもしれませんね(笑)。

久しぶりに椀方さんが

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寒い中、上京中だった椀方さんが、久しぶりに来宅されました。前回は暑い最中の8月でしたから、真夏と真冬に来られたことになります。その間、大阪では何回も会っていますから、久しぶりという感じはしません。一昨日の奈良の時も、おおさかでお会いする可能性もありました。一泊二日の行程を一日に済ませたので、あのような強行軍になった訳です。大阪と言えば椀方さんのGerman Physiks導入で久しくお伺いしていない(Y)さんのところへもお邪魔しなければならないのですが、来週は(Y)さんもご上京するので、東京でお会いできるかもしれません。

いつもの様に美味しいパンやハムなどのつまみをご持参頂いたので、当方は、輸入元から取り寄せている、イタリアワインを開けました。今回は、新しい銘柄でしたが、私の味の好みを知っている、ワインの輸入元は間違いないワインを送ってくれます。寒いので、やはり赤ワインからスタートしました。う〜ん、美味しいです。

最初は和室で座り込み、つまみを食べながら、定番のピリシュのモーツァルトから聴き始めました。一昨日の晩も、少しだけ寄ったご近所のAさんのところでも鳴っていた名盤です。彼のシルバーGRFの鳴り方と比較していました。当然半世紀以上も鳴っているシルバーのユニットまでは行きませんが、交換して三年目を迎えたので、だいぶ音が熟れてきました。椀方さんの貴婦人は、まだ新婚さんですから、これからの教育次第ですね(笑い)。

同じく定番のハーディングのマーラーの十番を聴きながら、調整の方法などを話しました。先日来られたCさんのアドヴァイスで、全音域がなりホワイトノイズで、位置調整を行い、部屋の条件を整えられているそうです。椀方さんのところの次のステップは、真ん中のラックの背を低くして、棚の中から使用するCDプレーヤーやパワーアンプを出して音を開放する方向ですね。

ケーブルの音の差も聴いていただきました。1メートルの長さより、2メートルの方が全体のバランスが取れているようです。中間の1.5メートルも揃えたのですが、どちら付かずになってしまいました。同じケーブルでも面白いモノです。その実験は、€が150円の年末に揃えたので、二割程度高い買い物になってしまいました。為替はこの様な趣味の世界にも大きな影響を及ぼします。

二本目のワインを開ける頃、ようやく隣の部屋に移って、"Consequence"の音を聞いていただきました。こちらの音は、ふつうのSPから比べると、低域、高域が、オクターブづつ拡がって聞こえます。低域は、確かに出ているのですが、高域は普通のSPでも帯域としては同じだけ出ているはずです。しかし、その高域のでかたエネルギー感がまったく違い、その高域の伸びが、音楽のエネルギーを変えています。音の伸び、広がり、クレッシェンドの大きさがまったく違って聞こえてくるのです。そのダイナミックレンジの広さ大きさが、音楽の深さとなって現れてきます。


コンシークエンスを聞いていたのは、3時間程でしょうか?その間に聞いていただいたCDはこの12枚ほどです。椀方さんにはどの様に聞こえたのでしょうか?ご感想が楽しみです。音楽を夢中になって聞いていたら、気がついたときは、もう、11時を回っていました。東京はまだまだ帰れますが、大阪では11時がタイムリミットですね。おもては厳しく冷え込んでいました。

ご愛用の散歩用の帽子を被られて来た道を戻って行かれる椀方さんは、子供の頃にみた絵本の中の足長おじさんの様でした。

翌日はBellwoodさん邸で

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昨晩、街灯の下を遠くなっていく椀方さんの後ろ姿を見ていたら、子供の頃にみた足長おじさんのシルエットを思い出しました。昨日は、赤ワイン二本弱ですから、それほど負担が無く、朝は起きられました。椀方さんもはやくから動きだし、Bellwoodさん邸に行く前に、上野の美術館に寄られてから向かうそうです。今日から、東京美術館は新印象派の展覧会が始まりました。オルセーやメトロポリタンなど世界中からこの展覧会のために集まってきているようです。

私は、昨日の簡単な印象記をブログに書いていました。気がつくと、約束の時間の一時間前を過ぎています。これからシャワーを浴びて、準備すると、駅での待ち合わせ時間には間に合わないので、直接Bellwood邸に行くことにしました。いそいで、昨晩掛けたCDの写真を取り込むと、保存を非公開でしたつもりが、公開になっていたようです。写真のない中途半端な記事が帰ってくるまで載っていたようです。老人力の所為ですね〜。


Bellwood邸には、埼京線で向かうことになるので、新宿駅での乗り換えを考えると、地下鉄丸ノ内線では遠いので、高円寺から中央・総武線の先頭付近に乗って、乗り換えの距離を短くしようと思いました。新宿駅の南口のまだ南に埼京線のホームはあるからです。新宿駅と言うより代々木駅北口といった方が近いぐらいです。代々木駅から連絡通路を作って貰った方が、近いですね。埼京線の大宮方面行きは、折り返し電車と通過電車ではホームが変わります。その案内板がホームに降りる連絡橋になく、何時もどちらが早く出るのかホームの掲示板が見えるところまで降りないと解りません。不親切ですね。

不親切と言えば、中野駅の案内も解りにくく、中野止まりの東西線で来ると、その先高円寺行きがどのホームに来るのか解りません。総武線・東西線・中央線快速の三本の可能性があるからです。また、反対に東西線で早稲田方面い行くとき、東西線の青い車両ではなく黄色の総武線の車両が、東西線を通り、その先の高速鉄道に繋がっているようです。UNICORNさんのお宅に行くとき、いつも中野駅で困惑します。老人力の付いていた昨今は、本当に乗り換えに余裕を持たないと行けなくなりました。

ようやく乗った快速の埼京線は、狭軌のレール規格限界まで飛ばして、大揺れで池袋まで止まりません。その後は、板橋、十条と各駅で止まります。十条駅のホームに入るときに姥ヶ橋に通じる道を横切りました。そこでここから車でBellwood邸に向かった方が早いと判断しました。電話連絡した新宿駅から、二十分ぐらいで着いた時は、近くの公園を見てきた椀方さんの到着時間とほとんど同じでした。車だったら環七を通れば、20分ぐらいで行ける距離なのですが、電車だと小一時間掛かります。

Bellwoodさんとは、平均すればすれば月に二回以上は必ずどこかで会っています。年末は、"Consequence"を聴きに二回も来られました。しかし、私がBellwoodさんのお宅を訪ねるのは、去年の4月以来でした。トントンコツコツを実践しました。それから、室内の音響グッズは随分無くなり、普通のリヴィングルームのようにスッキリしています。ウォーミングアップで小さな音で鳴らされているオーケストラの音も、随分まとまった音で鳴っています。

音のバランスを取るために、タッドさんと杉並でDSD録音したベースの音を鳴らしました。これはワンポイントマイクでステレオ録音したなまのコントラバスですから、迫力の有る音がします。最近のスタジオ録音のベースは、一本にマイクで録って、調整盤で調整してありますから、奥行きのあるべースの存在感と実体感が取れていません。そのソーズを使ってコントラバスの音の位置と立体感を調整してみました。

Bellwoodさんは、右に音が寄るのを気にされていて、何時も左に寄っている傾向にあります。今日もこのコントラバスの音が左に寄っていました。実際に録音現場を知っている私に、音量を調整させていただきました。マルチアンプのヴォリュームを触っていたら、全く値が違いすぎたので、やはりSPの位置を少しだけ修正して見ました。ほんの1ミリでもバランスはがらりと変わります。調整が煮詰まっていくと、最後の微調整で、がらりとバランスが変わることがあります。

バランスが整ったので、マーラーの曲がかかりはじめました。ハイレゾのダウンロードだそうです。誰の演奏家といつもの私の家で訊いているクイズが彼から出ました。出されるとやはり緊張しますね(笑)演奏スタイル、音のピッチ、歌い回し方から、T.Tの演奏ではと答えました。ティルソン・トーマスですね。ピンポーンで何とか面目を保ちました(汗)。

そうこうしているうちにお昼を回ったので、ハムとチーズ、オリーブの美味しいパンが出され、オーストラリアの辛口スパークリングワインが開けられました。お酒が大好きな三人ですから、美味しいつまみと一緒にスパークリングワインや赤ワインも開けられて音楽もどんどんかかりました。安定したおとはどんどんよくなって行き、何でも来いという感じになって来ました。会話もすすみ本当に楽しいですね。

夕方の飛行機で大阪に帰る椀方さんをバスに送り込んでから、また、二人で、今度は日本酒をはじめました。散々飲んだあとで冷やは効きます。酔いがいっぺんに回り、タクシーで帰ってきたことは、覚えているのですが、その辺から詳しいことは思い出せません。翌日、Bellwoodさんは、芝刈りに無事に行けたのでしょうか?(爆)


半年ぶりのGRF邸でUNICORNとCONSEQUENCEを聴く

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先週末の金曜日に東京出張が入ったので、予てから伺いたかったマイミクお二人の御宅訪問が適いました。

