家を出るときはまだ雨は降っていませんでした。近くのバス停で待っているうちに、ポツリときました。阿佐ヶ谷駅から各駅停車で三鷹駅に着いたときには、雨は本格的に降り始め、駅前は傘の花が咲いていました。三鷹駅から武蔵野文化会館までは、あるいて15分ですが、途中まで行かないうちに強く降ってきて、足下も濡れ始めました。三年ぐらい前に、バリトンのローマン・トレーケルの演奏会の時に集中豪雨に遭い、駅から向かう途中で雨宿りしたことを思い出しました。あのときは、強い雨足に開演時間通りにこれる人も少なく、開始時間が下がりました。そんなことを思い出しながら、強くなる雨足の中歩いていました。
今日のオーケストラも先日のブリュッセル・フィルと同じように初来日だそうです。ブリュッセル・フィルもこまめに日本各地を回っていましたが、今回のハンブルグ交響楽団も、6月29日の盛岡を皮切りに、30日青森、休みを挟んで7月2日には 山口へ飛び、3日は京都に戻り、4日の武蔵野、5日の東京文化会館、そこで休みを入れて、7日には福岡へ飛び、8日の鹿児島、そして最終日は9日の佐賀まで、九回の公演をこなします。大変ですね。それでも日頃、海外のオーケストラが行かない地方都市を回ってくれるのは、良いことだと思います。また、ヨーロッパのオーケストラも日本のどこに行っても、立派なコンサートホールがあるのには驚かれるでしょう。
ハンブルグは一回しか行ったことがありません。真冬だったせいもあり、三十年前ですから、暗く冷たい街だった言う印象しかありません。そのエルベ川のほとりに、長い時間を掛けて新しいコンサートホール、エルブフィルハーモニーが生まれました。NDR北ドイツ放送交響楽団が、名前をエルブフィルハーモニーと名前を変えて活躍しています。是非行かなくてはなりません。よく出かけるオランダからは近いのです。ハンブルグには、三つのオーケストラがあり、NDRを筆頭に、州立歌劇場のオーケストラ、コンサートではハンブルグ・フィルハーモニーと言う名です、が次に有名です。今日のハンブルグ交響楽団は、この街の三番目のオーケストラですね。
ハンブルグは人口175万人、日本では札幌より少し小さく、神戸や福岡より少し大きいぐらいでしょうか、ドイツではベルリンに次いで二番目に大きな街ですので、オーケストラが、三つあってもおかしくはありません。ドイツには133団体もオーケストラがあるそうです。四年ほど前に詳しく調べたことがあります。それによると、一番オーケストラの密度が高いのはベルリンですが、数が多いのはミュンヘンですね。ミュンヘンは数だけでは無く質も大変高いですし、バイエルン州はドイツでも一二の大きさですから、数も多いのです。ニューベルングやバイロイトも含んでいますから。
ハンブルグで三番目のオーケストラの実力は?というのが聴く前の感覚でした。今日の指揮者は、東ドイツの名指揮者クルト・ザンデリングの二番目の息子で、シュテファン・ザンデリングです。一番下の弟のミヒャエル・ザンデリングは、ドレスデン・フィルを率いて、日本を同時期に回っています。こちらも日本中ツアーしています。ドレスデンのあるザクセン州もベルリンの南側の旧東ドイツの中心で、オーケストラの数では、ミュンヘンに負けていませんので、有名なオーケストラが目白押しです。そのなかでもドレスデン・フィルは、ティーレマンの率いるドレスデン国立歌劇場に次いで有名なオーケストラです。
ドレスデン・フィルは、6月24日が名古屋、25日が所沢ミューズ、26日が武蔵野、28日は長野のホクト、7月1日が大阪シンフォニーホール、7月2日がミューザ川崎、4日が池袋、5日が浜松アクトですから会場の格から行くと、やはりドレスデンの方が知名度がありますね。13年、15年と来日を重ねているからでしょう。
ただ、何回も来ているから良い演奏カと言うこともあります。初めて来日するオーケストラは、次に呼んでもらえるかが掛かっています。その意味で、先日のブリュッセル・フィルも真剣勝負でしたね。
