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久し振りのBellwoodさん

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先週の日曜日の夕方にひさしぶりにBellwoodさんに来ていただきました。前回、Bellwoodさんにお越し願ったのは、六月の末のHさんのお宅を訪問した帰りでした。そのときはようやく完成したTW3の音を、秋葉原のHさんのお宅と、家の音を聴いて頂き、部屋の響きの差を確認して頂きました。その頃は、Troubadour80とTW3の間には、フェルトが敷かれていて、音がまだ安定していないときでした。悩んできたときに、Bellwoodさんからメールが来て、フェルトの代わりにコルクが良いのでは?という進言を頂きました。早速実験したところ、今までの悩みが見事になくなりました。

その後は、世界が変わったように音が安定して、良くなったのです。その後来ていただいた、Aionさんからも、夜香さんや横浜のMさんからも、八月にはいいてからは初めて来ていただいたK&Kさんからも、ご一緒してただいた実験機から四回も聴いていただいたBOさんのご感想もいただきました。実は一番驚いているのが私自身ですから、皆様の驚きも良くわかります。

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そして、コルクの効用は、聴く度に調整を必要としていた位置の微調整が、全く必要なくなったことです。理由はコルクの安定性でしょう。少々のことでは動かなくなったのです。その安心感は大きく、音に惑わされることなく音楽に専念出来ると言うことです。そして、今まで一番願ってきた、音の立体感、陰影、ダイナミックレンジの拡大、特に小さな音の再現性。生の音楽会の一番素敵なところは、ピアニシモで推移する柔らかなコントラバスの動きが見えてくることです。それを再現したくて、アンプの追求もしてきたのです。そして六畳間のユニコーンとしては、満足行く仕上がりになりました。

しかし、大きな部屋で聴くコンシーケンスの雄大な音や、40Hz以下のコントラバスの基音をユニコーンからは効くことは出来ません。横浜のMさんの素晴らしいTroubadour80の実在音を聴いて、この音をクラシックの再生に行かせないだろうかと思ったのが、今回のTW3の開発の切っ掛けでした。

Hさんの後押しや、大山さんとの沢山の試行錯誤を通じて、ほぼ一年掛かりでTW3を作ってきたのです。それでも、最後は微妙な調整一つで、音楽が表れたり、消えたりしていたのです。その課程の音も聴いていただき、完成した音も聴いていただいていたBellwoodさんに、コルクで音が良くなったよとは、なかなか説明しても感心は向けていただけませんでした。何よりも、この音が出て音楽に専念している自分にとって、オーディオ的な分析はもう必要なかったからです。

ご承知の通り、音はどこを触っても変わります。変わるのが、替えるのがオーディオの趣味だと思われている方も多いからです。電源、端子、絶縁、材質、置き方、それらのどこを触っても音は変わるのです。今一度いますが、音が変わるのが楽しいのがオーディオの趣味なのかも知れません。行き先は人により違いますから、その種類は千差万別で、だからこそ楽しいのかも知れません。変わることがあるから変える、かえるから音が良くなる、だから変えなければならない・・・

しかし、私の目標は変えることにあるのではなく、その結果です。その結果として、自分が聴いてきたヨーロッパのオーケストラの素晴らしい演奏が、自分の部屋で再現出来たらと願ってやってきたわけです。その手段としてオーディオが必要なのであって、オーディオのためにオーディオをやってきたわけではありません。でなければ、50年以上も続けて来れなかったでしょう。いま、その長い旅路の果てに、自分としても終着駅に着けたようです。その音を、Bellwoodさんに聴いていただきたいと思いました。

実は、家には八月だけでも二回程来られる予定がありました。両方とも、ご一緒される方の予定が合わず流れました。また夏休みには、蓼科の別荘の方にも二回程行かれていて、仕事付けの当方とは、日程の調整が付かなかったです。それと、私の方も音は安定して変わらないので、いつでも良いと思っていたのです。それよりも、良い演奏や、良い録音のCDを見付ける方が大事だと先のラベルのように閑が有れば、音楽を聞き込んでいました。

すると、1957年の録音でも、2012年の録音でも、雑音やレンジは違うけど、演奏の暑さは充分伝わってくると確信したのです。しかし、されでも、最新のDSD録音になると音の深さ、柔らかさが違いオーケストラの深さと怖さが伝わってくるようになったのです。その典型がヤンソンス・コンセルトヘボウのラ・ヴァルスの冒頭を聴いていただきました。

まず聴かせていただいたのは、ヤンソンス/コンセルトヘボウでした。始まりの部分が生まれて初めて明瞭に聞こえたので、それこそぶっ飛びました。うねるようなウィンナワルツの独特なアクセントとリズムに身体が自然に波打つように揺れてきます。こんなサウンドが出せるシステムは、まず、他にないでしょうね。その上でこの部分を聴き較べさせていただくと、やはり各指揮者やオーケストラの力量、録音の質の違いがよくわかります。この部分でこんな比較ができるのは本当に未体験のことでした。単に低音をブイブイ鳴らして喜ぶようなシステムとは次元が違います。