金曜夜はGRFさんの御宅で、German PhysiksのDDDユニットを積む初期型UNICORNの鳴りっぷりを確認し、DYNAUDIOのフラッグシップCONSEQUENCEでコンサートを堪能した夜でした。

品川のホテルにチェックインを済ませた後、生ハムやオリーブにチーズとバゲットなどを買い込んで、夜の帳が降りた道を歩いてGRFさんの御宅へ向かいます。この道を初めて歩いてGRFさんの御宅に訪問したのはもう4年前のクリスマスのことですから、月日の経つのは早いものです。

今回は、拙宅に迎え入れたUNICORN CUSTOMのセッテイングを学ぶことの他に、とんでもない高みの音楽を聴かせてくれるというCONSEQUENCEの音を直に聴かせてもらうことです。

電車のダイヤが乱れていたこともあって大混雑する首都圏の通勤電車でしたが、何とか予定した所要時間でGRF邸に到着。早速和室に通されてUNICORNにご対面です。GRFさんからは、使われているMITのアナログケーブルの長さ違いによるコメントを求められたのですが、短いものよりも長い方がより低域のバランスが取れているのは面白いですね。

GRFさんと早速赤ワインを飲みながら持参の生ハムやチーズなどを肴に、GRFさんに教えていただいた美味しいバゲットを食べながら音楽を聴き続けました。

初期型のUNICORNには拙宅のに付属しているネットワークボックスが見当たりません。キャビネットの中に巧妙に組み込まれているそうで、そのお陰でキャビネット構造がとても複雑となっており、限定再生産された拙宅のCUSTOM仕様では外付けになったそうですが、その分キャビネット容量に余裕ができて、音質に好影響を与えていると考えられますから、今後の熟成に期待が持てますね。

プリアンプとパワーアンプは製作者は違いますが、パワーアンプは真空管のセレクトを経て新たに製作を依頼中とのことですが、小生の耳には「この音の何処に不満があるのか?」と思えました。でも、この後でCONSEQUENCEの音を聴かせて頂いた後に思えば、現状に満足することなく更なる高みにUNICORNを導こうとされているのだと感じました。

そこに音楽が鳴ればそれで満足してしまう小生にとり、GRFさんの和室で鳴っている音楽は、これから時間をかけて成熟させていく拙宅のUNICORN CUSTOMの鳴らす音楽にとって、これからもベンチマークであり続けることでしょう。

GRFさんが用意された赤ワインは、輸入商社から直接取り寄せたイタリアのですが、リーデルの大ぶりなグラスに注ぐと、フワッと湧き上がるアロマが素晴らしい出来のワインです。小生が普段飲んでいるワインとはクラスが違いますが、これは美味い。あっというまに空いてしまい、二本目のワインのコルクを抜きました。そのワインを飲み始めてすぐに、隣にあるGRFのある部屋、今はコンサートホールと呼ぶ部屋に移動しました。

前回訪問したときには、GRFにT4やデコラを聴かせていただいたのですが、今夜の主役はこのDYNAUDIOのCONSEQUENCEです。

一般のスピーカーなら一番上にツィータがあり最下部にウーファが付いているのが、このスピーカーは完全に上下逆転した取り付け型になっています。独特のキャビネット構造を持つウーファーは内部でタンデムに配置されており、最上部から放射されるのでとても軽く速い低音域で、一般のスピーカーのような地を這うような重い低音ではありません。でも、これが実際の楽器から聞こえてくる低音に近いのです。

様々なCDやSACDを聴かせていただきました。再生帯域がとても広く濁りのない響きが部屋全体に響きわたります。目を閉じるとそこはベルリンフィルハーモニーホールやザルツブルグの祝祭劇場の中で2階の貴賓席に座っている感覚になります。

マーラーの復活で終楽章で歌う合唱団と天井から響くパイプオルガン声も楽器の音色がとても自然です。オーディオでは迫力を出そうとして音量を上げると、時として耳に刺激的な不快感を感じることがありますが、このスピーカーでは迫力を求めようとする気が起こらないでしょう。

最高音域から最低音域までの全ての音が満遍なく、音楽ソースに収録されているそのまま再現されると、このような音楽が鳴るんだということでしょう。

今までこの部屋で何度も聴かせていただいたハートレーやGRF、T4にデコラ。それぞれがGRFさんのチューニングとセッテイングで素晴らしいコンサート会場を再現していましたが、今思い起こせばそれぞれのスピーカー固有の色合いがあるのだと。

勿論それは楽器や演奏家それぞれの個性のように、どの音がが良くてどれが悪いという比較論とは一線を画す個性と言えるものですが、このCONSEQUENCEを聴いた小生にはこのスピーカーの個性は何か?と尋ねられたら、卓越した実在感を伴うリアルな再生音としか言いようがないのです。

しかし只置けば鳴るものではない。ここまで鳴らすのに幾百通りもの試行錯誤を重ねられて到達した努力の賜物であることも事実です。

沢山の音楽を居ながらに聴ける幸せ。

いつまでも聴いて居たかったのですが夜も更けて11時を回る頃お暇した帰り道。コンサートが終った後の高揚感と満足感をかみ締めながら、あの部屋の不思議な体験を思い出しながら、ホテルに向かいました。

椀方さん 

ご丁寧な訪問記をありがとうございました。ご一緒に"Consequence"を聴きながら、同じ様な感慨を感じていました。すべての帯域が自然になり始めると、音楽が優しく、深く、静かな迫力を持って、押し寄せてくるという実感です。このスピーカーを導入して、20年間、いろいろと苦労してきました。このGRFのある部屋も本来は、この"Consequence"を鳴らしたがために作った部屋でした。SPをその部屋で一番鳴る場所におくとそのSP自身が消えるという音場体験をしたことが切っ掛けでした。しかし、その体験をしても、実際に今の音にするためには、やはりその他のスピーカーで経験してきたことが皆必要だったのです。

GRFのある部屋の"Consequence"の音は、コンサートホールの様になるようになりました。今後の目標は、和室のユニコーンの音をどう良くしていくかです。椀方さんのユニコーンの成長に合わせて、また実験を重ねていくつもりです。楽しみはまだまだ続きますね。



"Consequence"の音は満足なのですが、、

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人間の欲望は果てしないとつくづく思います。ようやく登った高峰に経つと、遙か彼方により高い山が見えるのです。そこまでは、今まで苦労して登って来た道をまた降りて、登り直さなければなりません。最高峰に登ってきたときは、快晴の時より幾分雲がかかっていた方が安心の時もあります。

また、一度、高峰の稜線上の広大な風景を見てしまうと、近所の山に登ったときに、その遠望を望んでしまうことも有ります。しかし、2000m級にはそれに見合う喜びもあるし、1000mに充たないご近所の山でも、高山とは違う喜びが待っています。

日本の百名山を一筆書きで登ってしまう冒険番組を毎朝見ていると、麓からは決して見えない名山が多いのにも気がつかされます。一度も、見たことのない山も沢山あり感心しました。そういう山は、手前の名山に登ってみないと見えないこともあると言うことを築かしてくれます。また、それらの山を結ぶ普通の道も歩いていくので、国道を480キロも歩き続ける耐久レースのような凄さに驚きました。平坦の道を我慢して歩いて行かないと次の峰に辿り着かないことも、なんだかオーディオにも似ていますね。

現在のGRFのある部屋は、鳴り始めた"Consequence"のおかげで、現在はコンサートホール化しています。隣の部屋のドアを開けると、世界中のコンサートホールにワープできるのです。問題は、和室に戻ってきたときに、どのくらい景色が見れるかです。こちらも、コンサートホールにワープしてはいるのですが、部屋を暗くしたりすることが必要です。

ユニコーンの音の向上も、当然行っているのですが、比較して聴いている所為か、以いぜんより音の切れ味が悪くなったと感じていました。そこで"Consequence"用に製作したプリを和室に持って来て聞いてみました。静的な音の印象では、余り変わりません。しかし、一旦音楽が鳴り始めると、音のダイナミクスが違います。音の伸びが、エクスパンダーが掛かったように大きく拡がりエネルギーが持続するのです。勿論、製作に掛かっている時間と、それに伴う価値を考えたら差が出て当然でしたが、現用のプリも二年半使い続けていますので、ここいらで真空管の交換も含めたオーバーホールに出しました。この二年間の間に改良されたところもあり、戻ってくるのが楽しみです。

その間、20年前に作って貰ったトランジスタ(ICチップ)のプリが有ったのを思い出しました。押し入れの中をひっくり返してほぼ、20年間で通電もしていないプリを繋いでみました。帯域や音の抜けは、現在の真空管プリと違いますが、黙って聞かせれば解らないほど音色は酷似しています。やはり、同じ製作者のDNAは変わらないようです。真空管アンプとの違いは、音の抜けですね。同じ様に天板を外して見ましたが、真空管アンプのようなフィードバックは起こっていないので、それほど変わりません。

考えて、CD34用に販売されていたMarantzのトランスを入れて見ました。音は、少しだけ間接的になりますが、その分柔らかで、コンサートホールの感じが出て来ます。入出力のケーブルもいろいろ変えてみました。トランスからプリアンプの方は、普通の素直なケーブルの方がマッチします。手持ちのWBTのケーブルを使って見ました。