今日の、ハンブルグ交響楽団はいかがでしょうか?曲目は、ハンブルグにふさわしい、ブラームスの交響曲第4番と1番です。奇しくも、弟のドレスデンと同じプログラムです。私は、後半の一番の方に期待しました。
団員が出てくると、女性のティンパニストに驚きました。日本の方だとは思いますが、お名前は存じません。もっとも、このオーケストラには、東洋系の奏者が8名ほどおられるのですが、確認できた日本のかたは、3名だけでした。
最初のブラームスの四番の出だしは、やはり雨と湿気の影響で音がばらばらな感じがしました。弦楽器と管楽器の音質の差がありました。14・12・10・8・6のオーケストラは、幾分小さい編成ですが、ブラームスでは適正なサイズかもしれません。しかし、武蔵野のホールの所為もあるのですが、先日のブリュッセル・フィルみたいな一体感がありませんでした。ドイツではあり得ない蒸し暑い気候に、自分で出ししている音がコントロールできないという感じで、音がずれていきます。
ハーモニーの和音が微妙にずれて音のエネルギーを相殺しているような感じです。女性のティンパニストの音もびくびくしながら音程を探しているようです。木管は安定していますが、クラリネットの人が頑張りすぎのような感じがしました。音が元気すぎるのです。オーボエは、ほぼ良いのですが、可も無し不可も無しともいえます。フルートの女性陣はくすんだいい音を出しています。ファゴットもまあまあです。金管はホルンは秀逸ですが、まだ、一番ホルンの音はあまり聞いていません。トランペットは湿気の影響なくぴっしと決めています。安心できますね。
全体では、くすんだ響きで、いかにも北ドイツのオーケストラという響きを聞かせてくれています。4番は少し地味に聞こえました。指揮者のシュテファン・ザンデリングはとても安定しています。全体で音楽をとらえ、尻上がりに良くなっていくのがわかります。オーケストラの響きをわかっているのでしょう。楽章が進むにつれて、だんだん、音があってきてオーケストラの実力が発揮されてきました。ただ最後まで、ティンパニーは弱い感じがしました。後半は、第一番ですから、男性のティンパニストに替わるのでしょうか。
武蔵野のホールではワインは売っていません。相変わらず、アルコールを控えているのでなんともありませんが、と言って冷たいジュースなどを飲むと、あとからお腹が痛くなります。ホールの中は冷たい風が時々吹くからですが、空調は今回の改修で替わったのでしょうか、紀尾井みたいな冷たい風の直撃が無いのは安心でした。きれいに改修されたトイレは、明るく清潔なミューザ風で使いやすいです。
さて、後半の第一番が始まりました。編成はトライアングルが無くなったぐらいでほとんど替わりません。もっとも、トロンボーンの三人は四楽章まで出番がありませんから、退屈でしょうね。時差ぼけでぼーっとしないのでしょうか?
懸念されていたティンパニーですが、冒頭のおとから違います。力強い音でオーケストラを引っ張っていきます。見直しました。それに、さっきの四番とは、コントラバスやチェロのボーイングの響きも違います。ブラームスらしい、ベートーヴェンらしい、再低域が出てきました。するとオーケストラのスケールが見違えるほどはっきりと大きくなったのです。それにつれて管楽器も旋律を引っ張ります。
いかにも北ドイツのオーケストラという感じの、重厚な演奏に一変したのです。音のダイナミクスも格段とまして、オーディオ的に言うと最低域の再現性が良くなったような感じです。音も粘りこくなって、ブラームスの一番やピアノ協奏曲のあの雰囲気が出てきました。こんなに替わるとは思いもしませんでした。
一気に終楽章まで走ります。繰り返しも丁寧に演奏すると、音楽のながれが悠久の流れに替わっていくのです。チェロの低弦がホルストの惑星の響きにも似た悠揚迫らざるテーマを奏で始めると、今日は来て良かったとつくずく思いました。世界的にもうるさい武蔵野の聴衆を前に気合いが入ったのでしょう。排気量が4番とは全く違うと思いました。
アンコールも演奏されました。フィガロの結婚です。テンポと言い、アンサンブルと言い、最高でした。今日は大満足ですね。
