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Channel: GRFのある部屋
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ステレオ再生の醍醐味は

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音場の話を進めましょう。ステレオが出現したとき、左右の動きをピンポン球の動きで現したり、蒸気機関車が、右から左に通り過ぎたり、いろいろな方法でデモンストレーションされていましたが、ステレオ再生すると、上下・左右の二次元方向ばかりではなく奥行きも含めた三次元方向も再生できると、解っていたはずです。それは残響を伴って聞こえてくる音源の遠近で現されています。前面左右に展開するヴァイオリン群と奥から聞こえてくる木管群、そしてその上を通り越してくる金管の咆哮。会場に響き渡るティンパニーや大太鼓の音。それらが立体的に再現できてこそのステレオだったのです。

5.1チャンネルは、当初、映画の特殊音響効果を狙って作られた物です。それを、小さなスピーカーでも、サブ・ウーハーを使って低音補強し、簡単に立体感を作れる効果を狙って開発されました。二本だったスピーカーは、必ず五本以上売れるから業界には嬉しいシステムです。アンプもそうですね。停滞していたオーディオ業界に新しい需要を喚起しようと生まれました。私自身は、スピーカーマトリックスやSS方式も散々やってきたので、聴く場所や、ソースが限定される5.1には興味はなく、2チャンネルの再生をやってきました。その原点には、昔、AM放送で実験されていた、立体音楽堂での感激があったからです。

ステレオが始まった頃の、二本のマイクによるステレオ録音は、正しくステレオを再生するための、左右の時間差信号を含んでいました。それがマルチマイクになると、会場のアンビアンスを収録したメインマイクに、楽器の音を強調するマルチマイクを重ねるようになりました。その為、音の明瞭さは増しましたが、自然な音場は無くなっていたのです。その最先端がDECCAの録音です。デッカの録音は、音場より音のダイナミックレンジと周波数レンジを居っていましたから、マルチアンプの3ウェイ〜6ウェイの大型システムでは、大迫力を再現したのです。

ジャズやポピュラーを楽しまれている方々は、人工的でも、心地よいサウンドが一番大切なわけです。音楽に身をゆだねて、音の快感に酔う。これがオーディオの一つの楽しみ方です。

一方クラシックの演奏では、会場ではほとんどマイクや増幅器は使われず、いわゆるアンプラグの状態で、生の音だけで演奏されます。そして大オーケストラだと100人もの大人数がステージに展開して、演奏します。お互いの間も取らなければなりませんから、いきおい、大きなステージをほとんど占領するぐらいになるのです。

杉並公会堂のサロンは、日フィルの練習用に大ホールのステージと同じ大きさに作られた空間です。杉並公会堂は、中型ホールですから、ステージもそれほど大きくはありません。それでも、写真のように半分しか写っていなくともかなりの大きさになります。コンセルトヘボウのステージは、立体的で奥行きもある大きさです。そこでオーケストラが演奏するわけですから、音には奥行きと演奏の時間さが生まれるのです。人間の二つの耳はそれを的確に判断するのです。観客席からステージ上の立体感を聞き分けているのです。

先日の川口リリアホールでの河村尚子さんの演奏では、ステージ上のピアノが左手の繰り出す、低音部と右手の高音部の響きが方向性を持って、放射されるすさまじい演奏を聴いてきました。これはステレオでなければ再現できないと思いました。また、二本以上のマイクを合成したのでは、エネルギーの動きの整合性が無くなります。エネルギーの爆発ににじみやブレが生じるのです。再生する部屋の大きさを特定しない5.1では、いくら電気的に音の調整をしても、元の音場は再現できないのです。全く別な音場を人工的に作っているのですから。

私自身は、CDでの音の再生の素晴らしさを実感していますから、SACDの音には、それほど興味がありません。SACDでもCDでも良い演奏は良いし、駄目な演奏は駄目なのです。器が大きくても録音の仕方が間違っていれば、それなりだし、正しい音が収録されていれば、素晴らしい音が再現できるのです。家の和室でCD34改とEMM最新バージョンを聴きくらべてみればすぐに解る事です。正しい収録された良い演奏のCDではemmは素晴らしい音がしますが、収録やマスターリングが間違っていれば、良いとは決してしません。

残念ながら、SACDでなければ良い音がしないと思われているのは、ほとんどの場合、CDの音が正しく再現されていないだけです。アナログレコードの方が良いと言われるのも同じ理由です。正しく再生できていれば、結局そのメディアの限界までは、同じ音がして当たり前なのです。CDの再生限界さえ、再現できていない現状を考えれば、良い音のするCDの方が現実的だと言うことです。

昨今のBOXものは、DGG BOXのようにオリジナルと同じクオリティのものもありますが、ほとんどの場合は、価格相応の音しかしないと割り切るべきです。それが分かるまで、私も相当散財しました(苦笑)。そう、問題は、良い音がしているCDの確保にあります。残念ながら、全集ものに再編集された廉価版では良い音は余り望めないようです。レコードと同じように、昔のオリジナルCDを集めていくしか仕方ないようです。

今回のT4による一連の実験では、音場の情報の入っているCD見事にSPは消え、音楽はあたかもGRFから聞こえてくるように鳴ります。しかし、その肝心な、そして微細な音場情報を消してしまったマスターリングでは、音楽はいっぺんにつまらないものになるのです。要するにマスターリングをしている人には聞こえないか、気にしていないのでしょう。そのCDを基準にして音場がでないと言われても困ります。

一度、音場が再現されている昔のCDを聴いてみてください。そこから、調整は始まるのです。






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