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Channel: GRFのある部屋
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リスクを負うと言うこと

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考えてみると、50年以上も趣味は音楽とオーディオ一筋でやってきていますが、あまりオーディオ店とは縁がなかったようにも思えます。強いて言えば、パーツ屋さんと中古屋さんぐらいかしら。貿易関係の仕事をするようになってからは、海外格差が余りにも大きいと知って、ほとんど新品の装置を日本のお店から購入することは無くなりました。それも無理ないことで、私も輸入販売業も行っていますので、その海外から取り寄せるリスクの大きさを実感しています。

私達の年代は、自分でアンプを作るしか方法がなかった世代でした。日本には数えるほどのメーカーしかなかったし、海外格差は絶望的なほど大きかったからです。それは、40年前の外国製品がいまだに中古市場で取引されている現状を考えれば解ります。特に、オークションが普及してからは、ますますその傾向になってきました。

海外から直接輸入する切っ掛けは中古のレコードでした。二十五年ぐらい前、初期盤のブームが始まった頃、仕事の関係で、イギリスにでかけることが多く、ロンドンやその郊外の中古レコード屋を訪れることが旅の終わりの日の唯一の楽しみでした。そこで、50ペンスや1ポンドの、いわば古本屋さんで言えば、店頭の100円本見たく並んでいたモノラル盤を沢山購入しました。帰りのスーツケースは、重量オーバーぎりぎりまで膨らんでいました。50枚ぐらい買っても、お店に行くまでの電車賃やタクシー代の方が高く付くほどでした。

CDに切り替わっていくときで、中古業者達は二束三文で旧いレコードをイギリス中から買い漁って、価格がつきそうな盤だけ残しておく方法でした。それは初版と二版しかありません。あとは廃棄して価格の上昇を計っていたのです。店の中にも高価な盤は、まとまっては置かず分散されていました。盗難等を恐れてのことでしょう。取引は現金のみでした。余りの態度の悪い店主はまるで麻薬の密売人のような倫理観のない、まるど山椒大夫のような悪人でした。少なくともレコード棚におかれた貴婦人達が奴隷市場に連れてこられたように思えたのです。考えてみれば、自分もその奴隷を買いにきた醜い客の一人なのですが。日本に持って帰ってきてから、一枚一枚アルコール消毒したのを憶えています。

そうした折りに、円が80円になったとき、この間までそうでしたが、思い切って海外から"Consequence"を取り寄せたのです。MITのケーブルも、半値以下で買えた香港まで行ってきました。最近のDecolaもイギリス国内向けのオークションでした。落札してからもイギリスの友人にいろいろと引き取りとか梱包のアレンジをして貰いました。その他のタンノイ関係の旧いスピーカーもそうですね。Nagra関係はそれこそいろいろなところから購入しました。そうやって世界中から素晴らしい機器が来るようになりました。もっとも、日本の専門家にメンテナンスをお願いしなければ、十分な性能はでません。

しかし、大事なのは、自分の決断に責任を持つと言うことです。何かあれば、販売店がどうにかしてくれると、自分達は王様だと思っている人達がどんなに多い事か?裸の王様ですね。自分の音を販売店のサービスに頼っているのです。専門誌の美辞麗句を信じて買っているのです。缶ビールの原価はいくらだという事を知ると、流通経費とパッケージ、そして宣伝費に多大な費用が掛かっている実態が解ります。それらを日本の代理店はすべて自腹でやっているのですからリスクの多い商売ですね。

そのリスクを自分で負えれば、その分は楽になります。中身の音だけで勝負する真剣勝負ですから、技量はたちまち上達するでしょう。ただ、オーディオを音ではなくお金で判断する傾向があるのは、仕方がないことで、着ている物や車で人間は判断されるのですから。しかし、自分の耳と経験を活かして、思い切ってリスクを取ってみることです。その瞬間、世の中の見方が変わることでしょう。







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