表は案の定、大雨でした。ますます強くなってきます。思い切って、吉祥寺方向に早足で歩きながら、横道から出てくるタクシーを探しました。三つほど来たところの信号で、運良く拾えました。今日はこのまま、五日市街道を戻り、自宅まで濡れずに帰れました。家人は帰りが早いのでビックリしたようです。
良い演奏会でした。
今日のオーケストラも先日のブリュッセル・フィルと同じように初来日だそうです。ブリュッセル・フィルもこまめに日本各地を回っていましたが、今回のハンブルグ交響楽団も、6月29日の盛岡を皮切りに、30日青森、休みを挟んで7月2日には 山口へ飛び、3日は京都に戻り、4日の武蔵野、5日の東京文化会館、そこで休みを入れて、7日には福岡へ飛び、8日の鹿児島、そして最終日は9日の佐賀まで、九回の公演をこなします。大変ですね。それでも日頃、海外のオーケストラが行かない地方都市を回ってくれるのは、良いことだと思います。また、ヨーロッパのオーケストラも日本のどこに行っても、立派なコンサートホールがあるのには驚かれるでしょう。
ハンブルグは一回しか行ったことがありません。真冬だったせいもあり、三十年前ですから、暗く冷たい街だった言う印象しかありません。そのエルベ川のほとりに、長い時間を掛けて新しいコンサートホール、エルブフィルハーモニーが生まれました。NDR北ドイツ放送交響楽団が、名前をエルブフィルハーモニーと名前を変えて活躍しています。是非行かなくてはなりません。よく出かけるオランダからは近いのです。ハンブルグには、三つのオーケストラがあり、NDRを筆頭に、州立歌劇場のオーケストラ、コンサートではハンブルグ・フィルハーモニーと言う名です、が次に有名です。今日のハンブルグ交響楽団は、この街の三番目のオーケストラですね。
ハンブルグは人口175万人、日本では札幌より少し小さく、神戸や福岡より少し大きいぐらいでしょうか、ドイツではベルリンに次いで二番目に大きな街ですので、オーケストラが、三つあってもおかしくはありません。ドイツには133団体もオーケストラがあるそうです。四年ほど前に詳しく調べたことがあります。それによると、一番オーケストラの密度が高いのはベルリンですが、数が多いのはミュンヘンですね。ミュンヘンは数だけでは無く質も大変高いですし、バイエルン州はドイツでも一二の大きさですから、数も多いのです。ニューベルングやバイロイトも含んでいますから。
ハンブルグで三番目のオーケストラの実力は?というのが聴く前の感覚でした。今日の指揮者は、東ドイツの名指揮者クルト・ザンデリングの二番目の息子で、シュテファン・ザンデリングです。一番下の弟のミヒャエル・ザンデリングは、ドレスデン・フィルを率いて、日本を同時期に回っています。こちらも日本中ツアーしています。ドレスデンのあるザクセン州もベルリンの南側の旧東ドイツの中心で、オーケストラの数では、ミュンヘンに負けていませんので、有名なオーケストラが目白押しです。そのなかでもドレスデン・フィルは、ティーレマンの率いるドレスデン国立歌劇場に次いで有名なオーケストラです。
ドレスデン・フィルは、6月24日が名古屋、25日が所沢ミューズ、26日が武蔵野、28日は長野のホクト、7月1日が大阪シンフォニーホール、7月2日がミューザ川崎、4日が池袋、5日が浜松アクトですから会場の格から行くと、やはりドレスデンの方が知名度がありますね。13年、15年と来日を重ねているからでしょう。
ただ、何回も来ているから良い演奏カと言うこともあります。初めて来日するオーケストラは、次に呼んでもらえるかが掛かっています。その意味で、先日のブリュッセル・フィルも真剣勝負でしたね。
今日の、ハンブルグ交響楽団はいかがでしょうか?曲目は、ハンブルグにふさわしい、ブラームスの交響曲第4番と1番です。奇しくも、弟のドレスデンと同じプログラムです。私は、後半の一番の方に期待しました。
団員が出てくると、女性のティンパニストに驚きました。日本の方だとは思いますが、お名前は存じません。もっとも、このオーケストラには、東洋系の奏者が8名ほどおられるのですが、確認できた日本のかたは、3名だけでした。