他のものでは、やはり、ブーレーズ/BPOが出色だと思いました。もともと私はこのCD(ハンブルク製オリジナル盤)をリファレンスのひとつにしているのですが、ボレロと道化師の朝の歌が圧巻。ブーレーズに対する固定観念が吹き飛びますが、それは再生の仕方次第のところがありますね。

という、コメントを頂きました。今月のヨーロッパ旅行の前に詳しい感想を送っていただけると嬉しいですね。



今週は二回も札幌に

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火曜日の夕方、台風10号を跨いでようやく帰って来たのですが、金曜の夜はその札幌にまた向かっています。千歳空港からの電車のアナウンスは、暗い男の人の声も、少し訛りがある女性の英語のアナウンスも聞き飽きました。前回は、苫小牧方面から来た特急の遅れで、線路待ちをして遅れましたが、今日は、その列車が台風の影響で運休になっているそうです。やはり、台風の影響はいたる所に残っているようですね。これほど連続して札幌に来るのもめずらしいのですが、まったく違う用件なので、仕方がありません。

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昨日の夕方は、西日に輝きはじめた富士山の剣が峰を見ていました。この新東名から観る富士山は、新鮮なアングルです。頂上が飛び出ていますが、この写真で解るでしょうか。昨日は一日良い天気で、くっきりと晴れて気温も随分と上がりました。空気の綺麗な静岡では、日差しが眩しく、じりじりと焦がされるような感じでした。朝出て大井川のあたりまで行って、三時頃向こうを出れましたので、帰って来たときは、まだ五時台でしたが、夏の終わりなのでしょうか、早くも暗くなり始めていました。これから日に日に陽は短くなっていくのでしょう。   

一生懸命帰って来たのには、訳があります。ワールドカップの最終予選があるからです。でも、先発メンバーを観たとき、相手をなめているのかと思いました。 そして、試合前の練習を見たときヨーロッパ帰りのメンバーも身体が重く、汗かき過ぎなのが気になりました。第一、一番肝心な気迫が感じられません。展開は、格下の相手なのに決められません。だんだんいやな感じになってきました。前半を終わって負けているではありませんか。後半のメンバーを最初から出すべきです。やらなくても良いペナルティを与え、入っていた筈のゴールを認められないのは、相手が同じ中東の審判だという大変なアウェイは、ワールドカップでは何度も経験しているはずです。あのドーハの悲劇も、最終戦にあそこまでもつれたのが原因ですが、相手も必死なのです。海外組で動いていたのは、本田ぐらいでしょう。後は皆ふがいなさを露呈しました。一番の問題は、監督の采配ミスです。見終わって疲れました。

がっかりして和室に行き、心を静めるためにアンプの火を入れました。こちらは、現在調整中です。調整するところが多くて困っているぐらいです。それでも、電源から見直しを図っています。電源部と本体を分けてしまったので、音が変わる要素が多くなりました。やはり一体型の方がやりやすいかもしれません。これから、じっくりと調整して行きましょう。やることがあるのは嬉しいです。

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北海道に出る前に、EMMのDAC部を持って来て聴き比べて見ました。方向性はあっているけど、まだまだです。やりがいがありますね。



        

教会での演奏会

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Dynaudioの"Consequence"が、とてもいい音を出していた2011年の秋に、石田さんとご一緒に来ていただいた伊藤さんの所属するコーラスの演奏会があると言う事で、澁谷の聖ドミニコ教会にベートーヴェンのミサ曲を聴きに行ってきました。ベートーヴェンのミサ曲というと、荘厳ミサが有名ですが、あまり演奏されないハ長調のミサ曲の方が演奏されました。私も聴いたことがありませんでした。練習をされている伊藤さんからは、力強い曲だとは聴いていました。
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私自身は、クリスチャンではないので、教会には滅多に行きませんが、ヨーロッパの教会でオルガンの演奏を聴いたぐらいです。澁谷の教会もオルガンが二階に設置されていて、天井からから降り注いでくるのでしょう。教会の造りは、写真で見たことのあるベルリンのイエスキリスト教会みたいな雰囲気でした。モダンな造りで、天井近くにステンドグラスがあります。演奏がはじまる三時過ぎには、陽がステンドグラス越しに差してきて、信者のシャツを色とりどりに染めていきます。

教会ですから、残響の多い音が充ちていて、演奏前のアナウンスも、音が被って良くわからないほどでした。そんななか演奏前の挨拶に立たれた神父様のお声はマイクから離していても、さすが良く通り、バリトンの声も魅力的に聞こえました。

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演奏は、モーツァルトのハ短調のセレナーデK.388から始まりました。オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンが二管づつの木管の八重奏曲で、この曲は後に弦楽五重奏曲の2番にもなっています。K.361のグランパルティータに比べると、モーツァルト自身よりは、バッハやヘンデル的な響きを持っていると感じました。演奏はやはりホルンとファゴットの音色と音程の問題は感じました。ホルンはアマチュアだと難しいところですね。

