Kingdomの48センチウーハーには専用でマッキントッシュの1200Wが充てられています。上の3ウェイは300Bでドライブしている845です。ドライバーと出力段は別々のトランスから供給されているのだそうです。文字通り超弩級でした。この部屋の主のTさんが、 Kingdomの中を開けて見せてくれました。重量級のSPで170キロもあるそうです。バッフル厚さが半端ではありません。どうやって搬入されたのかといぶかる程の重さです。もっとも、この部屋は一階で真空ガラスのおおきなガラス戸がありますから、問題は無いのですが。
Tさんは、出版関係の仕事で功績があった方です。現在も、クラシック専門誌のMostly Classic誌の発行人をされています。クラシック音楽、オーディオ、お仕事の出版のすべてに造詣が深い方です。そして美術にも深いのは、この私的な美術館のようなお宅を拝見すれば解ります。極めて趣味のよいのは、無駄を排したお宅の作り方を拝見すれば解ります。また、これと信じると信念を持って真っ直ぐ進まれるのでは思いました。器機の選び方でも解りますね。SPはタンノイですが、アンプはフェーズテックとViolaです。その他、アクセサリーにも凝られています。適材に配置されていて効果を上げていました。
さて、いよいよ、オートグラフです。Kingdomに比べれば、オートグラフは音量も小さいので、室内楽や小編成に使われているとのこと。そんな事は無いはずと思っていました。しかし、7メートルも離れているので、音量を上げないと中抜けするかとも思いましたが、そんな懸念も聴いた瞬間無くなりました。しっかりと中央の定位もなされていて、さすがにAutographです。言うことはありません。Kingdomとは正反対の音と言ってもいいぐらいです。入力の質をよくすれば一変によくなると感じました。掛かったCDは国産のCD特有の音がしているのです。少し厚かましいあの音です。それでも、必要かつ充分な帯域でゆったりと鳴るのは、オートグラフ特有の音ですが、小さな部屋で聴くような飽和感は全くありませんから、どちらかというとGRF的な音で鳴っています。この部屋の音がそうさせるのでしょう。これだけの大きな部屋で平行面もありますから、所々残響が聞こえることもあるのですが、床の絨毯(恐らくニュージーランド製)の吸音が聴いているのでしょう。
Tさんが以前家に来られた時、家の音よりもレコード棚の方に興味を持たれたのを覚えています。それはそうでしょう。音の大きさがまったく違いますから。それで、今回も何かオリジナルレコードを持って来るようにと、仲介していただいたUNICORNの先輩のAさんから言われていました。そこで、私のの好きなカラヤンのシベリウスとハイティンクのブラームスを持ってきました。それと、コントラバスのシュトライヒャーのコントラバス協奏曲。そのシュトラヒャーが加わったシューベルの鱒。最後に定番の越路吹雪の1979年盤です。
カラヤンが静に掛かりはじめました。イエスキリスト教会の高い天井に音が吸い込まれていきます。素晴らしい弦の合奏です。さすがにオートグラフは弦楽器になると素晴らしい音を奏ではじめます。大編成のオーケストラが悠然と鳴っていきます。私のこれだけの間隔のコーナースピーカーでは聴いたことはありません。私の部屋でも長辺方向に置けばこの間隔が得られるのですが、奥行きが足りませんから、三角形の内側で聴くように鳴ってしまいます。でも、何時か実験はしてみようと思いました。
ハイティンクのコンセルトヘボウも素晴らしい弦合奏です。木管楽器の融合されていく様も素晴らしい音で鳴りました。シュトラヒャーのコントラバス協奏曲は、太いコントラバスがゆったりと鳴っていきます。私ならこのAutographだけで良いのにと思っていました。Kingdomは反対側の棚の方におかれて、ソファーを今一台入れて座ればまったく違うシステムが聴けて面白いです。しかし、今ならこのKingdomを使った5チャンネルも凄い音がしそうです。前面の壁を使った大スクリーンも可能ですね。
最後は、いつもの越路吹雪です。左右のオートグラフから離れた中央にコーちゃんが立って歌っています。凄い実在感です。日生劇場のステージが出現しました。これだけの距離と高さがが必要なんだと思い知らされました。どこか、田舎の古民家を手に入れて改造するしか有りませんね。何だか急にやる気が出てきました。
短い時間の訪問でしたが、大変参考になりました。Tさんもレコードの良さが解っていただいたように思えます。そのうちRoksanにされるそうです。Aさんと盛んにアームの話をされていました。次回が楽しみです。