最初のブラームスの四番の出だしは、やはり雨と湿気の影響で音がばらばらな感じがしました。弦楽器と管楽器の音質の差がありました。14・12・10・8・6のオーケストラは、幾分小さい編成ですが、ブラームスでは適正なサイズかもしれません。しかし、武蔵野のホールの所為もあるのですが、先日のブリュッセル・フィルみたいな一体感がありませんでした。ドイツではあり得ない蒸し暑い気候に、自分で出ししている音がコントロールできないという感じで、音がずれていきます。
ハーモニーの和音が微妙にずれて音のエネルギーを相殺しているような感じです。女性のティンパニストの音もびくびくしながら音程を探しているようです。木管は安定していますが、クラリネットの人が頑張りすぎのような感じがしました。音が元気すぎるのです。オーボエは、ほぼ良いのですが、可も無し不可も無しともいえます。フルートの女性陣はくすんだいい音を出しています。ファゴットもまあまあです。金管はホルンは秀逸ですが、まだ、一番ホルンの音はあまり聞いていません。トランペットは湿気の影響なくぴっしと決めています。安心できますね。
全体では、くすんだ響きで、いかにも北ドイツのオーケストラという響きを聞かせてくれています。4番は少し地味に聞こえました。指揮者のシュテファン・ザンデリングはとても安定しています。全体で音楽をとらえ、尻上がりに良くなっていくのがわかります。オーケストラの響きをわかっているのでしょう。楽章が進むにつれて、だんだん、音があってきてオーケストラの実力が発揮されてきました。ただ最後まで、ティンパニーは弱い感じがしました。後半は、第一番ですから、男性のティンパニストに替わるのでしょうか。
武蔵野のホールではワインは売っていません。相変わらず、アルコールを控えているのでなんともありませんが、と言って冷たいジュースなどを飲むと、あとからお腹が痛くなります。ホールの中は冷たい風が時々吹くからですが、空調は今回の改修で替わったのでしょうか、紀尾井みたいな冷たい風の直撃が無いのは安心でした。きれいに改修されたトイレは、明るく清潔なミューザ風で使いやすいです。
さて、後半の第一番が始まりました。編成はトライアングルが無くなったぐらいでほとんど替わりません。もっとも、トロンボーンの三人は四楽章まで出番がありませんから、退屈でしょうね。時差ぼけでぼーっとしないのでしょうか?
懸念されていたティンパニーですが、冒頭のおとから違います。力強い音でオーケストラを引っ張っていきます。見直しました。それに、さっきの四番とは、コントラバスやチェロのボーイングの響きも違います。ブラームスらしい、ベートーヴェンらしい、再低域が出てきました。するとオーケストラのスケールが見違えるほどはっきりと大きくなったのです。それにつれて管楽器も旋律を引っ張ります。
いかにも北ドイツのオーケストラという感じの、重厚な演奏に一変したのです。音のダイナミクスも格段とまして、オーディオ的に言うと最低域の再現性が良くなったような感じです。音も粘りこくなって、ブラームスの一番やピアノ協奏曲のあの雰囲気が出てきました。こんなに替わるとは思いもしませんでした。
一気に終楽章まで走ります。繰り返しも丁寧に演奏すると、音楽のながれが悠久の流れに替わっていくのです。チェロの低弦がホルストの惑星の響きにも似た悠揚迫らざるテーマを奏で始めると、今日は来て良かったとつくずく思いました。世界的にもうるさい武蔵野の聴衆を前に気合いが入ったのでしょう。排気量が4番とは全く違うと思いました。
アンコールも演奏されました。フィガロの結婚です。テンポと言い、アンサンブルと言い、最高でした。今日は大満足ですね。
表は案の定、大雨でした。ますます強くなってきます。思い切って、吉祥寺方向に早足で歩きながら、横道から出てくるタクシーを探しました。三つほど来たところの信号で、運良く拾えました。今日はこのまま、五日市街道を戻り、自宅まで濡れずに帰れました。家人は帰りが早いのでビックリしたようです。
良い演奏会でした。