Quantcast
Channel: GRFのある部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2210

紀尾井ホール定期演奏会 ジョン・ネルソンと小菅優

$
0
0
紀尾井シンフォニエッタ東京が、紀尾井ホール室内楽団と名前を変えて二回目の演奏会に行ってきました。前回から、シンフォニエッタ時代のおとから一回り大きく変わったように思いました。マーラー室内管弦楽団にも通じる、真のオーケストラの力を感じたからです。メンバーは、ある意味、日本の演奏家のオールスターだと思います。何より管楽器の充実と世界最高水準といえる8・6・6・4・2の弦楽器の構成は、一回り大きなオーケストラの響きを感じさせるからです。

今日の指揮者のジョン・ネルソンは、アメリカの指揮者ですが、近年はパリに住んでいて、バッハやヘンデル、そしてロマン派の音楽も得意としています。どちらかというと陽性な音楽が向くのかもしれません。


f0108399_13392389.jpg



dccのテープの実験を繰り返していたので、時間に気がついて家を出たのは、もう一時を回っていました。例によって四谷駅に着いたのは、15分前。上智の大学の横を早足で歩いていると、前回とは違って蒸し暑く、雨は降っていませんでしたが、持参した傘を傘立てに入れると、皆さんもう席に着かれていました。最近は、演奏が始まる前は、必ずトイレに行くようになりました。こういう蒸し暑い日は、空調がきつく回り、その冷たい風が直撃します。夏こそ上着が必要なのです。席につくと、案の定、左上から冷たい風が吹いていきました。



一曲目は、ルーセル:「蜘蛛の饗宴」から交響的断章です。この曲は、めずらしい曲ですが、私の大好きなクリュイタンスの名演があります。ドビュッシーやラベルの影響を受けた作品で、印象主義的な曲風で、官能的ともいえる精緻な演奏を求められます。どちらかというと明るい曲で、それがネルソンの個性と合っているのでしょう。紀尾井室内楽団の木管は丁寧に演奏していきます。私自身は、もっと流れるような感じが出た方が良いのにと思ってはいました。クリュイタンスの演奏がそうだからです。もともとはバレエ曲で、蜘蛛の巣に引っかかり、蜘蛛の食べられてしまう感じは、ネルソンの演奏にはよく出ていました。ラヴェルの曲と同じで、木管楽器の活躍が演奏の鍵です。その点は良かったのですが、弦楽器の流れと木管の演奏のタイミングがマッチしない感じもしてすこし演奏がわかりにくいと感じました。


f0108399_23420026.jpg



もっとも、前日はdccの音の調整と、週末だけに許している有機ELによる映画三昧で夜更かししていますから、感覚が少し遠い感じで、曲の中に入って行け無かったのかもしれません。また、蒸し暑いなか、四谷駅から早足で歩いてきた動悸が収まっていないのかもしれません。先日の健康診断でも、太りすぎの弊害を指摘されたばかりです(苦笑)。そろそろ真剣に取り組まないと折角の名演も味わえなくなってしまいます。


その遠い感じは、二曲目のショパンの協奏曲になってもぬぐえませんでした。昨年の10月のはじめ室内楽形式のショパンのピアノ協奏曲第一番を今日と同じ小菅優さんの演奏で聴いています。オーケストラでは無く、室内楽の弦楽五重奏と共演なので、音量的なコントロールや管楽器が無いとどうなるかと思っていましたが、仲間同士が協調し合って音楽を作っていく楽しい演奏で、面白かったです。


ただ、以前から私が感じている、小管さんが暗譜の時は、演奏が内省的になり過ぎる傾向が、今回も現れたように思います。演奏に没頭するときの内省的な演奏スタイルがマッチする曲なら良いのかもしれませんが、今回の第二番は、オーケストラとの飛躍や協調が求められる曲ですので、ピアノソナタ的な演奏スタイルが合わない感じもしました。オーケストラとの一体感が希薄で、彼女の伴奏をしている感じが、協奏曲としては違和感を感じました。演奏が長く感じられたのも事実です。呑まされている薬の影響かもしれませんが・・


三楽章の爆発的な喜びのところもオーケストラは、いまいち、音量を全開しません。 丸山さんのホルンはうまいのですが、オーボエもクラリネットもそしてファゴットも皆うまいのですが、そのオーケストラの響きが、少しブレーキを引きずりながらという感じがぬぐえませんでした。


休憩になりました。


今日は、知っている人もいませんし、薬を飲んでいるのにワインというわけにも行きませんから、休憩の二十分間が長く感じました。ベルが鳴ってから、久し振りにご常連のNEXTNEXTさんご夫妻に会いました。お元気そうでした。


f0108399_23420483.jpg



さて、第二部のビゼーの交響曲ハ長調は、わたしが唯一聴くと言ってもいい、小澤征爾の若き日の名盤があります。この曲はメンデルスゾーンのイタリアを思わせる、思いっきり明るいハ長調の和音から曲は始まります。ネルソンは、今までの禁欲的な演奏スタイルをやめて、指揮台に登るやいなや思いっきり左方向に身体を投げ出して演奏が始まりました。よい響きです。第一部でずーっと感じてきた、どこかわっかをはめられたような演奏スタイルでは無く、明るく堂々としたオーケストラの響きは、新しい紀尾井室内管弦楽団の可能性を大きく開いてくれました。


そうだよ、こう来なくっちゃ!と膝を打ちたいような嬉しい気持ちになりました。こんな良い曲が、1935年にワインガルトナーによって初演されるまで、80年間も眠っていたそうです。サンサーンスの助力で日の目を見た曲です。こういう歴史を持っている曲は意外と多いですね。終わりよければすべてよし、ネルソンに対する評価は一気に高まりました。


傘を忘れずに持って表に出たら、雨はすっかりやんで、何時もの汁たっぷりで美味しいいなり寿司を買って帰りました。何時もはこのお寿司屋さんの前のイタリアンで反省会を開くのですが、今日はひとりだし、アルコールミニ断ちもしているので、早々と電車で戻りました。南阿佐ヶ谷の駅を上がったら、すっかり天気になり、陽が長い七月の初頭の夕方は、まだ陽がきらきらと輝いていました。


f0108399_00265934.jpg





第107回 紀尾井室内管弦楽団 定期演奏会


2017年7月1日(土)14時


[指揮]ジョン・ネルソン
[ピアノ]小菅 優


[曲目]ルーセル:「蜘蛛の饗宴」から交響的断章 Op.17
    ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調Op.21
    ビゼー :交響曲第1番ハ長調






Viewing all articles
Browse latest Browse all 2210

Trending Articles