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Channel: GRFのある部屋
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TW2開発記

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横浜のMさんの要請で、G1の低音部を使っていたTroubadour80用のウーファーの試作が始まったのは、ちょうど一年前の六月でした。PSDの大山君のところに集まり、構想を検討したのです。Troubadour80は、上下に二本の German Physiks のユニットがスタックされています。そのエネルギーは、Mさんのお宅で直接比較できる、パラゴンのJBLのホーンドライバーに負けません。リアリティーが凄いのです。トランペットやサックス、クラシックでは、トロンボーンやホルン、そしてチューバの迫力有る音を現物大で再現します。その点が、シングルユニットのユニコーンと大きく違う点です。

開発は、様々な可能性を考慮して熟考を重ねました。一番難しかったのは、Troubadour80は、その能力を最大限発揮しようとすると、300Hz前後で繋がなければならない点でした。スーパーウーハー専用機では、100Hz以下は出ますが上が繋がりません。その意味では、素性のよい能率の高いウーハーを使用しなければ、300Hz前後のつながりが不自然になります。その繋がり方が、ジャーマンのユニットを使うときのコツになります。その為には、大口径のウーハーで、楽々と音を出さなければ、音楽が鳴らないのです。

これは難題でした。300Hzまで延ばそうとすると、コーンの軽いタイプでなければ、全方位に放射されるユニットにマッチしません。そうなると、最低域は40〜50Hz止まりになり、コントラバスの最低音やグランカッサやチューバなどの実際に音域がでなくなり、実在感が無くなるのです。どうしたら最低域を伸ばせるか検討を重ねました。その時、参考になったのは、"Consequence"でした。二つの同じユニットを前後に並べ、同相で鳴らします。中に入っているユニットが、前のユニットを支えます。振幅も大きくなり、歪みも減ります。キャビネットの設計は綿密な計算と、カットアンドトライを必要とします。

試作機をつくり、実験を重ね、音を確認していきました。PSDの試聴室は、12畳分の広さのログハウスです。那須の石田さんと同じですが、天井高だけ少し高くしてありますが、大音量を出すと音は、普通は飽和してしまいます。しかし、不思議なことに、このTroubadour80はその飽和感が少なく、ストレス無く音量を上げられます。そして、上手く低域を繋げば、今まで聞いたことの無いような実在感有る音がし始めます。


ユニットは、46センチの能率がよいタイプにしました。この状態で、音の繋がりを試しました。そして、このキャビネットの中に、今ひとつのユニットを入れて、プッシュプル方式で駆動しようとしたのです。その音が鳴ったのが、私は参加できなかったのですが、去年の10月中旬でした。

GRF様 こんばんは。

本日、Mさんが大宮まで試聴に来てくれました。(ポルシェで参上。997カレラのコバルトブルー 最高です!)ウーハーに関しまして概ねOKは貰いましたが、注文が幾つかありました。

①プッシュプルダブルウーハーに進化させる前に、絶対にGRFさんに聴いてもらう事。ユニコーンの専門家の意見として製品にフィードバックする事。
②低域のレンジをもう一歩伸ばす。
③低域のある場所でレベルが大きくなる場所が有る。そこを解決する事。

①に関しましては、GRFさんのスケジュール次第ですので、お時間のある時に連絡下さい。
②に関してはプッシュプル方式(アイソバリック方式とは違います)に移行すれば解決できると思っています。
③に関しましては部屋の定在波の影響か、補強不足の箱鳴りの可能性が有ります。プッシュプル方式に移行する際に箱の補強をします。部屋の定在波の可能性を考えると、MさんかGRFさんの広い部屋に持ち込んで、最終確認したいと思います。

まだ実験中の未完成品ですが、ソースによってはトラバドールが朗々と巨大なスケール感で鳴り出します。当初、危惧していたウーハーとの繋がりの部分はスピード感も含めうまくいったのだと思います。駆動しているSD05(25W/8Ω)のドライブ能力にも今更ながら驚いております。Mさんも、かなりの潜在能力が有ると認めてくれましたので、これから完成度をもっと上げていきたいと思います。