15分の休憩がありベートーヴェンのミサ曲です。狭い教会の祭壇一杯にオーケストラピットに入るようにオーケストラが並び、その後ろに、ソプラノ群が左側、アルト群が右側の女性コーラスが展開して、祭壇の前に、男性コーラスが左側にテノール、右側バスのが一体となって並んでいます。目一杯ですね。その大人数の演奏陣から、指揮者の曽我氏のバトンが一振すると思いがけない大音量の響きが教会に溢れました。リズム感も良いし、コーラスは音程がしっかりしています。オーケストラも低音がしっかりと弾けていて、インテンポ気味に音楽を引っ張っていきます。曽我さんの演奏は初めて聴きましたが、しっかりとした音楽構成で驚きました。

この曲はラテン語のミサの祈りをそのまま使っているのですが、教会の中で演奏するにはドラマティック過ぎると感じました。激しいのです。第九のクライマックスみたいにフルコーラスで歌われる迫力は聴いている人は。教会にいることを忘れるくらいです。演奏効果としては、教会の音響効果も大事ですが、演奏その物は、少し残響の多いコンサートホール会場で聴きたいと感じました。

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二曲目のグローリアが終わったところで、先の神父さんがでてきて、お説教をはじめられました。5分ぐらいかと思っていましたら、なんと30分間続いたのです。その間、ソリストも、コーラスも指揮者も立ったままです。お説教は微に入り、歴史の講義見たくなりました。教会の説教としては良いのでしょうが、演奏会として聴きに来た私のような部外者から見たら、我慢大会に出たような物です。話が、大海に出たように拡がりはじめた時、これは何時終わるのだと、目の前が真っ暗になりました。法事の時の御経も音楽だと思って聴いている不信論者ですから30分以上の曲間のお説教は堪えました。

お話しの間、スタンバイしていたオーケストラは、今一度音のチューニングをはじめ、後半?のクレドから力強い演奏を再開したのです。ソリストも良いメンバーで、バリトンの吉川健一さんやアルトの高野百合絵さんは安定感もあり聴いていて安心できました。コーラスの素晴らしさは特筆物です。リズム感とダイナミクスが明確な指揮にも助けられて、声を出し切っていました。良い演奏を聴きました。

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終了後は、後片付けもある伊藤さんにはご挨拶せず、石田さんと近況を話しながら澁谷の駅まで戻って来ました。帰り道はほとんど下り坂なので楽でしたね。澁谷の地下は変わってしまい、デパートの地下街に迷い込みました。いろいろと目移りして、お弁当を買ってしまい、出張での加重と加わり、今朝起きて計ったらえらいことになっていました。トホホ・・・


澁谷は嫌いだ!?

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私は中央線沿線育ちなので、最寄りの都会の街は新宿になります。池袋や澁谷には、あまり馴染みがありませんでした。それでも、小学校の頃渋谷経由で世田谷の教室にカエル型の電車に乗って通ったことがありました。池袋はもっと馴染みが少なく、これも中学校時代の夏期講習の教室が大塚にあり、途中下車して池袋探索を行った程度です。両方とも50年以上前の街ですから、今とはまったく違う風景でした。

澁谷の地形は、典型的な河岸段丘で宇田川・澁谷川の1番低いところに駅があります。代々木練兵場と恵比寿の丘の間の谷間ですね。その為駅からどこの方向に向かうにも、坂をのぼらなければなりません。道玄坂、宮益坂・真坂・オルガン坂・スペイン坂など坂ばかりです。谷間の曲がりくねった道の先の丘陵を登ったところに、NHKや渋谷公会堂があります。

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先日の教会は旧の山手通りですから、246の一本裏道の南平坂を登ったところにあります。いずれにしても、渋谷駅からはどちらに向かっても坂を登らなくては行けません。はじめて、渋谷に行った時、地上三階を地下鉄銀座線が通っている不思議な光景に驚いたことがあります。表参道側から来ると、地下を走っていても、渋谷駅ではあの高さになってしまうのですね。ブラタモリ向きの街です。

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しかし、渋谷が嫌いなわけは、坂にあるのではありません。やはりあのわけの解らない人の多さと、若者ばかりの街の不気味さにあります。中国の新興都市はどこでも若者ばかりですが、広州市などは年寄りを見かけません。全員若者ばかりです。香港などは裏通りに行くと、おじさん・おばさん、おじいさん・おばあさんで溢れているのですが、そういう姿が無く、ほぼ全員が若者で、圧倒されます。渋谷・原宿界隈が嫌いなのは、その若者達のむやみやたらとまき散らしているエネルギーに圧倒されるからでしょう。

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この日も、炎天下の中沢山の若者が集まっていました。交差点を渡るのにも一苦労するぐらいです。外国の方も多く、さまざまな国からも集まっているのが解ります。最近は,本当に観光客の人も多く、田舎に行っても、蔵してこんな田舎の町にと思うほど、インターネットの情報が世界中に発信されているのですね。炎天下の街と若者が辛く感じるほど、こちらが老人力が身についたのでしょう。

