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神岡敏之指揮 ザールラント州立劇場管弦楽団

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先々週の杉並公会堂での日フィルコンサートを花粉症の後遺症で逃し、内心忸怩たる思いをしていました。神岡氏はドイツの二つのオーケストラの常任で、日本での演奏会は、年に二、三回しかないので、杉並での公演は良いチャンスだったのですが。演奏会に出かけた家人の話だと、いつもの日フィルとは違った感じがしたとの事。日頃、日フィルには余り行かない私でも興味をそそられていました。

その神岡氏のスケジュールを見てみると、ドイツのザールラント州立劇場管弦楽団とヴッパータール交響楽団の常任指揮者ですし、各地の音楽学校で教鞭をとっていますし、毎月二回づつのコンサートでスケジュールはふさがっています。その間を縫って日本に来られるは、年に二回から三回という所でしょうか。それ故に今回の日フィルの演奏会をのがしたのは大変残念です。日フィルの演奏会は日フィルのメンバーがドイツまで行って神岡氏に頼み込み、スケジュールの関係から三年たってようやく実現したそうです。今回演奏されたリヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲は三月にヴッパータール交響楽団と日フィルで、そして4月7日、8日には、ザールラント州立劇場管弦楽団と演奏をします。

ん??その4月7日の日曜日には、私はドイツにいてハイデルベルグで休日の日です。ハイデルベルグとザールブリュッケンは150キロほど離れてはいますが、ドイツの高速道路では、一時間ちょっとしか離れていません。余裕を見ても二時間有れば到着します。よし!江戸の仇を長崎でではありませんが、杉並の悔しさを晴らす絶好の巡り合わせだと思いました。

ザールブリュッケンは、昨年の四月にも、ルクセンブルグに行く途中通っていて、土地勘はあります。入場券はと思って調べると、まだ残席は残っていました。会場は、州立劇場ではなく、コングレスホールで、いろいろな公演も行われている公民館で行われています。会議場ですから大きさもそれほど大きくはなく、幅方向に40席、縦方向は18列ぐらいで、それに二階があります。収容人数的には一階だけだと700〜800人ぐらいで、幅が広いのでシューボックス型とは違いますが、杉並公会堂と同じぐらいの収容人数です。早速インターネットでチケットを購入しました。24ユーロでした。日曜日の演奏会は午前11時から始まります。中途半端な時間に思えますが、教会に行った後そのまま来るには少し早いのですが、午後は、家族揃って食事をするのでしょうか?いずれにしても私にとっては良い時間帯です。
昨日の寒かった曇天と違って今日はきれいに晴れ渡っています。朝の気温は余り変わらないのですが、陽が差しているのでだんだん暖かくなってきました。NAVIを見るとハイデルベルグからザールブリュッケンは156キロ有りましたが、平均時速140キロで走り始めると、1時間20分と表示されました。早く着きすぎるかもしれません。

九時半頃街に入りました。高速が街の中を貫通している川沿いの小さな街です。ここがドイツ最後の街で、山を越えればフランスです。戦後しばらく国連の管理下に置かれていた戦争の度に所属が変わる国境の町です。

戦争の時には、空爆でほとんど壊滅したそうですが、街は元に戻っていますね。一旦行きすぎて、古い街並みを戻ってきました。駐車場を探していたら、会場前の広いところに駐車する車がありました。日曜だからでしょうか、駐車場のゲートは開いていました。

この会場は多目的ホールで会議場として使われているそうです。収容人数は、二階まで含めて1300人だそうです。天井は余り高くありません。コンサートも出来る会議場という感じです。



会場一時間前になってようやく係員が来たようです。当日券を売り始めました。中には自由は入れます。切符を切るところがないのです。チケットを持っているかぎり、席は確保されているわけですから、調べる必要がないのでしょう。
中に入ってみるとホールの反対側はザール川です。この川は時々溢れて洪水になることもあるそうです。

45分前になると急に人が集まりはじめました。ホールのロビーでは、今日の曲目のアルプス交響曲に付いての解説が始まりました。実際に音を出して曲の構成を説明しています。

15分前にようやく会場が開くと、勝手知った人達は自分の席に座ります。何時も来ている人ばかりなのでしょう。入り口に切符を見る人もいません。座った席のチケットを持っていればいいのでしょう。列車のシステムと同じですね。この街は人口17万人ぐらいです。小さな街だし、皆知っている人ばかりなのでしょう。でも、私の隣の隣の女性は、日本人の女性でした。会場を見ると、何名かの日本人とおぼしき東洋人がいます。
15分前の入場でしたが、オーケストラのメンバーが入場してくるときには、もう満席でした。

今日の演目の最初は、モーツァルトの交響曲第36番「リンツ」ですので、オーケストラの編成は小さいのです。やがて、神岡氏がゆっくりと入ってきます。少しうつむき加減ですが、いつもの笑顔です。特徴有る髪型が不思議ですね。どの様にしたらあのような髪型になるのでしょうか?小柄で痩形なので、髪型が大きく見えます。指揮台に上がると、両肩の力を抜き、一瞬後にタクトが大きく振られました。少し重めのモーツァルトです。指揮は大変軽く振られるのですが、テンポは遅めで、重量の有る車がゆっくりと立ち上がり、加速しはじめるようです。弦楽器は日本のオーケストラの様に一糸乱れぬという感じではなく、最後尾の演奏者は寝起きなのか、少し遅れています。管楽器群はトルコ風のハーモニーを重厚に弾いています。フランス国境の明るい街ですが、演奏スタイルは中部ドイツの重い響きですね。