久しぶりに、音楽が活き活きと鳴り始めました。MarantzのCD用トランスは、面白いことにマランツのCDに使っても、それほど音の改善にはならないのです。その為、評判を聞いて購入しても、すぐに手放す人が多く、相場もそんなに上がっていないので、プリアンプの後ろに使うとおもしろいです。結果の音は、久しぶりに元気な音で、かなり変わりましたね。パワーアンプを換えるより、プリアンプの音の差の方が大きいようです。

土曜日は、恒例のマイクキタ邸に

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先週はまた出張続きで、金曜日にいた札幌の朝は、マイナス3度ぐらいでした。今頃の札幌の気温としては普通ですが、風がなかったし、お日様も照っていたので、車内や家の中では、とても暖かく感じる日でした。お昼過ぎに札幌を発って、千歳空港まで来ると、東京の雪の影響で、軒並み飛行機が遅れています。今日は夕方までには東京に帰らなくてはなりません。予約してあった便は、一時間半遅れなので、前の便に変えて貰いました。羽田に着くと、雪は止んでいましたが、冷たい雨です。気温は、2度しか有りません。千歳より寒いぐらいですね。雪の影響か道路は、ガラガラで、一時間かからず家に戻れました。

翌る土曜日は、快晴です。北風が強く頬が痛い具合です。空は、青く抜けきっています。このまま花粉症の季節にならなければ最高の季節なのですが。私は、東京は11月から2月中旬までの冬の季節が、一番好きです。風は冷たいけど、日差しは強くなってきた日の当たる道を歩いて地下鉄の駅まで気持ち良く歩けました。新宿の乗り換えの途中、美味しいパン屋さんに寄って、ワインのお供に買っていたので、ロマンスカーの時間には乗り遅れました。でも、案内板を見ると次のロマンスカーも満席です。急行に乗って鶴巻温泉を目指しました。

今日は、マイクキタさんのお宅に、ウェスタンのツィーターと350Bp.p.+300Bp.p.の二重連アンプを聴きに行くのです。前回は、永年使いこなしてきた300BアンプからEL156p.pに換えられたのですが、2wayからJENSENのツイーターを使った3wayになっていました。私は、最初にお邪魔したときの2wayの方が好ましいといった覚えがあります。その時の、Bellwoodさんの記事に、マイクキタさん言われるところの「いちゃもん」を付けてきた御仁がいて、その記事に発奮されたマイクキタさんが、それならばと、再度Westernアンプと純正のツィーターに挑戦されたので、その音を聞かせていただくのが、今回の目的でした。

マイクキタさんは、永年Westernのアンプをご自作され、様々な回路も試しておられます。そのご経験から、300Bシングルの音とプッシュプルの音の差や、350Bとの音色の差も熟知されていて、300Bの球の値段が、余りにも高騰したので、ヨーロッパ製真空管の雄である、EL156に挑戦されたのでした。同時に、ファインメットを使用したネットワークも挑戦されました。今回は、そのネットワークを使ってドライブするアンプを、何と350Bp.p.をドライブ段として使い、300BP.P.を駆動するという思いきった構成です。350Bの出力トランスには、310Ωという中間アンプとして使える巻き線があり、それを使って300Bアンプと結合させています。それによりドライブ段に大変な余裕が生まれ、あたかも全盛期のアメ車のようなトルク感溢れた悠揚迫らざる音になります。大人の音ですね〜!

掛ける音楽は、前回も基準に使ったカラヤンのニューイヤーコンサートから、キャサリーンバトルが歌う「春の声」を聞きました。

一聴して、満足しました。最初に訪れたときの2ウェイをそのまま発展して3ウェイ化したまとまりと、高域が出ることにより、より低域の実在感がでて音に深みと奥行きが増しました。全く素晴らしい音です。バランスも良く、何の曲もかかります。極めて安定した音で、私が目指している音とベクトルがあい、とても満足です。バトルの声もきれいに転がり、明るくなりました。カラヤンの音の安定感が、ウィーンフィルの音を充実させ、バトルも安心して歌っている様が感じられます。カラヤンの愛情ですね。カラヤンは、才能があるひとは人種を越えて可愛がりました。プリマドンナだって、プライス、バトル、ノーマン、と声が静かだけど力のある人を好んで登用しました。実力主義ですね。

キュッヘルとプレヴィンのDuoアルバムも落ち着いた良い音でした。続いて掛かった期待の新人?松田華音はこれからの人ですね。グラモフォンのピアノの音にしてはやはり線が細かったです。ジャニーヌ・ヤンセンは私には反対に過剰な気もしました。
ここで、恒例のマイクマキさんお手製の前菜が出て来ました。美味しそうなカルパッチョです。続いて、カキやチーズや野菜が満載されたヘルシーな前菜です。新宿で買ってきたオレンジや、クルミ、イチジク入りのパンとよく合いました。


今回の主役でもある、WE-597Aツィーターは励磁型のスピーカーです。音に勢いがあり、浸透性もよく何よりも、低音を邪魔しません。比較に聞いたYL-1800では音がやはり平板です。奥行きのある、それでいて柔らかい音色は、ほかのSPを邪魔しません。マイクキタさんは、こうなると低域のウーハーも励磁型が欲しいと言われていましたが、今の段階の音でも充分だと思いました。

気がつくと、もう五時過ぎです。今回の音は前回と違って言うことありません。最初に訪れたとき、2ウェイでなっていた音をそのまま自然に延ばして、奥行きも深くなった音です。中高音はホーン型なのにそういう感じがしない繋がりの良い音で楽しめました。マイクキタさんの、諦めない追求心とそれを支える確かな技術力に感銘を受けました。ベルウッドさんと帰りの電車の会話もはずみました。まだこの時点ではバイロイトの話は聞きませんでしたが(笑い)

マイクキタさん、次回はまた、拙宅に足を延ばして下さい。家の音も、少しずつ前進していますので。





和室の定員は?

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ユニコーンは、私が何時も使っている和室の六畳間で使っています。六畳間ですから、SPと聴取位置は、2メートルも離れていないぐらいです。そこには私が何時も使っている椅子と、中央の席の椅子、それと三人目の方が来られる場合用の椅子が置いてあります。お二人で来られる事が多いので、これらの椅子は、この部屋に常備されています。今までの中で、この部屋を訪れていただいた人数が一番多かったのが、12年の年末に来られたDolonさんとチューバホーンさん、夜香さんそしてあとからTaoさんが来られたときの4名でした。

今日の夕方、半分は仕事関係の4名が来られて、最多人数のタイ記録を更新しました。当初は、皆さん各自のコートも持っておられました。すると昨日まで聞いていたときの音が、全くしません。音が死んでいるのです。4名+吸音材の効果ですね。さっそく防寒着は廊下に出して頂きました。するとやはり音が変わるのです。コンサートホールだって、聴衆が入っていない録音時と満員のときでは音はまったく違いますが、この小さな部屋に4名の大人が、冬服を着て座ると、相当音を吸われることに気がつきました。音の響きが無くなります。隣のGRFのある部屋は、天井が吸音材で音が吸われます。床が堅い木で全反射するので、ちょうど良いのですが、和室の床は畳ですから、やはり響きが無くなりますね。

音楽に関係しているお客様でも、ユニコーンの音を聞いている方は少なく、実際に聞かれると、どこから音が出ているのか戸惑ったり、360度に放射する音場に驚かれたりします。今日のお客さんは、シングルコーンのSPだけなのに、大太鼓やコントラバスや低音の金管楽器の迫力有る音とその実在感に驚かれていました。

何時も聴いている人には、この不思議な感覚はなれているでしょうが、初めて聴かれるかたは、魔法に掛かったような顔をされます。その顔を拝見するのが楽しみでもあるのですが、冷静に考えてみると、不思議な音ですね。大オーケストラの迫力を再現出来るSPはそう有りません。それが、大音量を出さなくとも実現するのは極めてめずらしいでしょう。それにこのSPで聴くCDの音のフレッシュな感じも、皆さんを驚かすようです。特に、今はCD34改だけがなっています。昔のCDプレーヤーから、DSD顔負けの新鮮なもぎたての音がするのが不思議なのでしょう。

何度も、話して恐縮ですが、このCDプレーヤーは、文字通り羊の皮を被った狼です。聖少女のような顔をした魔女みたいなのかもしれません。とても、外見からは想像できない音楽が湧いてくるのです。何世紀も使い込まれてきたヴァイオリンの名器の様です。軽いタッチで大きな音が楽々と出てくるのです。そのCDプレーヤーとユニークなユニコーンから大オーケストラや室内楽が聞こえて来るのです。

4名も入ったおかげで、そのコンサートホールの空気感が少し削がれましたが、北側の窓を少し出かけると、冷たい北風が部屋の中に流れ込んできて、音もフレッシュになり楽になります。密閉したスタジオみたいな部屋では、音楽はならないのと同じです。音楽は空気の振動です。密閉空間では、その空気の動きそのものが、抵抗に遭い動きにくくなっているのです。部屋の一部でも開けて隙間を作るだけでも音楽が楽になり始めるのです。またその音の調整に、ケーブルのグレードを変えて聴き比べもしていただきました。