3Dステレオの再生 1

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八月に来ていただいたK&Kさんが、感想を述べておられたホログラフィックの再生についてご説明したいと思っています。マルチチャンネル方式に頼らず、普通のステレオで空間が出ることを信じてステレオ再生を行ってきました。その最初の経験は、何度ものべていますが、中学生時代にAM放送で実験されていた立体音楽堂を聴いてからです。ステレオを普及するために、NHKが第一、第二の二つの電波を使って立体放送を行っていたのですが、小学生の時に自分で作ったラジオを二台使って聴いた時の感激はいまだに忘れません。旧式のスタティック型のスピーカーからも、その立体音は出現したのです。その驚きは、普及しはじめたステレオコンソールを聴いても聴くことは出来たのですが、クリスタル型のカートリッジの再生音より、放送局から流れてくる立体音の方がはるかに臨場感が有りました。

その違いを再認識したのは、レコード再生ではなく、ステレオのテープを聴いた時でした。クロストークの少ないテープからは、あの時の立体音場が出て来たのです。私がいまだに4トラックテープをコレクションしているのも、その時の感動からきています。東京オリンピック当時、一巻4000円もしていた高嶺の花のテープにいま囲まれているのは、宝島にいるような物です(爆)。問題は、それが宝物だと知らない人が多くなったことです。

K&Kさんが、家で聴かれたホログラフィックな音の感想を書いていただいています。

ビックリしたのはグランカッサ。グランカッサの奥行き感、定位の安定感、質感、まさにコンサートホールで聴いているような…。こんな再生音は今まで聞いたことがない。

促されて立ち上がってスピーカーの周囲を回りながら聴いてみると…スピーカーの裏側からはサントリーホールのP席で聴くように下の方にオーケストラが展開する。横に回るとミューザ川崎の知る人ぞ知る舞台横の特等席みたいな音が…

昔のスターウォーズ第一作目でR2D2がレイア姫の3Dホログラフィック映像を空間に投影して姫のメッセージを伝える場面があったけれど、あれの音響版みたい。ホログラフィックな映像のレイヤ姫と違うのはそのスケール感で、小さなレイヤ姫と違ってこちらは目の前に壮大なオーケストラが出現しているわけですから…。何とも不思議な音響空間。

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部屋の中にオーケストラの音響が立体的に構築されていて、その周りを移動して聴くとコンサートホール各席での音が聴けてしまう。

GRFさんによると、いくら無指向性のスピーカーを使ってもスピーカーの位置調整などがきちんとされないと、このホログラフィック感は得られないのだそうです。先ほど触れたグランカッサは部屋の音響、特に低域の吸音が適切に設定されないとあのような気持ちいい実在感は得られないのではないかと思います。通常のスピーカーよりも部屋の響きの影響を大きく受けるはずなので、この部屋の響きのホログラフィック感への貢献度はかなり高いのではないでしょうか?

私の出している音の特徴を良く捉えてくださいました。部屋の中央近くに置かれた、360度に放射するスピーカーからは、コンサートホール会場で鳴っているオーケストラの響きが出現するのです。不思議なのは、後ろに回るとその音場は手前側(ステージ上)にしか展開していなく、ソファー側には音は展開していません。T4の床置き平行法でも、この様な音が出て来ましたが、SPの裏側に回れば、そこには音は放射されていないのですから、表と裏の音の違いがあります。しかし、360度のスピーカーには表も裏もないのですが、明らかにステージ側の音と、観客席側の音は違うのです。QuadのESL-57のような平面スピーカーの場合は、対称的に裏側から聴くと、ソファー側がステージになります。

後方のデコラの前に立つと、あたかもP席からステージを見下ろしている様な音になります。またそのまま、横に移動すると、ミューザのステージ横の席のように、オーケストラを見ながら席を移動しているように音が変わります。ようやくホログラフィックな音が出現したようです。何時も来られるOさんにも同じ音源を聴いていただき、私と同じに観客席側(ソファー側)には音は拡がらないことを確認していただきました。のべ10名ぐらいの方に聴いていただいていますが、私の意図した様に聞こえている方は、三人に二人ぐらいのようです。

音の判断は面白いモノで、その人が聴いたことの無い音は聴いていても聞こえません。また、聞こえていても自分が自分が聴きたい音があればそちらの方に意識は引っ張られます。負のオーラの人は自意識が強い方なのでしょう(笑)。また、クラシックの会場の生の音では無く、スタジオで作られた(ミキシングされた)音を基準に音楽を聴かれている方は、実際の音では無くオーディオ的に作られた、自分にとってより綺麗な景色を見るようになります。それは新海誠監督の作る景色の様に、本物の景色よりアニメの方が美しいと言われているのと同じです。しかし、アニメの景色は、どんなに美しくても二次元の世界なのです。実際の三次元空間に展開している普通の景色より、省略され、デフォルメされ、全てにピントが合った絵の方が美しいと感じる感覚です。普通の映像は二次元しか再現出来ていません。画像の場合は、スクリーンに映されて空気感が出て来た感じより、直接モニター画像の精緻な画面が好きな方でしょう。

