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Channel: GRFのある部屋
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夜香さんの新しい音

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家を出ると雨は本降りになり、地下鉄の駅までで上着はびしょびしょになりました。新宿駅の構内を横断して、半分代々木のホームから湘南ラインの篭原行きに乗りました。ホームで780円チャージされて二階建て車両に乗り込み、ゆっくりと流れる外の雨の風景を眺めていると、今日は休日だとの実感がわいてきました。

今日は、七月に電撃的に永年愛用してきたATCをJBLのオリンパスに替えられた夜香さんのお宅を訪ねます。二階建ての車両は、線路の音も聞こえずゆっくりとそして静かに走っていきます。大宮を過ぎると各駅停車になり車窓に田園地帯が見えるようになります。約束の篭原駅を下りると、夜香さんが改札口で待っていてくれました。先にお車で到着されていたAionさんと合流、早速、VOLVO S60T4Rから乗り換えたばかりの新車S60D4 Dynamic Edに乗せていただきました。明るいベージュ色の車内は雨の日でも明るく気分が晴れます。走り出すとすぐに圧倒的なトルクに驚かされました。4リットル以上の大排気量車のようにぐいぐいと引っ張られるトルクにおどろきました。街を出ると雨に煙る田園風景はヨーロッパの田舎道のようで、そこを容赦なく進んでいく車の力強さに、音を聞く前に車に感動しました。

また、近くの中華食堂でお薦めの定食を頼むと、今度は値段の安さにもビックリ。東京の半分でしょう。このあたりは中国の人がどんどんお店を出して価格競争になっているとのこと。静かな農村地帯にもグローバル化の波は押し寄せていると実感しきりです。

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夜香さんのお宅訪問は、12年の7月以来ですからもう四年も経っています。あの時は横浜のMさんと来て大変楽しい時を過ごしました。私の数ある訪問記の中でも忘れられない経験です。お客様を迎えるときの気構え、準備に掛ける入念な気配りを学ばさせていただきました。部屋の入ると、そのオリンパスの勇姿が目に飛び込んできます。思ったより小振りに見えるその姿は、それ故にそこはかとない品が感じられ、高精度の格子細工が見事な芸術品ですね。音を聞く前から、これは良い音がするに違いないと予感に充ちていました。

夜香さんの、お客様を迎えるときの気配りは特別です。ピッタリと揃えられた、装置の配置だけでも音が予感されました。Aionさんにソファーに座っていただき、私は後方から聞かせていただきます。最初に掛かったのは、辛島美登里のサイレント・イブでした。真っ白な粉雪が♪と掛かったとき、私の頭も真っ白になっていました。

壁一面に音が拡がりあたかも、OLYMPUSの上に乗っているELACのSPが周囲に音をまき散らしているように、音が上に拡がっているのです。以前とATCの間隔とほとんど同じなのですが、横長のそれも低い位置から出てくる音だとは、にわかに信じられません。JBL特有のきつくなる音もなく、どこまでも柔らかく、スムーズな肌さわりには、横浜のMさんのところのパラゴンで経験済な筈なのに、ConeQの音のマジックに魅了されます。おもわず被り付きまで行ってその圧倒的な定位の良さを確かめに中央のマッキントッシュ2600の前までいってどこから音が聞こえるか確かめたほどです。

参りました!これは凄い音です。

スクリーンの収納を考慮して、後方の壁から20センチほど離れているのも、音離れの良さに貢献しているのかもしれませんが、その広帯域のどこまでも力強く優しい音に痺れました。私の目指しているクラシックのコンサートホールの空間を再現する音では無く、JPOPSやヴォーカルのレコード、CDを聞きやすく、迫力を持って目の前に展開する音では、最高峰ですね。横浜のMさんと同じユニットなのですが、パラゴンのエネルギーが集中するサウンドではなく、柔らかく甘い低音で静かに包み込まれて、ヴォーカルや楽器の実在感を見事に表現しています。

脱帽です!

夜香さんは、何時も言われます。第一曲目でどこまで、聞く人の心を摑めるかと。今回もがっちりと掴まれました。完璧ですね。この様な音が掛かるのだとしたら、オーディオはどんなに楽しい趣味になるでしょう。こちらまで嬉しくなりました。二曲目は、安全地帯のTo meがかかりました。どうしたらこの様な音が出るのか、いろいろと聞きたいことは山ほどあります。フォーカス間が凄いです。一番前まで行って竹内マリアの告白の電話のベルがなりました。これは自然です。そして、甘い竹内マリアの声を支える、おそらく打ち込みの打楽器の定位感。これがびっしりと決まります。中央の一番前、パラゴンで言えば中央パネルの直前10センチの位置でも、音の定位はピッタリで音像がぼけません。

参りました。

竹内マリアもここまでの音が掛かれば言うことはありません。横浜のMさんのパラゴンの音がしてきます。定位の立ち方が凄いのです。次ぎに夜香さんが出してきたのが、Jazzの定番のHelgen Lien TrioのSpiral Circleというアルバムから、良くデモンストレーションで掛かるTake Fiveです。目の覚めるようなハイカットが鳴り響き、ドラムの音が目の前に炸裂します。Piano Trioが目の前で演奏している様です。この手の音は本当にJBLの独壇場ですね。LE15は40までしか出ていないし、075は15,000以上はびったっと出ていないそうですが、40~15,000の8オクターブ以上を完璧に出していますから、オルガン曲以外は掛からない物はないでしょう。

しかし、それで音がきついことは全くなく音楽が楽しく聴けます。一番大切なことですね。次はヘレン・メリルのユービー・ソ-・ナイス・カム・ホームです。これは彼女の暗い音をずーっと聴き慣れた耳には、少しモダンすぎるかなと思いました。でも、クリフォード・ブラウンのトランペットは輝きとても良いですね。