様々な分野の音楽を聞いていただきました。CDばかりでは無く、DSD化したファイルの音も聞いていただき、その差も明確に出たようです。DSD化したアナログ音源は、そのままアナログ機器が鳴っているような暖かい音がします。この沢山ある貴重なアナログ音源を、皆さんにもお聞かせしたいのですが、営利目的でなくとも、様々な壁が立ちはだかっているようです。なかなか難しい様ですね。

オランダへの旅

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本ブログを始めた2006年以降、何回オランダに行ったかブログに書いている記事を拾ってみました。書いてないときもあるのですが、12回も渡航していました。平均しても年二回はオランダに行ってきたようです。ベルギーに行くときも、昔はあったサベナ航空が無くなったので、オランダか、パリ、またはロンドン経由になります。勢い仕事の用があるオランダ・スキポール経由になりますね。


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Commented by (Y) at 2010-09-08 23:35 x
素晴らしくきれいな写真に、酷暑の日本では嫉妬心が募るばかりです(爆)。ところで、ちょうど16年前の夏は今年に似た猛暑続きの夏でで、その翌年の1995年には阪神大震災が発生しました。ということで、GRFさんと同じような危惧を僕も感じています。そういえば当時のアメリカは民主党政権で日本の自動車業界たたきをクリントンが率先して行い、日本では村山政権が迷走し、円は1ドル=70円台に突入しました。何から何まで当時の情況と今はよく似ています。それだけに不気味でなりません。変な予感が当たらないことを祈るだけです。

Commented by SNOOPY at 2010-09-14 12:53 x
アムステルダムでは自転車が怖かった。交差点で立ってるとなにか叫ばれたので、声の方をみると自転車が突っ込んでくるではありませんか!どうやら自転車専用道の上に立ってたようです。
レオンハルトさんがオルガンを担当しているオールドチャーチ、周辺は怪しげなお店が沢山でした。
やっと今日あたりから こちらも秋らしくなってきました。
  
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12. 2013年10月

何年間も工事中だった国立美術館もようやく出来て、お披露目されました。今度は大きくて回るのに時間が掛かりました。工事中、まとめて展示してあった方法に慣れていたので、新装開店してから見て回るのが大変ですね(笑)。

まだまだ実験は続きます

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最近は、とみに勢いを増してきた老人力のおかげで、時間だけがどんどんと過ぎていき、やらなければならない事が溜まる一方です。"Consequence"の方は、一応一段落のところまで来ましたが、その結果、和室のユニコーンも、大阪のHartleyもいろいろと改良を加えるところが見つかりました。

和室の方は、二年半使って来たプリアンプのオーバーホールと回路変更をお願いしました。電源系のコンデンサーの交換と、出力段をSRPP回路に変更していただきました。音がフレッシュになり、低域が深くなりました。例によってシャーシーの天板は外し、足は砂の入った座布団で浮かしました。ゴム足の曖昧さが無くなり、一段とピントが合ってきたようです。

大阪のハートレーは、使用しているSD05のクロックをより正確にしたタイプと、アナログ変換を行う出力段のコンデンサーをより細かくした物を聞いてみました。音は引き締まり、低域の動きがよりリアルのなります。その回路変更を行って貰う為に、50W版をサービスセンターに送りました。しかし、その代わりに繋いだクロックアップしていない100W版のおおらかな音も良いものだと見直しました。デジタルケーブルを短くして音の動きが出るようにしてきました。

酔っ払って聴く所為もありますが、この音で聞くちあきなおみやテレサ・テン、春日八郎の声は、懐かしさ以上の切実な郷愁を感じます。大口径のウーハーから楽々と鳴るヴォーカルの声は、大排気量のアメリカの車みたいな音がするのです。面白いモノですね。

東京に戻ってくると、端末を研磨していただいた光ケーブルが届いていました。PVCのケーブルではなく石英の細いタイプの端末の研磨をお願いしていたからです。100時間以上のエージングが必要だと言うことで、現在、リピート機能を利用して鳴らし込みをしているところです。デジタルケーブルと言っても、光も同軸も流れているのはアナログ信号ですから、ケーブルの素材や研磨で音が変わるのですね。  

私のところでは、余り大きな音では掛けませんが、それでも最低域から最高域まで楽々と出てくる"Consequence"の音は極めてリアリティがあります。その音がどの様に変わるのかエージングも楽しみですね。

土曜日はAionさん邸に

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Bellwoodさんのリクエストで、年末に家に来ていただいたAionさんのお宅を再訪することになりました。前回、Aion邸にお伺いした時は、一昨年の秋でした。ひどい雨の時で、靴がびしょびしょになったことを良く憶えています。かかった音楽は、そんな雨を吹き飛ばすほど、元気な音でした。英雄の第一楽章を他所のお宅で聞いたことはありませんでしたので、この音から直球勝負をしてくるAionさんのケレンミのない音に感心しました。続いて掛かったラザール・ベルマンの深い音にも、とても感銘しました。そしてあの日の白眉は、ヨッフムのブルックナーでした。とても私の好みを考えていただいたプログラムに驚きました。

今日は、クラシック派の二人がお邪魔しますが、どの様な曲を聞かせていただくのか楽しみにしてきました。最初に掛かったのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲「大フーガ」でした。音量は大きめで、輪郭がしっかりとした音です。前回とはまったく違う音に驚きました。以前はSpectralの音でしたが、今回はGoldmundの違いだそうです。私の好みはやはりSpectralの方ですが、いぜんからCelloのパレットもお使いのAionさんは、Goldmundの方が好みなんだと納得しました。次の曲はイギリスの現代の作曲家の合唱曲ですが、曲調は古典的な響きです。

やはり以前聞かせていただいた時とは、まったく違うしっかりとした隈取りのある音で、違いに驚きました。こちらの方がAionさん好みの音だそうで、前回はやはり私の好みに合わせていただいていたのだと思いました。

アナログプレーヤーに移り、印象的だったのは、マーラーの第5番、それをカラヤンベルリン・フィルの演奏で聞かせていただきました。この頃のカラヤンの特有のしっかりとした音の輪郭がある演奏です。アナログレコードの範疇から飛び出した極めて迫力の有る音でした。

その後は、前回の歌謡曲の良さを思い出し、リクエストしたところ、掛かったのがYAZAWAの世界で、それも、ゆったりとしたテンポが心地よい、「時間よ止まれ」でした。冷えたジンのとろっとした味も感じさせる素晴らしい音でした。

しかし、私の好みから言うと前の方の音が自然に聞こえていました。確かに前の音の時も、しっかりとした輪郭があって、左右に広く展開してもサウンドが埋まってはいたのですが、今回はそれがもっと濃くなっているような気がしました。クラシックの曲でも、スタジオでしっかりと音響設計されているような良い意味で安定してて、別な意味では少し窮屈な感じがしました。その意味ではレコード再生の方に焦点が合っています。

もし、私好みにSPを触って良いといわれたら、内向きに焦点が濃くなっている音を平行近くに戻し、音が楽に拡がるようにしたでしょう。もっとも、聴かれている音楽がまったく違うし、私の場合は、ホールに響く音の再現だけど、Aionさんの場合は、より旋律的に音楽を聞かれていて、オーケストラでも室内楽的な濃密な関係を求めているような気がしました。私は散文的な聴き方をしているけど、Aionさんはより詩的な緊張感の伴った、音の相関関係を聞かれている違いだと感じました。

演奏を一旦休憩して、いただいた白ワインのMeursault のすっきりとして柔らかな味が、その緊張を和らげてくれました。赤ワインは、Bellwoodさんも大好きなChâteauneuf-du-Pape の Reserveでした。こちらは事前にデカンタしてあり、その効果もあり白より一層ふくよかで柔らな味でした。静かに浸透していく味は、幾分、音で昂揚した心を優しく慰めて暮れました。最近は、イタリアのワインばかり飲んでいる自分に、久しぶりにフランスの高級ワインの味を思い出させてくれました。本当は静かに寝かせたままにしておきたかった世界なのですが(笑い)。

ワインを飲まれるとAionさんとBellwoodさんは、カラヤンのマーラー感について、深い会話をされていました。それを聞いていると私の聞いているカラヤンは表層的な響きだけを聞いているのかとも思いました。カラヤンのシベリウスやチャイコフスキーはそれでも良いのかもしれませんが、滅多に演奏しなかったマーラーでも世界観はやはり違った聴き方を求められるのでしょう。お二人の会話は、レストランに移っても続き、とても知的な時間に立ち会わせていただきました。

次回は、Bellewood邸での話の続きでしょうか?


是枝さんのアンプ第二弾 6336Bp.p.