所詮、音楽の録音だって二次元の音では無いかと、録音する人が意識的に切りとっている音なのだから、より綺麗に聴いてどこが悪いのかといわれる方もおられるでしょう。しかし、この世の音は全て、空間に放出された段階で、三次元に拡がっているのです。音源からは360度に音は拡がっていき、それらを、我々の耳は方向も、距離も、強弱も全て瞬時で判断しているのです。それは耳で行っているのではありません。頭が判断しているのです。本能として受け継いだ物と、生まれて死ぬまで動き続けている耳からの微妙な情報を瞬時に判断しているのです。耳の役割は想像しているより遥かに重要なのです。三半規管の動きも耳と密接な関係があります。鼓膜が破れると、72時間は、地球が回ってしまい、めまいで起き上がれないそうです。

若い人の間では、イアフォンが普通に使われています。配信される音楽のかなりの部分が、イアフォンで聴くことを前提に作られています。音楽を聴く部屋を持たない、持てない若い人達は、移動中の道路でも、電車の中でもイアフォンを外しません。当然、回りの環境は騒音に満ちていますから、流される音楽もヘッドフォン向きに解りやすい音に圧縮してあります。ヴァーチャルな環境こそが音楽空間だと思われています。

私の目指す音楽は、コンサートホールで聴ける、静かな環境とダイナミックな音のレンジ、そしてオルガンやコントラバスの最低音から、楽器の出す最高音まで十全に出せる装置を目指してオーディオをやってきました。実際の空気が振動していル音の再現です。ですから、コンサートホールの響きを再現するには、ある面で切った二次元の音では無く、三次元の立体構造を出さなければホールでの音場は再現出来無いと思うようになりました。三次元の音を出すのにもっとも熱心なのは、マルチチャンネルによる再生方法です。しかし、私にとって腑に落ちないのは、そのマルチチャンネルの音を聴けるのは前後のスピーカーに囲まれた中央の一点だけだと言う事です。

演奏会場で、どの席に座っても、ステージから音は聞こえてきます。ステレオのように真ん中の席に座らなければ、音のバランスが狂うと言う事もありません。それはミューザやルツェルンの時の様にステージの真横に座っても演奏は楽しめるのです。そのように聴けるためには、音はステージ上に展開していなくてはなりません。そんな事が可能なのでしょうか?

ヘッドフォンの世界も、5.1チャンネルの世界も、スピーカーのサービスエリアの内側で聴いています。クラシックのマルチチャンネルは、ステージは通常のステレオのように前方に展開していますが、その音が、後方にも浸透していくのです。そして通常のステレオだと、中抜けしがちな左右のスピーカーの間も、中央のスピーカーがありますから音が埋まります。自分が音に囲まれるのですね。しかし、席を動くとそのイメージも消えてしまします。

続きます

3Dステレオの再生 2

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私が使って来たスピーカーの中で、一番音に実在感があると感じたのは、Hartleyのコンサートマスターが再現する精緻な音の世界です。部屋を横に使い、左右に目一杯拡げた配置の中央だけで聴けるステレオの音は、二次元的なステレオの極致だと思います。岡山の是枝さんの試聴室や、三田のIKさんのお宅でなっている音です。部屋の一点だけで聴ける音は、自分だけで聴いている場合は最高の音の一つでしょう。
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この音の問題点は一つだけ、それは中央の人しか正しい音のバランスで聴けないと言う事です。20センチずれたらバランスが狂います。IKさんのお宅では、中央に飾っている美しい女性の素描を正面に見る位置でないとバランスがずれてしまいます。それは三次元に拡がっている風景を二次元のキャンバスの写すような、トリミングとフレーミングの高度な技術を必要とします。

Hartleyはコーン型のスピーカーとシンプルなネットワークで歪みを押さえ、マルチアンプのホーン型大型スピーカーの世界を再現しようとして成功した、稀有なスピーカーだと思います。強力なマグネットとダンパーの支持の方法が秀逸です。音が楽々と出ます。これで奥行き方向が再現出来たら、このまま使っているでしょう。いまでも、IKさんお宅のような素敵な空間があるのなら使い続けたいですね。

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特徴ある音と言えば、やはりQUADのESL-57の音場です。平面スピーカー特有の余裕のある低音再現能力と、軽い振動板から送り出されるスピード早い音。スピードの速い音というと、切れ味が鋭い音というイメージを持たれる方もおられるでしょうが、空気の振動に忠実なスピードの速い音は自然で柔らかい音がするのです。ESL-57をいかにも、切れ味良くチェンバロの再生音を得意にされている方は、やはりどこかで音が変質しているのだと思います。