この音の秘密はどこから来ているのでしょう。そこで、この3ウェイはどの周波数で繋いでいるのかと尋ねると、言下に500ヘルツと7キロヘルツ以外には無いと断言されました。ここまで言い切るには、どれほどの数値を試したのでしょうね。数限りないチャレンジをして、やはり指定通りの音が一番だと確認する事は大切です。途中でConeq無しの音も聞かせていただきました。それも良いのですが、少し暗くなり、音が沈みがちになります。どこかに昔のジャズ喫茶の音がしました。それがconeqが入ると明るく音が拡がり、上に立ち上ります。

それまで、ずーっと聞かれていたAionさんも、とても嬉しそうに、現代技術と伝統あるスピーカーの融合だと言われました。前のATCの時は、ときとして堅い音も有ったけれど、今回は音は柔らかくヒューマンな感じがしてすばらしいといわれました。私も同じ感想です。明るくて柔らかいそれでいて必要な音は全部聞こえていると思いました。横浜のMさんのところでも、前回の夜香さんの時よりも、今回のconeqの効果には驚き、とても好意的に感じました。

ここで休憩です。お車で来られたAionさんには清涼飲料水、我々は、持参の赤ワインを開けました。私もAionさんも部屋にピッタリと収まっているオリンパスの勇姿にほれぼれと見つめています。近くによって綺麗な格子をみつめていると、格子は檜だと言われました。そうなるとこれは日本の伝統の格子技術が使われているのでしょうね。SPの後ろが少し開けているのは、音の為なのかとAionさんが聞かれると夜香さんは、それはスクリーンが下りてくる隙間だと言われます。でもその為に音にも奥行き感が出ていると思いました。

Aionさんは音の切っ先が軟らかいと表現されました。尖った音がしないと。楽器の音は全て柔らかい音です。どんなに衝撃的な音がしても、楽器としてなり立つためには、きつさだけではダメで奥行きのある柔らかさを持っていなければなりません。それがオーディオだと、きつい表現、シャープさだけを求めがちです。この音には、そういう未熟なところが無くとても熟成されたヒューマンな音がしていると表現されました。竹内マリアの告白の最初の電話の音は、電子音だから似ていて当たり前ですが、きつさが無く柔らかなとても自然な音がします。

夜香さんは嬉しそうに、きのうから皆さんをお迎えするのに0.1dbごとに細かく調整をされてきたと言われました。この気配りが素敵ですね。Aionさんのお顔と私の顔が交互に浮かんできて、どこが落としどころかと悩まれたそうです。やはり夜香さんの怒濤の攻撃が更新されていく日記の端々にも表れていましたが、この集中力がこの音を出されたのでしょう。

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お酒が入らぬ前に、この音を出している構成をお聞きしました。NASに入っているファイルから、LANを通してOPPOでアナログ化します。愛用のマッキントッシュの34Vでコントロールされて、ASHLY XR1001というチャンネルデバイダーで3ウェイになり、LE15の低音は、これも愛器のMC2600。375の中音用と075の高音用には、片側づつTHOMANNのS150MK2という、何と一台3万円のアンプで駆動されているのです。

音を聞いてとても3万円台とは思えません。何でそんなに安いのでしょう。中を見るとと手もお金が掛かっている部品を使っているのでプロである夜香さんが驚かれているぐらいです。これは、夜香さんの作戦勝ちですね。075の素性の良さが引き立ちます。Mさんが言われるように、ネットワークを通じて075や375を使うと砂を噛むような音が出てしまうのです。この様に、チャンデバもアンプも三万円でも、全く蘇るようにすなおで柔らかく、迫力有る音が出て来るのです。

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しかし、低音がしっかり出ていなければ音楽に為りません。500までを受け持っているLE15とドローンコーンの役割はとても大きく、この柔らかい音の音質だと感じました。堅くなったエッジを秘密兵器のゴム柔軟剤を染み込ませると蘇るそうです。オリンパスの小さめのエンクロージャーにきっちりと、375と075を配した配置の妙もあります。ちなみに大きさは、先日まで使っていたタンノイのヨークを寝かすとそちらの方が大きいそうです。音の秘密は、075の15k以上は全く出てこない事にもありそうです。2405と違って振動板自身が15K以上を出さないように設計されているのでしょう。その余分な音を出さないと言うことがどうやら大事なようです。

そして何と言っても、この音の秘密は、coneqに有ります。入念に測定してこの部屋と聞かれる音楽にターゲットを絞った調整は、音に深みと高さを与え、壁前面を音で埋めます。LE15のユニットは、やはり永年の経過で特製が異なっていたそうですが、coneqはその差をピッタリと埋めて、後からではどの様に違うのか全く解りません。

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coneqの調整は何回か聞かせていただきましたが、今回が一番上手くいったようです。ヴィンテージ物の特性でしょうか。以前使われていたATCやTANNOYの時よりもconeqの効果が大きいようです。これに奥行き方向の音場もでれば私も考えなければなりません。現在は奥行き方向も何回か測定して、そういう要求にも応えられるような開発も行われているそうです。

話が進むと同時にワインも刻々と香りが開き、味も変わって来ます。SPと同じですね(笑)。私はズーーとJBLを使ってJAZZを聞いてきた人達に、この新しいJBLの音を聞かせてみたいと思いました。それはMさんおパラゴンと同じ感想です。人によってはJBLの音では無いと拒否される方もおられるでしょう。それでは、美味しい花開くワインを冷蔵庫に入れてそのまま飲んでいるようなものだと、もったいないとつくづく思いました。

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