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Channel: GRFのある部屋
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ベルウッドさんのご感想

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新年早々、GRF邸を訪問させていただきました。GRF邸はこれまで何度か訪問させていただきましたが、なぜかUNICORNとは相性が悪くてその実力を体感させていただくことができていませんでした。そのUNICORNの調整が整い、真価を発揮してきたとのことで、これを見聞させていただくことが訪問の目的。もうひとつは、あのデコラがご開帳とのことで、これを拝聴させていただくということ。

まずは、例によって和室のUNICORNとご対面、さっそく聴かせていただきました。このUNICORNにはいきさつがあります。初対面は、帯域の外縁があいまいで小さく、ボトムエンドがすっぽりとカットされていました。これは、その後、ユニットにクラックがあったということが判明し、新しいユニットに交換。その満を持しての再会時は、プリアンプが不調で真価が発揮できない。あの頃、私は「負のオーラ」が出まくっていて(苦笑)、自分のシステムは大つぶれ、他の方をお伺いしてもなぜか不具合が発生してしまい散々だったのです。今回は、いよいよ初詣のお祓いで厄払い、清い身体でのご拝聴となりました。

これはもう「なるほど!」という納得のUNICORNサウンドでした。

すっかり納得して拝聴していると、GRFさんはやおらCDプレーヤを切り換えられました。愛用のフルチューンのマランツCD34から、EMMでのSACDとの比較試聴。実は、前回訪問時も聴かせていただいたのですが、まだEMMはエージング途上で、CD34と較べると粗さや堅さとともにぼやけた感じがあってはっきりとした差があったのです。今回、試聴するともうほとんど差はなくなっています。

ところが、注意深く聴いていると、EMMにはまだ高域が甘くすっきりしないところが残っています。率直にそのことを申し上げると、GRFさんは、やおら、信号ケーブルを交換してしまいました。オーディオ練達の士は、もう、こうなると職人のようなところがおありで、あっという間にピンポイントで勘所を突いてしまいます。これで気になったところが解消。

これで、マーラーを中心に、カプラン/VPOやハイティンク/コンセルトヘボー、ヤンソンス/RCOなど次々とソフトを聴いていきます。EMMはSACD、CD34はCDでの聴き較べ。

すると…

ハイティンク/CSOの3番はCDのみですが、冒頭のホルンのトゥッティの音色に微かな違和感。聴き慣れたソフトなので強く反応してしまいました。その後の曲の流れのなかで注意深く探っていると、やはり、中高域が違います。ここでも率直に「ちょっと音味が違うのですが…」と申し上げると、またまた、GRFさんは「やっぱりそうか」と独り言をいいながら今度はスピーカーケーブルを交換。外見は同じですが、ご友人から借りていた後期のモデルからご自分のオリジナルへ戻すのだそうです。ケーブルの太さと両端のでっかいコブにこちらは目を白黒。

後期のモデルはブランドは同じでもオリジナルとは生産工場が違ってしまったとのこと。いわば、シェフがやめたとたんにレストランの味が変わってしまったというようなもの。私も、かつて、無断で工程を変更し、スウェーデンのお客さんにこっぴどく叱られたことがあります。工場監査でばれてしまい、品質管理規定違反だったので平謝り。幸い品質トラブルはなかったのですが、工程変更は予期せぬ不具合を発生させることがあって、事前の了解や連絡が必要。例えスペックは同じでも、品質とはそういうものなのです。

これで、いよいよ真正のUNICORNの本領が発揮されました。聴き込むほどにケーブルも目覚めていくのか、惚れ惚れするようなサウンドに。途中、休憩をはさんで、さらに聴き込んでいきます。日が暮れてあたりが暗くなると、空間ごと音楽会場へとワープしてしまうような感覚に忽然としてきます。

ここで改めてEMM/SACDとCD34/CDでブラインドテストをさせられると、どちらがどちらかわからなくなっていきます。SACD独特のものと思っていた高域の滑らかさがCD34のほうがかえって上回っていたりして、そういう優劣の思い込みを払拭して、それぞれの音の特色を聴き分けるまでに時間がかかってしまいます。ここまでハイレベルになると、SACDとかCDとかのフォーマットの違いよりも、もっと別の要素のほうが相対的に大きくなっているということでしょうか。

ワインをなめながら聴いたギレリスの「悲愴ソナタ」「月光ソナタ」にはすっかり聴き惚れてしまいました。ギレリスの晩年は、かなり芸風が変遷したと言われていて、その評価は当時かなり毀誉褒貶していました。そのせいで、私は晩年のギレリスには少しバイアスがあったのですが、このCDを拝聴して自分の過ちをすっかり悔いることになりました。

ディスクは、オリジナル盤でCD最初期の稀少なもの。

デジタル初期のCDディスクは、「音が堅い」「コントラストが過剰」と散々に言われ、いまだにそういう偏見が尾を引いています。けれども、むしろ、初期は各レーベルが技術と時間をかけて取り組んだだけに素晴らしい仕上がりになっています。再生音が悪かったのは、むしろ再生側の機器が技術的に未成熟で劣っていたから。さらには、再発時のマスターの管理がずさんだったり、リマスタリングのまずさが、こうした神話を拡大したように思います。これにアナログ懐古のドグマも荷担して、すっかり定説になってしまいました。

こうして極上のシステムで聴く最初期オリジナルCDの音は、そんな教条主義を吹き飛ばしてしまうような至高のサウンドでした。


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