茅野の家で、タンノイのR.GRFとならしていましたが、どちらがなっているのか解らないほど深々として、ダイナミックな音がするのが、このスピーカーの身上です。問題は、振動板が前後に鳴っていて、位相が反対の音が前後に放射されています。その為、後方に音場は展開せず、質は高いけれど、コンサートホールの奥行きは再現しないのです。それを改善したのが、ESL-63です。57と63はコンセプトがまったく違います。音場の再現には点音源の音をディレーで再現した63でなければ鳴りません。57はあくまでも音の質の追求です。その意味では、Hartleyと似ているのかも知れません。

ESL57の音は、振動板が楽器の音の発生源のようになります。勿論、収録された音には残響も録音されていますから、会場で聞くような音には似かよるのですが、音場が出ているわけではありません。音が忠実ですから会場の雰囲気は出るのです。そこが難しいところですね。平面型のスピーカーは、振動板の面積が大きいので、低音は比較的楽に出て来ます。ところが、振動板の位置が揃ってるが故に音場の再生は難しさが出て来ます。アポジーやマーティン・ローガンもその傾向にあります。平面スピーカーの良いところはその自然な低音の出方にあると思います。

和室のユニコーンは、壁の手前に置いてありますから、当然後ろの壁の反射音も聞いています。家は後ろの壁が土壁なので、全面反射はおきず、主に低音の反射を聞いていることになります。使っている初期のユニコーンは縦置きにした場合は左右に、横置きにした場合は前後に低域の放射が起きています。音色や前後の音が出る様は、コンデンサースピーカーを聞いている様な感覚に襲われます。しかし、良く聞くとまったく違う音場の音がしているのが解ります。

DDDユニットの360度放射は、それだけ聞いていてもそんなに特殊な音では無いので、不自然はありません。しかし、部屋の中央に出してきたときは、狭い部屋で壁に囲まれているときとはまったく違う音場が出て来ます。全ての発音体の音は、振動が始まると必然的に360度に音は拡がってい行きます。全面だけに音を放射している普通のスピーカーは、その前面方向だけに音が出ているので、やはり音の拡がりの一部だけを聞いていることになります。前面のバッフルが小さく、回析効果を考慮してある小型のスピーカーを空間に設置したときには、スピーカー自体が消えて、録音したときの会場が表れます。

突如として、その空間が出現するのです。音場で出ると、その部屋は別空間になります。奥行きがでてコンサートホールの会場にワープするのです。シンプルにワンポイントで録音された方が、元の音場の自然観が出て来ます。最近の録音は補助のマイクが多く使われているので、その場合は音が音場から離れてスピーカーに張り付く場合もあります。二次元しかでていないモニタースピーカーで音だけを足してしまったからでしょう。

まだ続きます。







京都人さんのお宅へ 

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何ヶ月も前から楽しみに待っていたメジュエーワのミューザ川崎でのコンサートを仕事で泣く泣く譲り、関西に向かったのは、金曜日の朝でした。予定より早く出られたので、途中で車のディーラーにより、候補車に乗ってみました。最新の設備を網羅した最新型の車は、自動運転と安全運転に相当力が入っていました。最近は、若返りを図っているので、ダッシュボードがアルミ仕様の機種が多くなってきました。木目が良いのですが、上級仕様しかないようです。2000ccクラスのターボ車が主流になってきました。試乗を終えて、10年物の愛車に乗ると、さすがにサスペンションは相当がたが来ていますが、エンジンはロムチューンしている今の車の方がトルクがあります。試乗を終えて、悩ましさが増しました。高速に乗ると道路は順調で、新東名のスムーズな道を走っていると、スムーズすぎて眠たくなります。

昨日は、台風の影響で蒸し暑い空気の中を、代々木のNHKホールまで、ヤルヴィのマーラー第八番を聞いてきました。予想通り、快速の演奏で、湿った空気も変わるほど気合いが入っていました。ヤルヴィ効果は大きく、何よりも不安だった金管と打楽器が全く変わりました。良い循環に入っており、演奏している方も気持ちが乗ると思います。弦楽器もチェロやヴィオラの音が充実していて、安心して聴けます。コンサートマスターの麿の音色も立っていました。終わった後、高速バスで日立まで帰られるエビネンコさんとの時間を気にしながら代々木でミニ感想戦。時間ギリギリで、代々木駅で上りと下りの総武線の電車に乗りました。そのまま高円寺まで戻り、行きつけのワインバーへ。台風と蒸し暑い空気の中で、マスター相手に冷たい白ワインを飲みました。
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その影響が新東名のスムーズな道で出て来て、ボーとしてきます。パーキングに入り一眠り。静岡はよく晴れて眩しい日差しでした。新東名はトンネルが多く、その大部分は三車線の余裕のあるサイズですが、新しく出来た三ヶ日から豊田東までが、とても長く感じられます。伊勢湾自動車道に入る頃には、行く手に西日が落ち始めてとても眩ししかったです。めずらしくサングラスを使用しないと運転できないほど。四日市周辺は相変わらずの混雑です。早く新名神が伊勢湾道と繋がると良いですね。新名神に入ると、京都以西の渋滞が見えてきました。新大阪付近のホテルをとってあるので、そこに車を置いて、電車で京都人さんのお宅へ向かいたいのですが、どうやら時間切れのようです。茨木で高速を下りて、京都人さんの病院に向かったら、到着は約束の時間通りでした。お酒が頂けないのは残念ですが、音は良くわかるし、ホテルへのアクセスを考えたら、車が正解でした。