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是枝さんのアンプがユニコーン用に導入されたのは、2011年の四月でした。あの地震の直前に、岡山を訪れたときお願いしてきました。それが、大震災と原発の事故のあとに届いたときは、頼んだことさえ忘れてしまうような困難な時期でした。お願いしてあったのは、管球王国59号に掲載されていた5993p.p.アンプでした。送信管の807の高信頼管5993を使用した中型のアンプです。6L6のサイズですね。音も6L6タイプの中庸な音で、大変上品な音です。この三年間はこのアンプでユンコーンを鳴らしてきました。ということは一番多く聞いていたアンプと言うことです。

小型のステレオアンプなので、いますこしパワーがあったり、モノラルアンプであれば良いなと思ってはいました。そこで、是枝さんにこれから作るとしたら何があるのでしょうときいたところ、いま手に入る真空管で、自分が良い音だと思っているのは、管球王国27号に掲載した安定化電源用に作られた双3極管の6336を使用したモノラルアンプだと言われました。是枝さんが今まで作られた近代出力管のなかで一番音の良いアンプだと言われました。

しかし、管球王国27号は、2003年の刊行でした。今から、12年も前の事です。幸いなことに6336Bそのものは、安定化電源用として比較的安価で出回っていますが、出力トランスや電源トランスは手に入らないようです。電源トランスは特注で作ることは出来ますが、タムラの出力トランスは、受注生産だと言われていますが、実質上は注文を受け付けてくれません。

GRFさま

ここ数年来,国産トランスの状況は完全に変わっており、ISOは廃業してもうあの電源トランスは入手できません。出力トランスのF782も価格は1台5万円を超していて、しかも10個単位の発注です。

いま27号アンプをあの通りに作ることは不可能なのです。電源トランスは代替品にするとして問題は10個単位のF782です。これは昨年に最後の手持ちが無くなってしまいました。3.11でタムラの栗原工場が被災したためにむかしとは様変わりして著しく入手難になりました。

さて27号では出力管の−100Vのバイアスを、DC/DC変換ICを使ってB電圧から生成したのです。B電圧のドリフトとバイアス電圧ドリフトが瞬時に同期するので超低周波の揺動分がなく、それやこれやで良い音がしました。これがあのアンプのキーポイントだったのです。

昨年に手持ち最後のF782を使ってラックマウント仕様で6336PPを2セット4台作りましたが、27号の音とは少し違いました。それはバイアス回路の相違があるようでした。

当時使った電源チップはRoHS規制の関係で廃止になり、いまあるものはレギュレータタイプなのでB電圧が変化しても出力電圧は変わらないのです。むろんこれは進歩なのですが27号の設計趣旨とは違うことなのです。

あれはB電圧が高くなると瞬時にバイアス電圧も深くなることが大事だったのです。ざっと見た限りノンレギュレートのスイッチングICはないようです。もう11年前ですから仕方がありません。

B電圧もバイアス電圧も一緒に定電圧化すると同じことなので昨年作ったものではそうしました。
でも音質は27号に分がありました。安定化電源はなかなか難しいのです。

さてF782の負帰還用3次巻線は極めて帯域が広く、増幅部と出力部の高域スタガ比が理想的な比率に収まるので位相補正をしなくても十分な安定性が確保できました。

1MHzを越す帯域のトランスは世界でただ一つ、F700シリーズの3次巻線端子だけなのです。アメリカのED社のCXPP100-NS-1,7であればインピーダンスは適合しますが27号アンプのスタガ比配列はとれません。

27号類似の6336PPを作ることは出来ても同じ音にはできないでしょう。GRFさまのご依頼を受けていろいろ確認してみたのですがあの通りに作ることは不可能だと思いました。

是枝 拝

と、部品の確保の困難や時代の変化で同じ様な部品を確保するのが難しく、ほとんど不可能だと言われたのです。タムラのトランス代理店に連絡しても、なかなか色よい返事は帰って来ませんでした。それでも諦めず、方々探しているとしばらく経ってようやく、次のような返事が来ました。

GRF様、先日はF-782の件ご照会いただき有難うございました。

このたびはご返事をお待たせしてしまいまして大変恐れ入ります。先程、タムラより納期と価格に関する回答がありましたのでご報告させていただきます。先ずはじめに納期に関してなのですが、目下、タムラでは消費増税による産業用トランスの需要増などにより工場負荷が高く、納期自体が通常より多くかかっている状況につき、今週末までに弊社が発注をかけた場合でも納入は6月中旬~7月初旬ごろになってしまう見込みとのことでした。

トランスの入荷は消費増税後につき、弊社にて増税分の負担も伴いまして正直申したいへん厳しい状況なのですが、もしこの納期をご了承くださり、先に全額をお振込みいただける場合に限りまして、下記の10個でのお見積りを特別にご提示させていただくことと致しました。

このままご注文される場合、合計金額をお振込み下さい。その際、手続きが済みましたら送付先の情報(ご住所、お電話番号)も併せてお知らせくだされば幸いです。なお、お振込み後のご注文のキャンセルはお受けできませんので予めご了承ください。

以上、宜しくお願い申し上げます。

【追伸】

タムラによると、今回ご照会いただいたF-700シリーズは、現在の流通量などを考慮した場合、(はっきりした時期は分かりませんが)近い将来製造中止の対象となる可能性が非常に高い製品ということでした。

是枝さん

あれから6336Bのアンプの事を考えています。第一関門のトランスですが、日本中どこにも在庫が無く、やはり受注生産になりますね。問題は、その10台の受注もタムラが受けてくれるかに掛かってきます。秋葉原のトランス専門店も、その辺がわからないと言い、タムラの返事待ちです。

世界中のサイトを探しましたが、このF782はやはり特殊でなかなか見つかりません。有るとすれば、個人が製作したアンプがでてくるときでしょう。私も、是枝さんもそんなに悠長に待っていられませんから、この10台の製造に掛けて見ようかと思い発注しようとおもいます。

私とO君、そして、ユニコーンを買った淡路島の友人にも声を掛けてみました。結果、現在6個分の受注は確保しました。残りの4個は、在庫でもち、オークションででも捌こうかと思っています。

さて、そうなると、是枝さんに、期間はかかっても良いですから、三セットの注文をしたいと思います。私もO君も、出来れば今一台の、ユニコーンを持っている友人にも、是枝さんご自身の結線でお願いしたいのです。5691と6BX7は在庫でお持ちですか?

デザインですが、27号の時から、十数年経っていますし、私の持っている5933のようなシャーシーで行きたいと思っています。すなわち、ステンレスシャーシーとカラフルな色のトランスの組み合わせです。スイッチも5933風が良いですね。電源ケーブルは、27号の様なソケットが良いのですが、、、

27号のサイズは、170mm ×300mm×50mmでした。限界に近い小さなサイズで、配線や熱の影響が考えられます。電流計も横川の二連でした。現在は、5933アンプと同じ、デジタルのメーターが使えると思います。

27号は170mm×300mmで比率が、1.76です。そこで、なるべく黄金比を保ったまま、サイズを大きくしますと、黄金比は、1.618ですから、300mmの長さを同じにすると、幅は185mmまで拡大します。内部の配線を拝見しますと、50mmの高さ方向を随分と活用されてスペースを稼いでいます。これを、シャーシーを少し大きくするとだいぶ平面のサブパネルになるのではないでしょうか?幅を210mmにしますと、長さは340mmになります。

この様な要望で、三台製作していたでけますか?デザイン的には、トランスは、後方に横一列で並び、全面に真空管がが並ぶデザインは可能でしょうか?もっとも、パワートランスも特注なら、同じ様なボンネット形状にして、そのカバーをカラフルにする手もありますね。

トランスの間にデジタル電流計を入れて、その赤の数字が直接見えない様に、パワー管越しに赤く光っているのはどうでしょう?前段のRCA管も赤のソケットベースのものを選ぶと、所々、赤がポイントになります。

そうすると、ボンネットカバーをホンダイエローに塗れば、イメージ的には、現用の5933アンプのイメージですね。
GRF

GRFさま

ありがとうございます。6BX7や5691の良品は1セット分しかないでしょうし、今後のことを考えると使わない方が良いと思います。もし良品があれば使いますが、いま真空管専門店で入手できるものは全然信用できません。

この間もUNICORNさんが15号シングルアンプのオリジナルKT-88で、ずいぶんご苦労されたようです。双三極管は、両ユニットが本当にきちんと揃った球は専門業者では選べないのです。選別の視点がぜんぜん異なるのです。私は実機で選別するのですが、かつてのクオリティの球を選ぶためにはたぶん10倍以上必要でしょう。

バルブチェッカのチェック項目は最低限なのでこれで良品と言っても駄目なのです。ですから初段はE180CC、ドライブ段は12BH7になるでしょう。これですとここしばらくは適正価格で入手できます。また新品のバルク球はメーカの視点であらかじめ選別されていますから歩留まりは良好です。

是枝 拝

ようやく、少し前に進み始めたようです。トランスは昨年の一月に発注と同時に全額の前払い金で支払いをして、半年待ちました。六月の下旬になってトランスが出来上がり、3セット分をそのまま是枝さんのところへ送って貰いました。あとは是枝さんの部品集めです。

GRFさま

ここ数年来使っていたトランスカバー(今回は電電トランス用)が無くなって困っていましたが、最近代替品が見つかりました。これを使ってGRFさんのアンプを作ります。

例のDC/DCコンバータはオリジナルのバーブラウン製が来ています。もうこれで出来たような気分になっています。探してみるものです。年内完成を目指していますが、1月にずれ込むかも知れません。全部お納めできるのは2月いっぱい掛かるかと思います。

そうして、八ヶ月が過ぎ、第一号機が日曜の夜に到着しました!





