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Channel: GRFのある部屋
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78回転の不思議

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考えてみれば、団塊の世代である私達の世代は、オーディオの機器一つ取っても、激変を経験した世代なのでしょう。小学生の高学年になるまでは、真空管ラジオと78回転のSPレコードしかなかった世代です。最初に回転数が半分ぐらいになった33回転レコードを聴いたとき、なんて柔らかな音がするんだと驚いた覚えがあります。プレスリーでもコロンビア・ローズ(旧い!)でも家にあったレコードはみなSP盤でした。浪曲や民謡もそうです。それがいつの間にやら、ドーナツ盤と言われる45回転シングルレコードに替わり、街角のジュークボックスが普及していきました。今の人はジュークボックスと言われても形も想像が付かないかもしれませんが、私達の世代は、ガッシャンというボタンの感触まだ鮮明に覚えています。

そのLPの時代は、長くは続きませんでした。すぐにステレオの登場です。1959年に録音されたハリー・ベラフォンテのカーネギーホールコンサートを電気屋さんで聴いたのは、1961年頃のことだったと思います。中学二年生でした。その音の素晴らしさに、当時荻窪駅の前にあったメーカーのステレオのデモをやっていたお店に足繁く通ったものです。そん体験が現在まで続いているのですから、思えば50年以上の長い趣味です。

今回、家にやってきたステレオ・デコラは1963年製です。100台の内の80番台ですから、後期の方でしょう。時代はステレオ時代になったところですが、当然、モノラルのLPレコード用のカートリッジ、その頃はまだ主流で、数十年分のSPレコード用の三種類の針を装備していたわけです。ステレオ用のイコライザーはRIAAでしょうが、モノラル用はffrrのカーブだと思われますし、SPはデッカのSP用なのでしょう。モノ用より幾分Highが上がります。その三種類に加えて改良版のマーク2と軽量・ハイコンプライアンスのマーク3との違いも楽しめる、デコラはその頃の最高級システムと言えましょう。

その、三種類の内、78回転のSP用を今回聴いて、驚いたわけです。我々のイメージでは、SPレコードは、元気だけど、シャーシャーという音がする、いかにも旧い音がすると思っていました。勿論盤質や、重量級の鉄針で溝が傷ついていなければの前提ですが、本当に柔らで、暖かく、また力強い音がしました。

レコードは溝に刻まれた波形をそのまま再生すると音になるという、素晴らしい発明です。線速度が速いほうがより忠実だし、情報も多いのです。19センチより38センチの方が音が良いのと同じです。故に33回転より45回転の方が、そして45回転より78回転の方が音が良いのは当たり前の事なのです。しかし、SPレコードは、サウンドボックスからホーンをつかって再生されるという蓄音機の音のイメージが大きかったからです。ハイコンプライアンスのカートリッジで、軽針圧(5g)で、かけたときの音は大変甘く、また力強い音です。デッカのダイレクト発電の優位性がはっきりと音になって聞こえます。



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