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ブリュッセル・フィルを新装なった武蔵野市民文化会館で

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改修工事で長い間閉じていた武蔵野市民文化会館がリニューアルオープンをしたのは今年の連休前のことでした。小ホールは5/18ですからまだ二十日も経っていません。耐震対策と老齢化に伴うエスカレーターとエレベーターの新設と増設、その他の改修をおこなったようです。確かにきれいになっていました。ステージも新しい床になっていました。椅子も幅が広くなり、座り心地も随分と向上した気がします。全体に明るくなりましたね。地元では、新築費にも匹敵するような改修費が大問題でしたが、作り直して使い勝手が悪くなった杉並区の住人としては、旧いホールを活かす今の方法が良いと思いました。武蔵野市民会館で認められるのはヨーロッパの演奏家にとっては登竜門です。


今回初来日のブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団は、聴いたことはありません。ベルギーのオーケストラはコンセルトヘボウできいたベルギー国立管弦楽団だけです。今回の指揮者のステファン・ドゥネーヴは去年、同じコンセルトヘボウでフランス音楽を聴きました。とても元気な指揮者だと思いました。かれが常任指揮者として活躍しているのがこのブリュッセル・フィルハーモニーです。サイトウキネンでも活躍しているドゥネーヴさんは日本通です。自分のオーケストラが日本でも知られるように努力されたのでしょう。ちょうどANAがブラッセル便を始めたところなので、いろいろなことを利用して日本ツアーを計画したようです。その費用もファンドから融資して貰っての来日だそうです。


昨日の武蔵野を皮切りに、今日は愛知、明日の日曜は、また東京に戻り池袋、明後日は札幌、そこで一日休みを取って金沢・姫路・東広島・観音寺・福岡と文字通り日本中を転戦します。後半の姫路、東広島、観音寺、福岡はなかなか一流のオーケストラは来ません。今回のツアーは日本中で評判になるでしょう。


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演奏は、初めて聴くコネソンの「炎の言葉」という曲でした。演奏前に片言の日本語をまじえたユーモアたっぷりのドゥネーヴの説明がありましたが、運命のモチーフ使っている曲だそうです。オーケストラは、14・12・10・8・6の三管編成です。幾分小ぶりですが、管楽器のバランスが良く聞こえます。弦楽器はベルギーのオーケストラ特有の柔らかく包容力のあるバランスとれた音で、ウィーンフィルのように第一ヴァイオリンだけが特出しません。音色は第一が第二のパートを弾いているような感じです。無いよりもヴィオラとチェロの響きが美しかったです。そして木管は皆、名手で聴いていて安心感があります。


二曲目のプロコイエフで、オーケストラの音が開花しました。打楽器類や金管楽器が跳躍してオーケストラの規模が一回りも二回りも大きくなります。打楽器がうまいと安心して聴いていられますね。プロコイエフのオーケストレーションは何も聴いても驚かさせられますが、抜群のアンサンブルの力で、軽快に、ときに重厚に飛ばしていきます。この曲が聴けるのは、9回ある公演でも今日だけですから幸運でしたね。武蔵野の聴衆は日本有数のお客さんです。静かに聴いている集中度、終わってからの拍手の反応はオーケストラに力を与えるでしょう。良い演奏でした。


休憩はワインはありませんから、20分は長く感じました。


後半の一曲目は、ドビュッシーの「海」です。好きな曲です。ステファン・ドゥネーヴはやはりフランスの指揮者です。フランスモノを振ると実力が出ます。三曲目の「風と海の対話」が気合いが入って良い演奏でした。初版の方の演奏だった気がします。オーケストラの実力が遺憾なく発揮されたのは、『ボレロ」ですね。揺るぎない小太鼓のリズムに乗って、すべてのソロ楽器がメロディーを受け渡して歌っていきます。ソロサックス奏者の伊藤あさぎさんの音がとても柔らかく心にしみました。そして最後の大団円、三管編成とは思えないほどの音量で聞き終わってとてもすっきしりました。


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伊藤さんのtwitterより



アンコールも大サービスのファランドール。全員楽しそうに演奏していました。オーケストラがたのしくてとても上手です。良い演奏会でした。改装された市民ホール、初めての日本ツアー、元気一杯の世界中で活躍する指揮者、そして良い聴衆と、すべてがそろった演奏会でした。何よりも市民文化会館ならではの6,300円という格別な価格も嬉しいですね。これがヨーロッパの標準価格ですから。



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2017年6月9日(金)午後7時開演
武蔵野市民文化会館 


ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ステファン・ドゥネーヴ


プログラム


コネソン:Flammenschrift(炎の言葉)


プロコフィエフ:シンデレラ組曲 第1番 op.107


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ドビュッシー:交響詩『海』


ラヴェル:『ボレロ』



アンコール


ビゼー:アルルの女から『ファランドール』

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