病院の二階が、オーディオルームになっている様です。二階に上がると、部屋は暗く余分な物が見えない様に工夫されているようでした。最低限の灯りにボーと見えてくるのは、上部のホーンが下向きに開口されている水平方向に360度開かれたDuevelというスピーカーが見えます。二つのスピーカーで構成して水平方向に360度拡散するつくりでした。German Physiksの新型SPUnlimitedのようなスタイルですが、音はまったく違います。360度に拡がっていますから、通常のSPには出せない音の拡がりと定位感があります。目の前に池が有り、そこから波紋が拡がって聞こえる様な感覚です。左右の間隔はさほど広くないのですが、そこから音場が拡がっていきます。このスピーカーに限らないのですが、音場型のスピーカーを使いこなすコツは左右の間隔にあります。その間隔をそれこそ、1mm単位、最後は、0.1mmまで追い込んで調整すると、突然、魔法のように空間が拡がるのです。
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この部屋は、職員の休憩室を兼ねている大きな部屋で、40畳程あるのではないでしょうか?いろいろな方が入られるので、どうしても左側のSPは触られてしまうようです。私の感覚では左側のSPを3〜5mmほどうごかすと合ってくるのではと思って聞いていました。

さて、いよいよ、プライベートの方の部屋に案内されました。中は、もっと真っ暗です。映画館の中に入ったような感じです。真っ暗でも大きな部屋なのは響きで解ります。突如として左側から、恐ろしくリアリティのある音が鳴りました。低域もしっかりと出ていて、3D的な音場も自然です。私の家の和室のユニコーンを部屋を真っ暗にして、小さな音で鳴らしたときの響きにそっくりでした。何よりも奥行きと低域の音の深さに驚きました。これは良い音です。演奏会場のリアリティが出て来ます。演奏が終わると、うっすらとともった電気の中で、リーディマーのスピーカーが45度の交差していて、中央に低音スピーカーもありました。その低域用のスピーカーまで奥行きが拡がり、家で言えば、T4の音をもっと拡げた音場になっていました。交差法でのこれだけの奥行き感は、初めての経験です。帯域と良い、音の出方と良いとても気に入りました。残念な事にこのリーディマーは、天井からの水漏れが原因で、少し調子が出ないとのことでした。私には完璧に聞こえましたが。

さて、いよいよ、メイン装置のKiso Acousticのスピーカーです。部屋は、真っ暗なままです。言われるままに椅子のあるところに移動して座ります。フィッシャーディスカウが、空間に浮かび上がりました。マーラーの「さすらう若人の歌」です。声が若いですね。フルトヴェングラー・フィルハーモニアの演奏でしょう。左右のSPの後方に一点定位しています。奥行きが深く、正面席からステージ上のフィッシャーディスカウを俯瞰しているような感覚です。オーケストラも、充実していて、録音の古さは全く感じません。いままで、いろいろな方のお宅で聞かせて貰った中でも、是枝さんのHartleyの音と双璧をなす驚きに充ちた音でした。ビックリと言えば、UNICORNさんのJazzの音にも驚きました。HartleyもUnicornも一年以内に私の家にはありました。このスピーカーはどうなるでしょう?

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次は、トスカニーニ唯一のステレオ録音盤でワーグナーのローエングリーンの前奏曲が静かに掛かりました。1954年の録音ですが、あたかもステージの前にいるような臨場感です。モノフォニックもよかったですが、ステレオフォニックも素晴らしい拡がりと、奥行きです。数十年も昔、はじめてスタックスのヘッドフォンSR-3を被ったときのことが思い越されました。その時の音の軽さ、空気の軽さをスピーカーで再現されているような感覚に驚き、懐かしく思いました。ここまで、スピーカーの置き場所を厳密に追い込み、あの素敵なステレオの第空間を再現されているのは、他所のお宅では初めての経験です。嬉しいですね。同好の人に会えるのは!

