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Channel: GRFのある部屋
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Decolaのプリ初段を8D8に

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先週来られた、椀方さんとの楽しい夜の締めくくりは、久しぶりにDecolaの音を聞いていただきました。デコラでフランク永井や、金子由香利を聴いて楽しみました。先週は、飲まされていた薬の影響もあり、最低域が余よく聞こえなかったのですが、金曜日の夜には、その影響も大分無くなり、どのSPものびのびとした低域を聴かせてくれましたが、その中でDecolaの音だけが、幾分辛口に聞こえたのです。

実は、一昨年の暮れに、レストアを終えたデコラに今ひとつ、実験しなければならないことがありました。それは、プリアンプの初段管のEF86をオリジナルの8D8に交換する作業です。8D8は随分昔に、製造を中止していますから、入手するには、相当な根気と運が必要です。それでも、Quad愛好会のK社長のアドヴァイスを頂き、去年の今頃には、その幻と言われる8D8を手に入れていて、あとは何時交換するかとOさんと何時も話していたのです。Decolaは使いこなしの妙もあり、その音に慣れ親しんで、段階的に調整をしていかないと、微妙な差が分からなくなります。

椀方さんが、来られる前にそのOさんと連絡を取り、夏休み前には、待望の8D8に交換を行おうと連絡していました。でも、椀方さんと、デコラを聴いていたときは、幾分辛口だけどとは思って今したが、交換するとどの様に変わるかが、今ひとつ想像が出来ませんでした。

日曜日の午後、暑い中をOさんが来てくれました。いつもよりは、二時間ほど早い時間帯ですが、夕方からは、近くの公園で地域の盆踊り大会が開かれ、音楽どころではなくなります。その為に、一番暑い時間帯に来ていただきました。

汗が引くまでは、よく冷えた和室で、定点観測の音を聞いていだきました。emmの音も大分柔らかくなってきたと、感想を頂きました。いつもの曲を何曲が聴いていただき、早速隣のDecolaの交換です。まずは、現状の音を聞いていただきます。昼間ですから、音量も幾分か大きめですが、印象は椀方さんの時と同じで、幾分辛口です。音の広がりは、ウィング見たく開いているプリアンプの扉の家あたりまで伸びています。隣のGRFの内側に拡がり、しっかりとした音を聞かせているのです。

早速交換作業です。何遍も作業をしていますから、手順は分かっていますので、プリアンプ部を取り出し、MullardのEF86(6267)を外して、待望の8D8をソケットに差し込みました。

8D8は貴重な球です。恐らく40年間は使われていないであろう貴重な球に火入れを行うときに緊張するのは、ラッシュカレントといわれる、過大電流の投入や、過大な電圧が掛かることです。幸いにも、デコラは、整流管が一本のGZ34が行います、二つのメインアンプ、チューナー、そして、最後にプリアンプに電流が流れ始めるのです。通常スイッチを入れて、一分以上待たなければ成りません。そして左側が最初に音が出始め、次に右側の音が出てくるのです。電源投入から二分ぐらいは掛かるのです。その間、徐々に電圧が上がってくる仕組みなので、長年使っていない球にも、優しい立ち上がりになります。

さて、左右の音が出てきました。懸念していたS/N比の悪さもなく、ハムも変わりません。もっとも、カートリッジの接触不良で、アースが浮くと、ブーンという音が聞こえてきますが、正しく接触していれば、問題は有りません。

いままで掛けていた、フランク永井の実況録音盤をそのまま聴いてみました。一聴して違いが分かります。低音がより深く、音のメリハリ、陰影、立体感が違います。Oさんと顔を見合わせました。

そうか、そういうことか!と8D8をDECCAの技術陣が選んだ訳がわかってきました。増幅度が変わります。EF86の場合は、流れる電流値が多く、それが結果的にパワーアンプの動作特性を変えます。その電流値が半減したことにより、プリの音色が変わるだけではなく、パワーアンプの音色も変わって来るのです。具体的には、音がより深く、ダイナミックになります。幾分神経質な音を出すときがある、DECCAのカートリッジが、例えは変ですが、MCからMMのカートリッジに変わったような、おおらかな、いわばテープのサウンドに変わります。

歌謡曲を止め、早速DECCA/Londonのオリジナル盤を出してきました。曲は先日、CDで聴いたカラヤン・VPOのベートヴェン7番です。カラヤン・ベルリンフィルとはまったく違った端正な演奏が、豊かなスケール感で拡がります。Oさんのリクエストで、同じウィーンフィルでアバドのデビュー盤を聴きます。録音は、1966年ですから、カラヤンから6年後です。アバドの若さがみなぎるはつらつとした響きが拡がります。

その響きが、どんどん拡がっていくのには驚きました。球のエージングが進んできたのでしょう。GRFの内側だった音場が、広がり、あたかもGRFが鳴っているような広大な音場が、デコラから出始めたのです。今までは、デコラから凝縮感のある音が出ていたのですが、球が暖まってくると、デコラの存在が消え始め、GRFの音場と同じ様なスケールが大きな音がしたのです。これには驚きました。この段階から聴いた人は、恐らくどちらが鳴っているか解らない程のスケール感です。そして、それにデコラの奥深い音が加わるのです。

イッセルシュテットのウィーンフィルのベートーヴェン第4番も聞いてみました。この演奏は、オーソドックスな響きとテンポですが、今まで聴いてきた演奏の印象とは異なり、スケールがおおきく聞こえます。

それならばと、ショルティ・ウィーンフィルの指輪のライト・モチーフを解説したアルバムを出してきました。ワーグナーの作曲の手法と各主題の関連性、その展開の妙、テンポの変化による、オーケストレーションの魔法が解説されています。そこに収録された各モチーフは、ショルティの音をそのまま使った、迫力有る盤です。そのオリジナル盤を掛けて見たのです。突如として雷鳴の様に鳴り響く、金管楽器と打楽器、木管楽器のリアリティのある音、弦楽器群の響きなどは、本当に驚かせる録音です。

それが鳴り始めると、一気にスケールが変わります。部屋そのものが演奏会場にトランスポートするのです。ある意味、そのトランスポート感を再現したくて、ここまでオーディオを続けて来たのですが、Decolaだけは、それとは反対の箱庭的な展開をする音だと思っていました。すなわち、その独特な形状がそのままステージとなり、精密に、縮小されて再現されると!

でも、この音は、それとは全く反対です。GRFと同じか、それ以上の迫力で、迫ってくるのです。驚きました。Oさんと顔を見合わせ、笑ってしまったほどです。この分だと、来週の今年の夏休みにはデコラ由来の方々にご連絡をして、この音を聞いていただかなくては成りませんね。猛暑なんて言っていられないほどの熱い、暖かい、音がしているのですから。

盆踊りが始まりました。Oさんと逃げだし、高円寺のワインバーで、白を開けマスターも巻き込んで、乾杯しました。8D8 にも似た柔らかい味もがしました。一年以上もお待たせしたK社長には申し訳ありませんでしたが、これも必要な期間などかもしれませんね。今年の夏休みは、楽しめそうです。



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