まだプロトタイプで、トランスカバーの色が、フェラーリーレッドになっていませんが、勿論、音は聴けます。サイズは200x350x50のステンレスシャーシーでほぼ指定の大きさです。双3極管6336Bの発熱は100Wの電球に匹敵するそうです。また電源トランスも相当熱くなるようです。その為、シャーシーの大きさを一回り大きくして、熱対策を施されたそうです。夏は聴けないかもしれませんね(笑)。

同じ形態のモノラルアンプ二台です。是枝さんは、ステレオアンプでも対称的には配線されません。右回りと左回りでは音が異なるからです。アンプは地磁気の影響を受けているので、反対回りだとやはり違う音がするのでしょう。待ちきれず繋いで見ました。電源を投入をしてから、一分経つとヒーターが暖まり、電源が投入されます。

最初の一音で驚きました!

何という音でしょう!非常に広帯域で、最低域まで延びています。ヴォリュームを絞っても音が痩せませんし、音の出方がシングルアンプの様に切れ味が良く、しかし、シングルでは絶対でない超低域まで楽々と再現します。音がダイナミックに変化して、音楽に追従していきます。ここがB電圧の変化に素早く対応する、DC-DCコンバータを使用したバイアス電圧の追従性の良さでしょうか。

新型プリの導入後の"Consequence"の音を聞いて以来、ユニコーンも何とかしなければと思っていた思いが充足しました。しかし、アンプだけでこれだけ音が変わるのも得難い経験です。本当に、オーディオは面白いし、まだまだしなければならないことが沢山あるという驚きと喜びを知りました。

今夜は、早速近所のO君とA氏も来られてお披露目会ですね。どの様な反応が返ってくるか、これもオーディオの楽しみの一つですね。






切っ掛けは川崎のベルリンフィルの音でした

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2013年の11月は、私の生涯でもっとも充実していた時かもしれません。何しろ、一週間の間に、ウィーンフィル・コンセルトヘボウ・ベルリンフィルと世界のトップのオーケストラを同じホールで聴けるという快挙でした。幸いにもそれらのオーケストラを本拠地でも聴いているので、同じ川崎のホールで、どの様な差が出るのか大変楽しみでした。結果は、怒濤の三連続の演奏会 余波にも書きましたが、コンセルトヘボウの逃げ切り勝ちに終わりました。

その時に感銘を受けたのは、コンセルトヘボウのオーケストラの圧倒的なS/N比の良さでした。会場がこれ以上静かにならないだろうという息を殺したほどの静寂とその静けさの中に浸み入っていくオーケストラの響きでした。ヤンソンスはミューザ川崎のホールが世界で一番だと言っているそうです。ラトルも同じですね。会場の音の良さばかりではなく、聴衆のレヴェルの高さ、演奏中の集中力など音楽に対する心持ちが違うように私も思います。

同じオーケストラでも、サントリーホールで聴く時と明らかに音が違うからです。それが分かるのは、逆にウィーンフィルの演奏会の時です。川崎は羽田から近い所為か、日本中からウィーンフィルを聴きに飛行機で来る人も沢山おられるのですが、着ている洋服のグレードで明らかに解るぐらい、ウィーンフィルを聴きに来た音楽ファンと、川崎本来の音楽が好きなファンとの違いが出ます。結果として川崎の会場の静けさが明らかに違うのです。

去年は、同じミューザ川崎では、ヤンソンスとバイエルン放送響で、展覧会の絵でした。その時も、打楽器群の凄さを感じました。しかし、一昨年のかぶりつきの席で聞いたベルリンフィルの圧倒的な打楽器群、金管群、木管群の音を聴いた時、何とかこの音を再現出来ないかと、悩み始めたのでした。

一番感じたのは、低弦や打楽器の低い音の迫力でした。それを何とかユニコーンで出せないかと願ったのです。幸いにも今は、その圧倒的な低域の再現性は、"Consequence"では出すことが出来ました。勿論、物理的な低音限界はありますが、そのような音をユニコーンからも出せないかを、考え始めたのです。

最初に、ユニコーンを駆動しているアンプのグレードアップを考えました。そこで、Oさんに是枝さんのアンプの中で音がよいアンプはどれだろうと聞いたのでした。是枝さんの数あるアンプのなかで、プッシュプル形式で、それも近代管の中で一番良い音がしたのは、10年以上前に作られた6336Bのアンプではないだろうかと言われました。Oさんが、今お使いのタンノイ製のDECCA用スピーカーを選んだとき鳴っていたアンプが、その6336Bだったそうです。その音離れの良い音は、タンノイ製の通常のSPとはまったく違う音で鳴らしたのです。

そこで、そのアンプで、ユニコーン専用アンプをお願いしてみたのです。しかし、12年前には作れたアンプが、肝心な出力トランス、DC-DCコンバータ等の部品の入手難からいちどは断わられたのは昨日書いたとおりです。そこで諦め無いのが、私の唯一の取り柄でしょうか(笑)。そうして、14ヶ月後にいま、そのアンプがユニコーンを立派にならしています。この音は、ぜひ、UNICORNさんにこそ聞いていただきたいと願っています。

初恋の人との再会?

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GRFさま

まるで初恋の人に出会った様でした。

私がオーディオに目覚め、「これしかない」と思って勇気を持って訪れた岡山・オーディオマエストロ。そこで聴いたアンプが、いま目の前にあります。そして、その時聴いたスピーカーは我が家に鎮座しています。

その時、私は是枝さんに伺いました。「先生の目指すアンプとは?」と。是枝さんは「若僧が何を言うか」と思われたかもしれません。でもその時は、「きついぐらいに高域が伸び、音が天から降り注ぐ様なアンプ」という意味のことををおっしゃられたと記憶しています。まさにこのアンプは、この形容詞がぴったりと当てはまっている事を思い出します。

以来、幾度となく訪問し、「あのアンプは作って貰えませんか?」と尋ねるのですが、「制約があって難しい」と、やんわりと断られ続けていました。

4年前にGRFさんとオーディオマエストロを訪れ、デコラとハートレーで盛り上がったとき、「是枝アンプで一番良い音のPPアンプは?」との問いをGRFさんから投げかけられました。私は即座に「6336BのPPアンプです」と答えました。

東京と岡山でかなり離れている是枝さん主宰のオーディオマエストロです。そう何回も行ける訳ではありませんが、それでも代表的な50シングルや、300BのPPアンプ、その他のアンプもいくつか聴かせて頂いたのですが、それでも、私が聴いた中で一番のアンプは、初めて訪れた際に聴いた、6336BのPPアンプが一番であると思っているからです。

GRFさんは、この根拠も無い私の言葉を良く信じられたと思います。いや、私の言葉だけでは信用できないので、きっとGRFさんは是枝さんに裏を取ったと思いますが・・・(笑)

さすがGRFさんは、この私と行動力が違います。今現在ではこのアンプは、「トランスがない」「デバイスがない」等、種々の問題があって製造出来ないのです。その問題を素晴らしい行動力で一つ一つ解決し、是枝さんを説得されました。

そして今、その幻のアンプが目の前に鎮座しているのです。


サイモン・ラトル、ベルリンフィルの「春の祭典」を聴き、深々とした低音に下支えされた切れ味の鋭い音味を確認し、同じゲルギエフ、キーロフのフィリップス版「春の祭典」では、正に天から音が降ってくる様な音の輝きと切れ込みがあり、私が思い続けた「正にこの音!」が目の前にありました。

そしてモノラルアンプらしい、広大な音場が目の前に再現されます。個人的にはコンシークェンスにも負けない音がユニコーンから出ていると感じました。

伺った際は、まだ火入れして間もなくでもあり、ユニコーンのセッティングも詰めていない所でしたが、それでもこのアンプだけが持っている特徴をプンプンと振り撒いています。セッティングを追い込めば、凄い音になることは間違い有りません。

何としても、このアンプは手に入れなければなりません。初恋の人と再会したのですから(笑)



6336Bアンプが、和室に導入された二日後、雪で転んで、腕を骨折してしまったOさんが、プレート埋め込み手術から二日も経っていないのに、「初恋」のアンプを見に、聴きに来てくださいました。4年前のあの大震災の直前の岡山で、確かに、是枝さんに今まで作られたプッシュプルアンプで何が一番良い音だとお訊きしました。その問いに6336Bと即座に答えてくれたのが、Oさんだったのです。是枝さんは、笑ってうなずいていられました。

そのアンプは手に入らないのですかと、聞いたところ、球自体は、ヴィンテージ管ではないのでまだ手に入るのですが、トランスとか、バイアスを自動的にあわせるデバイスとか、もう手に入らなくなった部品が多く、これから作るのは、相当難しいとのご返事でした。その時は、上の是枝さんの左側にある赤いボンネットの5933p.p.を黄色の色で発注してきたのでした。