タクトはポイントだけを押さえて、オーケストラを奮い立たせるように大きく動きます。華麗なバトンさばきは、クライバーのようです。タクトの先まで神経が通った動きで、オケを奮い立たせるように動きます。ゆっくり目のテンポと華麗なバトンが少しちぐはぐにも聞こえました。木管群はよく言えば重厚ですが、モーツァルトには少し重いようにも感じます。ティンパニーの音色も迫力があり、重みを感じるのかもしれません。ホルンの音も狩りの音のようです。日本のオーケストラと違って安心して聴いていられます。この管楽器群と日本のオケの弦楽器群を混合すると良いのかもしれません。

第二楽章までは重苦しい感じがしました。テンポも随分とゆっくりしているからです。第三楽章から眠りから覚めたようになりました。終楽章の軽快なテンポも心地よく、ようやくオーケストラが暖まってきたようです。しかし、彼の棒の動きとオーケストラのタイミング、ディナーミックの対応が少し合わないようにも感じたのです。モーツァルトならもう少し、軽快で控えめな指揮振りの方がマッチすると思いました。曲が終わると街の人達の反応は大きく、ブラボーも飛び出すほど。聴衆に支持されているのは良くわかります。私自身は、どこかももどかしい感じがしたのも事実です。

休憩時は、大きめのバーではスパークリンワインがどんどんと開けられ、ロビーは街の社交場とかします。私も気付けで一杯!後半戦はいよいよメインイベントのアルプス交響曲です。

団員が入場してくると、広くはないステージが一杯になりました。しかし弦楽器は14型だと思われます。コントラバスの6人もいつもより多いのでしょう。日本人とおぼしき奏者が二人も入っています。ホルンは最初は4管編成しか見えません。しかし、木管、金管、打楽器でステージは一杯です。普通は、16型〜18型で演奏される壮大な交響曲ですから、14型の弦楽器では数が少ないので、バランスが少し異なるかもしれません。弦の下降和音から静に始まりました。ホルンとトロンボーンのハーモニーは安心して聴いていられます。何遍も書いて恐縮ですが、この部分は日本のオーケストラでは何時も不安ですから。

弦楽器はやはり少し音が小さいようですが、低い音のバランスは良いです。日が出て来ました。一気に高まります。日の出は気持ちいいですね。差ほど大きくないホールですが、音は飽和せず、クレッシェンドしています。低音弦楽器の上昇和音による上り道もホルンがよく付いています。ティンパニーも音が少し重めですが、弦楽器の特徴有る、セブン・セブンの旋律は、会場の上の方にいるホルンの別動部隊が見事です。これだけでも来た回があります。この部分の日フィルはどうだったのでしょうか?

森への立ち入りの最後の弦楽器の特徴有る旋律のバランスがやはり少し室内楽的になっています。それはそれで良いのですが。弦楽器群のうねりが少ないように思われました。山の牧場でのカウベルは、二階席からも左右に別れて聞こえます。少し重めの音ですが、素朴な感じが良いですね。弦楽器が合奏するところでは、身体ごとぶつけるような指揮振りです。指示は的確で、演奏する方は解りやすいのではないでしょうか。頂上に行くところでは、弦楽器のがんばりが良かったです。ホルンが音は木訥ですが、音はしっかりしています。トランペットもしっかりと音を出します。オーボエの音色が少し変わっているなと思いました。

嵐の場面では、ウインドマシーンが大活躍で、回している人は随分力がいるな何て思っていました。しかし、神岡氏の指揮は精力的で、モーツァルトよりこの様な音楽に合っています。ティンパニーの響きが重く、全体に重厚な感じがするのが、指揮と少しずれている感じを受けました。弦楽器の響きが、やはり物足りないのですが、このバランスでは良くやっている方でしょう。

神岡氏は曲が終わっても、相当長い間バトンを降ろしませんでした。しかし、映画音楽みたいな曲をよくまとめていたと思います。小編成の弦楽器が室内楽的な響きをよく伝えていたし、破綻のない金管群は安心感をあたえてくれます。何度も、拍手で呼び出されていました。

演奏会が終わっても、外は真っ青な空が待っていました。まだ一時過ぎです。ゆっくりと街の中を抜けると、すぐ高速道路に乗っていました。次回はもっとゆっくり来て、美味しい料理を探そうと思いました。

でもようやく聴けた神岡氏の演奏は、ひとりでドイツにやってきて、自分で仕事を探し、一段一段キャリアを積んできた、彼の自信が演奏の裏付けになっています。その勇気と努力に感心しました。
気持ちは随分と楽になって、誰もいない日曜の高速を順調に戻ってきました。
ドイツでの仕事はこれからです。風邪気味だった身体にエネルギーに満ちた演奏が元気を貰ったようです。









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