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Channel: GRFのある部屋
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デコラを聴きにMさんが

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先週のアレキサンドライトさんのお宅からの帰り、西武池袋線の中でMさんと閑があったら平日の夕方でも、デコラを聴きに来てくださいと話していました。すると、火曜の夕方、さっそくのお越しをいただきました。さすが、Mさんは行動が早いです。

最初に、カートリッジの違いにより、音が変わることをご説明致しました。ステレオ再生用のMark II と Mark III の違いです。Mark III はデコラ付属のユニットと、新品未使用品tの比較も出来ます。新品未使用品は、まだエージングが足りず、少し堅めの音がしますが、針圧は一番軽い2gいかでも掛かります。付属の方は、2.2gで聴いています。Mark II のほうは、比べると一時代前の音が合うようです。50年代から60年代前半は、Mark II の方がしっくり来るようです。そのようなご説明をしてから、その差を具体的に聴いていただきました。

ピエール・モントゥのペトルーシュカとショルティの演奏で、グルックの精霊達の踊りです。どちらもデッカ録音で、デコラの音を試すには、もってこいのアルバムです。Mark III の針では、現代的な音になりますが、II だと昔の音になり、録音の時代背景を考えるとマッチしてきます。

その二つのカートリッジの差はとても大きく、聴くレコードによって使い分けが出来るのは大変面白いといえましょう。オーディオ的に見れば、断然Mark III なのですが、そんなに単純じゃないのは、ご存じの通りです。そのMark III にしても、使い込んだ付属の品と、未使用新品とも大きく音が違うから尚面白いのです。Mさんは、使い込んだ方に軍配を上げました。

その差が顕著だったのは、この尾崎紀世彦さんのレコードです。大好きな「さよならをもう一度」をスタジオ録音と実況録音盤で聴き比べました。いずれの録音も余りある声量と歌い回しで圧倒されます。Mさんから音量を上げるように言われました。アンプの調子も上がってきて実に聴きやすいいい音です。

いつもの実況録音盤が、次々と掛かり始めました。日生劇場のホールが出現します。69年盤は、ふつうは少し眠い音がします。録音の時代を考えると仕方がないかと思っていましたが、デコラで聴くと、それもMark III で聴くとまったく昨日の収録のように鮮やかで色っぽい声です。67年の京都のベラミでの録音も歌声の若さといい絶好調です。この時、越路吹雪は43歳でした。そして、私が一番好きな1979年盤は最新録音のように伴奏のディテールも聞き取れます。

こうなると、もう止まりません。二人がもっとも好きなアズナブールの1968年の厚生年金での実況録音盤、それも、アンリ・ビルスのピアノソロが絶品の「街角の瞳・私は片隅で」をMark II と III で聞き比べをしました。いずれも素敵なピアノソロが聴けます。Mさんも思わず、美しいとつぶやかれていました。銀巴里での実況録音盤で、金子由香利もアルバムも本当に素敵です。銀巴里の芸達者な伴奏者達の演奏も楽しいです。楽しいといえば、若き森進一のサントワマミーや年上の人も三次元に拡がる音がとても興味深く聴くことが出来ます。GRFのような立体感は少ないのですが、ステージはそのGRFの位置まで拡がり、拍手やファンの嬌声は、とても電蓄のデコラから聞こえているとは思えない広がりを見せます。

今日の白眉は、このヘレン・シャピロでした。(Y)さんからプレゼントされた英国盤のジュリー・ロンドンと同じで、英国製のレコード、それもモノラル盤は、別の次元の音がするのです。

デコラはモノとステレオの差が極めて小さい不思議なシステムです。デッカのV/L方式は、モノラル用の水平コイルとステレオ用の二つの垂直コイルを合成してステレオを再生します。45/45方式とは反対のアプローチで、45度のベクトルを得るわけです。モノのレコードの時は、その水平コイルが作用するわけで、45/45方式の合成されたモノラル音ではないので、極めてモノラルの音が自然です。モノ用のカートリッジは、25ミルのLP用と65ミルのSP用が用意されています。これらのMark I のカートリッジも現在取り寄せ中です。来週になると、今の4個に加え、Mark I の三つが加わります。その競演も大変楽しみです。

プロコル・ハルムの「青い影」は、昭和42年の発売当時のシングル盤です。60年代のブリティッシュロックやヘレン・シャピロやクリフ・リチャードは驚くべきフレッシュなサウンドで掛かります。Mさんはまるでジュークボックスの様だと感嘆されました。二人とも、この音を聴くと、この50年間のオーディオの歴史、デジタル録音の得た物と失った物の差を考えざるを得ません。

 
デコラで聴くレコードの音は、普通聴いているレコードの再生音とはまるで違ったイメージで鳴ります。不要な音がしないのです。モーターのゴロやワウ・フラッタ、スクラッチノイズの音が極めて少ないのです。一因には、プレーヤーのコラーロの優秀さが上げられます。ガラードの前身みたいな構造ですが、ガラードのようなぎこちなさはありません。Thorens124のような滑らかだけど幾分低音が薄い感じもないのです。

そして、何よりも大きな驚きは、DECCAのレコードのイメージがまったく違う物に変わることです。DECCAのモノラル盤は、後年のLXT盤に代表されるような、幾分硬質な凝集感を感じるのですが、デコラのモノラルは凝集感は密度が高まりこそすれ、硬質な感じはまるでなく、FFRRのイメージがいかに違っていたかを聴かせてくれるのです。

ご常連へのお披露目は、この週末からです。皆さん、待ちきれないご様子で、いかにお待たせしてきてたかを聴いて大変恐縮しています。長い眠りから醒めた貴婦人は、だんだん、時が経つにつれ舞う姿も優美になってきました。カートリッジが特にそうです。

チューナーとプリアンプが入っているカバーを拡げると、両腕を上げて舞う、優雅な姿になります。その手の先まで音が拡がり、浮き上がっていく様は、優美で奇跡の舞いを見ているようです。去年の3月1日に落札してから、今日まで、沢山のことがありました。是枝さんにお願いした、アンプとプレーヤーの修理も、一年掛かりでしたが、Oさんの多大なご協力で、無事に組み上げる事が出来ました。それから、微調整と鳴らし込みに入り、三週間が経ちました。

昨日のMさんのお顔を見ていればどこまで仕上がって来ているかが、解りました。まだまだ、微調整は続きます。私の実感では、現在まだ8合目あたりだと思います。ハムを完全に追い込んで、スポンジの材料も吟味し直し、カートリッジも鳴らし込みを続けていけば、もう一皮も、二皮も脱皮して、もっときれいな蝶に変身していくと思います。

これから、皆さんのご意見をお聞きして、焦らず仕上げていきたいと思います。



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