という、嬉しいメールを出張先でみて期待が膨らみました。Mさんも、製作した大山君も期待以上の音に驚いているようです。私も実験成功を喜びましたが、この実験機の四角い箱ではいかんともしません。上にTroubadour 80を置くので、高さの制限があります。全面の投影面積を考えると、奥行き方向に容積を伸ばすしかありません。Mさんからいろいろな要望をお聞きして、様々なデザイン案が出ましたが、とりあえず、1/2のモデルをつくり、次回、プッシュプル方式の音を聞くときに、検討してみようと言うことになりました。

GRF様
 
こんばんは。寒くなりましたね。先日来お打ち合わせをしてきた、1/2モデルの写真を送ります。横置きと縦置きで印象がかなり違います。ウーハーではなく、お洒落なスタンド又はオブジェ風に仕上げられればと考えていますが、如何でしょうか?Mさんも交え、1/2スケールモデルを囲み打ち合わせしたいです。プッシュプル方式に進化させたトラバドール用ウーハーの試聴ですが、12/14(土)の午後ではいかがでしょうか?プッシュプル化により再生周波数も拡大し、本物の低音が出てきています。当日、Mさんには突き板見本を持って来て頂き、仕上げの打ち合わせも出来ればと考えております。

年末の忙しい中申し訳ありませんが、お時間の都合がつくようでしたら、ご連絡下さい。

PSD 大山




実験を通じて、試作を繰り返し、最終的にMさんにも音を聞いていただき、音質的に満足が得られてきたのは、構想が出来てから半年後の12月の中旬でした。この状態で、三人で音の検証を行いました。まだ補強が終わっていない最低音を除き文句付けようのない音で、雄大な音場を再現したのです。和室のユニコーンもそうですが、このユニットは、部屋の大きさを問いません。壁が無くなり、コンサートホールが目の前に拡がるのです。加えて低域のスケールが全く違い、実物大の音が再現出来ました。この効果には三人とも驚き、新しいドアの隙間から、全く今までとは違う世界が見え始めたのです。

同時に、Mさんのあの素敵な部屋に置いても、見劣りをしない仕上げ、デザインを考えました。キャビネットの補強も兼ねた強いリブを、フェラーリーのテスタロッサの空気取り入れ口のデザイン風にしたのです。仕上げの材料、付き板の種類と、カラー、二つのユニットを組み込む方法、補強の仕方など、基本的な方向性を決めて、大山君の試作を待ちました。


GRFさん

メーカー在庫切れで待たされていたシナアピトン材もようやく入荷し、板材のNC加工が始まりました。取り外し可能なバッフル構造に苦戦しつつも作業を進めています。今回はとにかく各部の強度を確保しないといけませんので、細部に渡り気を使っています。エンクロージャーを組み立て、フィン部分を接着してしまう前に相談に行って助かりました。工程ごとにそれぞれの都合が有りますので、全体を見ながら進めていかないと大きな失敗に繋がります。

大変長い時間お待たせしてしまいご迷惑をお掛けしておりますが、その分かなり良い物に仕上がると思います。

今後の予定

1.NC加工が終わったら、箱を組みます。
2.ネットワークを組み、試聴します。
3.吸音材と補強材の調整をします。
4.一部箱をばらし、突き板加工、塗装に回します。
5.最終組み立て、試聴、最終確認。
6.引き渡し

まだまだ先が長いですが、下準備でかなり追い込んでありますので音的には大丈夫だと思います。突き板と塗装は外注ですので、なかなか時間が読めません。増税前の駆け込み需要で塗装屋さんも手が一杯だと聞いていますので、塗装作業に時間が掛るかもしれません。参考までに天板の加工の様子を送ります。

大山








そして、すべてが完成して、Mさんのお宅に運ばれたのが、先週の6月8日でした。構想から完成までちょうど一年。Mさんの望まれた音が、実現しました。何回も試作をして、音を確認しながらの製作でしたが、仕上げのクオリティも背後のパラゴンに負けていません。最終工程で、追加されたおしゃもじ状の板は、Troubadour用の台座になります。これにより繋がりも音も一気によくなりました。

360度に音を放射して、音場を再構築する音は、2チャンネルのステレオの真価を問います。チャンスがあれば、是非、Mさんの所で実際の音を聞かれてください。クラシックとライブの音源が、いっそう素晴らしいのは当然といえば当然なのですが、、、・









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