あれから三年以上、5933アンプは、出力は15wの小振りながら、ユニコーンを充分駆動してくれました。しかし、川崎でベルリンフィルやウィーンフィルの迫力有る低弦群や打楽器群の音を聞いてしまった私の耳には、生の雰囲気をよく再現するユニコーンの装置にあの迫力有る、地を這うような低音の再生を望んでしまったのです。

そして、一昨年の暮れに、6336Bアンプを再製造できない理由を是枝さんに今一度お訊きして見たのです。やはり一番のネックは、特殊な巻き線と、広帯域の性能をもっているタムラのトランスの製造が、止まっていることでした。震災の影響や、その復興からの特需もあって、オーディオ専用トランスの製造には、手が回らなかったでしょう。

そういう、困難な理由を一つづつほどいて聞く作業が続きました。そのトランスをロットで製造して頂き、手元に入ってから、是枝さんの再生産の為の部品探しが始まったのです。

まだ、五日しかこのアンプは鳴っていません。実際に聞いたのは、近所のAさんと当のOさんだけです。それでも、想像もつかない音で鳴り始めたユニコーンの音は、このスピーカーの持っているポテンシャルの高さを見せてくれたのでした。

あの時、Oさんの言葉を信じ、いま、目の前にこのアンプを見るとオーディオの楽しみがじわじわと心に浸みてきます。面白いですね〜。

実は、まだまだ、進行中のプロジェクトもあります。楽しみは当分終わらないようです。

原田英代さんピアノリサイタル

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切っ掛けは、Bellwoodさんの原田英代さんの書かれた「ロシア・ピアニズムの贈り物」と言う本の紹介記事でした。いつもながらの的を得た感想で、この本の魅力を知った私は、実際に聞いてみようと思い立ち、リサイタルを探してみました。すると、今月五反田でこの『ロシア・ピアニズムの贈り物』の本の内容をお話ししながら演奏するというもってこいの案内を見付けました。勿論、とうのBellwoodさんもお誘いしたのですが、当日は庄司沙也香さんの演奏会があると言われてましたが、最終的には、社内の飲みにケーションになったようでした(笑)。

五反田は、30年ほど前はそれこそ飲みにケーションによく来ていました。久しぶりに来ても、勿論新しいビルも建ってはいるのですが、池上線や国道一号は変わりようもなく、全体には以前の印象と変わりませんでした。今時めずらしい街なのかもしれません。国道に面して、デザイン会社が入っているデザインセンターの五階が今日の会場です。

いろいろなデザイン系の会社が集まっている、デザインセンターは外見もなかなか凝っています。この裏は、池田山と呼ばれる昔からの高級住宅街です。その山の傾斜地が後ろ側に拡がっています。私が何時もやってきていたのは、池上線沿いの下町でしたが、この東側の高級住宅地は、そのまま上がっていくと白金台ですから、五反田駅はまったく違う顔を持っているのですね。

さて、今日お聞きする原田英代さんは、ベルリンの壁崩壊後、東西交流が自由になった1990年に西ドイツの音楽大学でモスクワ音楽院のメルジャーノフ教授の教えを受けることになり、小柄で手の小さい彼女が、如何にダイナミックな演奏が出来るようになったかをはなしてくださるそうです。

会場はいつもはカルチャーセンターに使われているという細長いつくりの教室形式で、縦長の部屋の中央にピアノが置かれ、いつもの演奏会とは反対にピアノの後ろにも席が設けられ、原田さんの指使いが見られるようになっていました。ピアノはベーゼンドルファーのグランドピアノです。

会場に来られている方々は、女性の比率の方がはるかに高く、実際にピアノを弾かれているかたやピアノの先生が多かったように思えます。そう言う指導者や演奏家を対象にした説明会の様です。

構成は、著書の「ロシア・ピアニズムの贈り物」の目次に沿って行われ、ロシア・ピアニズムの歴史と特徴。恩師のメルジャーノフ先生との出会い、教えられてきたことを曲を弾きながら説明するという形式でした。前半はロシア・ピアニズムの特徴と演奏家の系図を細かく説明されました。

後半は、実際に奏法の違い、指使いの違い、ピアノに対する姿勢の違い、手首を硬くせず、膝と肘を自由に、肩の力を抜くかを説明されました。良い例と悪い例での音の違いは驚くべき事でした。説明が具体的で、詳細にわたり如何に原田さんが熟知されているかがわかり驚きました。演奏されたの順序は違うかもしれませんが以下のような曲です。さすらい人幻想曲が素晴らしかったです。

ベートーヴェン;ソナタ「テンペスト」より第3楽章
シューベルト:「さすらい人」幻想曲より第1楽章
ショパン:ワルツ 嬰ハ短調 op.64-2
チャイコフスキー:組曲「四季」より
ラフマニノフ:プレリュードop.23-4,5 他
チャイコフスキー(プレトニョフ編曲):「くるみ割り人形」からアンダンテ・マエストーソ 

テーマの中心は、ロシア独特の重量奏法の具体的な実現方法の説明でした。原田さんは大変小柄な方です。手もピアニストとは思えないほど小さな手です。あの小柄の身体からベーゼンドルファーがしなるような音を出されるのです。驚きでした。座った席はピアノから1メートルぐらいですから、指使いもすべて解るのですが、その重い奏法には本当に驚かされました。

またピアノという鍵盤をおせば音が出てくる楽器から、弾き方の差でいかに違いを作るかを実際に聞かせてくれました。重量奏法の実際をチャイコフスキーのピアノ協奏曲の冒頭の部分をつかって差を聞かせてくれるのです。大変面白く解りやすい説明ですね。体の使い方のせつめいも上手くなる場合と問題がある音の差を聞かせてくれるのです。ピアノを習っている方にはどれほど役に立つでしょう。

原田さんのピアノの音を如何にきれいに会場に響かせるかとの説明は、オーディオマニアにも大変参考になりました。以前Toddさんと何回か杉並公会堂で演奏会の録音をしたとき、ピアノの足の向く方向で会場に響く音がガラガラ変わるのが解りました。ピアノが響く方向が足のむきで変わるのです。また、原田さんは、その足が置かれているステージの木材を叩いて良い音のするところを見付け、底に足を置く努力もされているそうです。また、ピアノの響きを決めている一番大きな要素は、ピアニストが座っている椅子の材質だそうです。良い音がするのは、上下するピアノ専用の椅子だそうです。ただ小さいのでお尻の大きな人には向かないと会場を笑わして下さいました。良くないのは、座面が柔らかすぎる椅子だそうです。

重量奏法は2000人収容する大ホールでも一番後ろの席までしっかりと音が到達する奏法だそうです。ピアノという楽器は、鍵盤押して音が出るのではなく、鍵盤は下向きに押すが、ハンマーは上向きに動いている、そのハンマーのヘッドが弦に触れるところまで意識をして音を弾くと、ピアノは響きとなって会場に飛んでいってくれるのだそうです。

良い演奏をするためには、事前に会場に響く音を想像し、倍音を充分に響かせ、その響きを指先で感じ、体中の皮膚でその響きを感じる事が大事だと。音楽は、空間と言うキャンバスに描く時間芸術だと言われました。演奏するときには、会場の残響時間も考慮した明確な画像を作り上げなければいけなと、細密画を描くときのような繊細な筆さばきは要求されるのだと。そうして空間に描かれた波動は、聴く人の心にも同じ様な共鳴をおこし、その記憶が何年経っても心の中に響きいていくだろうと、それが良い演奏だと。機械的なアクションが弦に触れるとき、他の弦とも重なりハーモニーが生まれ、音楽が響くのだと言われています。

とても印象的で、実際に差を解りやすく演奏しながら説明してくれる原田さんのピアノに対する愛情を感じる素敵な晩になりました。演奏会終了後、その本を求め、サインもしていただきました。買い求めたCDからは、今日演奏していただいたシューベルトやチャイコフスキーなどの素晴らしい響きが聞こえてきました。ベルリンのイエスキリスト教会の豊穣な響きの中でも、音が混ざらず一音一音しっかりと聞こえてきます。ピアノ録音としても一流な盤だと思いました。今日の講演はピアノの演奏方法ばかりではなく、響きの問題、しいては音楽の再生方法にも大変有意義なヒントを貰いました。またピアノの響きを追求する技術的な手法が、そのまま良い音で音楽を響かせる方法論にもなっていました。オーディオ的にもヒントを頂いたとても有意義な晩になりました。

日曜日は休養日

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週末も音楽会は、金曜の夜か土曜日の昼間にして、日曜日はなるべく休養に充てるようになってきました。半年ごとに老人力が増してきていますから、今までのように飛び回ったり連日、お客さんを呼んで終日聞いているような事は無くなってきました。気心の知れた常連の人なら、気を使うことも、いろいろ説明を最初からすることも無いので楽なのですが、相手のお宅に伺って、長時間聞いてはいられなくなってきたからです。これは明らかに忍耐力の減少ですから、老人力のなせる技ですね。

でも、良いことも沢山あります。朝起きてから、楽な格好したままで過ごせると言うことです(笑)。無精をしているとも言えますが、休みの日はやはりどこか怠惰な事も必要ですね。先週末は、金曜日の原田さんの為になったピアノ講習会と土曜日の午後は紀尾井ホールでの定期演奏会でした。紀尾井は、弦楽合奏での演奏会で、シトコヴェツキー編曲のゴルトベルク変奏曲BWV988(弦楽合奏版)を自身の指揮とヴァイオリン演奏で聞きました。彼が編曲したゴールドベルグの三重奏は、マイスキー・今井・ラクリンの演奏で持っています。大変難しい演奏で、特にチェロは大変だと思っていました。
この写真は反対側の四谷駅を携帯で撮ってました。シャッターを押してもすぐには撮れないスローな反応で、あとから見たら、女性が横切って中央に写っていました。私のブログではめずらしいのでこのまま掲載します。お顔も写っていないから大丈夫でしょう。
こちらは、左にベルサイユ宮殿もどきとみぎにエンパイアステートビルディングもどきの妙な東京の風景です。

その難曲に編曲者自身の指揮振りで演奏されたのですが、実際、弦楽合奏版もヴィオラとチェロの協奏曲と言った感じで、大変な難曲だと思いました。その所為か、紀尾井シンフォニエッタとしては、すこし消極的な演奏にも聞こえました。休み時間に初めてお会いしたエビネンコさんからも、水戸室内に比べて小振りだと言われたのも無理ないところです。後半のチャイコフスキーの弦楽セレナーデではまったく違う演奏をするのでは、すこし紀尾井の為に弁護したのですが、その通りの素晴らしい演奏で、何とか面目を保ちました。

ゴルトベルクは、グールドの新旧版を聞いていますが、その他にも、ピーター・ゼルキン、シフ、レオンハルト等を聞いています。そのピアノやチェンバロの演奏とはまったく違った印象を、シトコヴェツキー編曲の曲から感じます。それにしても難解な曲だと思います。しかし、後半の弦楽セレナードの演奏には大変感心しました。ともすれば通俗所為に流れる曲を、ダイナミックの変化を付けながら、まとまった演奏を聴かせてくれました。もっとも、この日の私の白眉は、アンコールのバッハのエアーでした。インテンポで、外連味のないとても良い演奏でした。
時間があるときや、お天気が良いときは、この土手の道を歩きます。遠くに、迎賓館や新宿の街が見えて、湾岸エリアのマンション群とは違った東京の落ち着いた面が見れて好きな道です。

終わってから恒例の反省会は、Bellwoodさんは今週前半お酒を控えていたので、まずは、白からといわれました(笑)。話題は、今日の演奏ばかりではなく、昨日のレクチャー、専用アースの取り方や、アンプの電源問題などのかなりマニアックな話しになりました。音楽ばかりではなくオーディオの細部にわたって話が通じるのが、面白いですね。まだ完全に暗くなる前に、四谷をでて気持ち良く地下鉄で戻ってこれました。

帰って来てから、すこし休んで、夜はまた新しいアンプの音の試聴です。たくさんのCDを隣の部屋から運んできて片っ端から聞いています。どれもが、全く新しい音で聞こえるのが、装置を換えたときの喜びですね。もっとも、依頼してあったのは、いずれも二年も前の事なので、このように同時にくるとは思っていなかったですが、懐具合は別にして、オーディオ的には嬉しい悲鳴です。

日曜日の、夕方近くなって、順列組み合わせを少しずつこなしてきた当然の実験として、"Consequence"用に製作した特注プリアンプと今回のメインアンプの組み合わせに到着しました。結果は予想通りの安定した響きで、期待通りと言うべきか、その期待より遥かに上を行く結果だと言うべきか、その音の良さと安定感に満足していました。

充実した音が聴けて、この週末は気持ちは完全に充足し、心の休養日になりました。

UNICORNさんに来ていただきました 前編

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是枝さんのモノラルアンプが、和室に導入されたのは9日のことでした。その音は最初から驚きの連続でした。まさに是枝さんのアンプの特徴を表しています。シングルアンプの様な切れ味と、清冽性。同時に、シングルでは出せない、広帯域なダイナミックレンジの有る音です。何よりも驚くのは、音のダイナミックの広さと、腰砕けにならない力強さです。それはNF専用の三次巻き線のあるタムラのトランスの特徴をいかした回路設計と、安定化電源回路を使わずに、音の強弱に自動的に応答していく、特別なバイアス回路にあります。

6336Bという、安定化電源用に開発された球で、真空管の歴史の中でも、最後に出て来た高信頼な球です。構造を見れば解りますが、非常に安定した特性と強靱なつくりの業務用の真空管です。特性は、見事に揃っておりますが、6.3V・5Aというヒーター消費電力でも、31.5Wに達します。その安定化電源用の球を出力管で使用するには、低いインピーダンスに適合する出力トランスが必要です。その為にタムラの3.8kΩ用のトランスの32Ω端子に、8Ωを繋ぐという1/4のインピーダンスの950Ωで使います。この特殊な使い方をしても、大丈夫なトランスの有無がこのアンプ製作の鍵でした。今回のアンプ実現には、このトランスの確保が大事だったのです。

UNICORNさんは、是枝さんの製作のKT-88シングルアンプでユニコーンを鳴らされています。聞かれる分野は、JAZZが6割、クラシックが4割だそうです。そのクラシックも、うちのGRFを聞かれてから、火が付いたそうで、火付け役としては嬉しいですね。反対に私がユニコーンに出会えたのも、UNICORNさんのお宅に訪問したからです。

若い頃は、球面型の無指向性のSPを作ったり、VICTORの球面SPを使ったりしていたので、360度放射のSPには興味がありました。QUADのESL-57は平面SPで前後の双方向に同じ音が出てきます。平行法で置く普通のSPは、自らの存在を消すために、回析効果が高い形状にして発音体である自らの存在を消そうとしています。ユニコーンは非常にユニークな形状で、中音以上は円錐形のチタンのコーンから、低域はバッグロードホーンから前と後ろに放射されます。

初めて聞かれる方は、低音用SPはどの辺に入っているのですか?と聞かれます。エージングが終わると、音はキャビネットの中央付近から聞こえてくるのです。その音のイメージが、ユニットの下ぐらいだと、まだエージングが終わっていません。キャビネットが乾いてくると音のイメージがどんどん拡がってくるのです。不思議で魅力的なSPです。一昨年、数セットが再生産されたので、オーナーは少しだけ増えましたが、それでも、日本中で十数人でしょう。世界中でも数える人しかいません。

現在のUNICORN Mk-IIは、ホーンの形状も変わり、低音は前方にしか出て来ません。私は、元のユニコーンの前後、縦置きの場合は左右、に出てくる低音の放射が演奏会場で聞こえてくる低音楽器のスケール感を出していると思っています。また、現在のコーン紙の主流は、丈夫なカーボンに変わってきましたが、触るとこわれてしまうカーボンより一桁薄いチタンから繰り出される、シンバルやトライアングル、金管楽器のブリリアントな響きの実在感がたまりません。

そのバッグロードホーンをしっかりと駆動する力と、繊細な高音を再現するパワーアンプの質を問われるのも、このSPを使いこなすために必要な事です。従来の5933ppアンプは15w程度の出力でしたので、オーケストラの全奏にはやはりパワーが足りませんでした。それで、是枝さんにパワーも充分で、低域特性の良いアンプをと相談したところ、自分が今まで作った現代管の中で、一番良い音がしたアンプとしてこの6336アンプの名を上げて貰いましたが、トランスやDC-DCコンバータ等の部品の困難さから作れないでいるというお話しでした。それらの困難を一つづつ解決して、足掛け二年がかりで、いま、目の前にあるのです。最終的には、トランスをフェラーリーレッドに塗るつもりです。そうするとパワーに見合った姿になるでしょう。  

来られる30分前ごろにアンプの火は入れました。電源投入時には、50mAぐらいだったバイアスの値も、70mAぐらいに上がってきました。設定値は80mAぐらいです。6336Bは丈夫なヒーターが入っています。管が暖まるまでは直熱管のようなピシピシと言った熱膨張音が聞こえてきますが、それらが収まった頃には、電流値も正常な範囲に収まってきます。最初から値を合わすと、トランス等が熱膨張した時には、値は90mAを越えてきますので、一時間ぐらいしたところで、少しだけ調整する必要があります。

このアンプは、双三極管のプッシュプルですから、真空管は単管です。それがUNICORNさんのシングルアンプ見たく見えるので、親近感を持って頂きました。最初は何を鳴らす方考えましたが、待っている間に見ていたベルリンフィルのデジタルコンサートの音をそのまま聴いていただくことにしました。ストリーミングですから、CDの再生音と比べると落ちますが、自分としては結構聴ける音だと思っていましたが、UNICORNさんは純粋に音だけ聞かれて、余り良くないとの御託宣でした!音だけで判断されるとそうかもしれません。それではと、CD34改に切り替えてお聞き願いました・・・




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