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    写真は、kikiさんのブログから拝借致しました。

何枚かCDを聞かせていただき、それぞれに驚き、感動しました。部屋が明るくなると、小さなスピーカーがこちらも交差法(クロス法)で置かれていました。部屋は、50畳以上あるでしょうか?今までお伺いした中では、宮崎のEさんのお宅ほどの広さがあるでしょう。天井は勿論高いですが普通の範囲です。部屋のコーナーには吸音措置が施されありますが、全体としては自然の響きを大事にされています。狭い部屋の低音の増強効果が無いですから、低域が薄くなるのは仕方ありません。コンデンサースピーカーが沢山置かれていて、ほとんど全種類があるでしょう。Hさんと同じ音を求めて、最後は360度指向に変わられるのでしょうか?その前に、点音源としての、空間再現の最高点に行き着いた音です。

聞かせていただいているうちに、私が現在追い求めるている方向は間違っていないのだと確信致しました。スピーカーの音色ではなく、スピーカーの存在が消えて、音だけが、音楽だけが鳴る理想の空間です。アプローチは沢山あるのですが、これだけの大空間を確保されて、尚かつ、停まることなく突き進んでいく、京都人さんの強靱な意志とエネルギーに感銘を受けました。

久し振りに、ネジを巻かれました。これだからオーディオは楽しいですね。次回は、家の音を聞いていただきます。アプローチが違いますから、音の段階は違うでしょうが、家の音も、雲海の上でご来光が見える程度にはなっています。頂上はまだまだ上でしょうが、京都人さんには同じ雲海上の景色をみていただきたいと思いました。

この音に、グランカッサの雄大な低域が加われば、ほぼ理想の音だと感じました。しかし、それが難しいのです。また寄せさせてください。このスピーカーで平行法の音も聞いてみたいと思いました。

新大阪へは171号と平行している道を、新御堂まで走り、あとは新大阪まで走りました。降り口は東三国かも知れないと思いながら新大阪まで行ってしまい、南口から北口に戻るのにUターンをしました。北口側のホテルの側にも、お店はあったのですが、チェックインをしたら10時半を回っており、みなラストオーダー後でした。仕方がないから、今日もまたコンビニです。

翌朝は、昨日までの蒸し暑さがなくなり、涼しい風が吹いていました。午前中の行事を終えて、宝塚のCさんのお宅に、テープを回収に行きました。DSDの変換はまたまた進んでいます。Cさん以外に全曲を聴ける人がいるのでしょうか?

今日は茅野泊まりです。暮れゆく南アルプスを眺めながら、今日の経験を踏まえて和室の音の改革を考えていました。GRFの部屋の音と同じ方向で進むのは、勿体ないと思ったからです。それならば、UNICORNさんの得意分野で真っ向勝負です(爆)。

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3Dステレオの再生 3 

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京都人さんの日記から

先日のGRFさんとの語らいの中でいろいろ考えさせられることがありました。

私の個人的な考えですが、音像音場再現にはいろいろな段階があると思っております。

第一段階は、適当に置かれたペアスピーカーによるもので、確かに左右から別々の音が鳴ったり、音の広がりのようなものも感じさせますが、空間再生を語るレベルではありません。

第二段階は、指向性のあるスピーカーをある程度きちんと(cmレベルの精度)セットして鳴らしたもので、いわゆる世間で言われているような音像定位(5点定位のようなもの)は問題なくクリアしますが、音像の前後上下などの再現には問題が残されていることが多いです。

第三段階は、フルレンジコンデンサースピーカーを厳密な精度でセッティングした場合の音場で、まるで立体写真を見るように音像音場が展開されてきます。しかしながら、音像が平面的でボディ感を感じ取りにくいのと、頭を少しでも動かすと音像音場が崩れてしまうと言う欠点があります。これは立体写真の場合においても、画像の中の人物などがそれぞれの空間的前後関係はわかるものの、個々の像そのものは切り紙細工のように平面的であること、また視線を少しでも変えると立体感が失われてしまうことと通じています。

第四段階は、スピーカーから出る音波が部屋の中につくりだしてくる疎密波の分布を整えることで、元音源の音像音場をそのままの形で部屋の中に再現させようというものです。

これが私が言っている所の「真の音場」というもので、立体ホログラフィーのようにどの位置から聴いても音像音場の形は崩れませんし、音像そのものの立体感も出てきます。ここにいたって初めて演奏会場で鳴っている音がそのままの形で生々しく自分の部屋に再現されるようになります。

ただし、このレベルを実現させるためには、スピーカー同士の位置関係を本当に厳密に合わせていく必要があります。これは映像の世界で3管式のプロジェクターのRGBの各ビームのコンバージェンスをきちんと合わせなければピントが合った画像が得られないのと同じで、ほんのわずかのズレが出来上がりを大きく左右するため、よほどの根気がない限り実現させることは極めて困難です。

特に指向性の強いスピーカーでこれを行うことは困難の極みで、特に2つのスピーカーのなす角度の調整に気の遠くなるような微妙な取り組みを続けなくてはなりません。そのような理由からこの状態の再生音はなかなか体験する機会がなく、そのような音像音場があることを知っている人も極めてわずかでしかありませんでした。

ここにDDDユニットをはじめとする360度水平方向無指向性のスピーカーがいろいろ出現し、この角度調整をスキップすることが可能になりました。通常のスピーカーの場合ですと数ヶ月かかっていたセッティングの手間暇が随分省略できるため、わずかの調整で「真の音場」の一端に触れることが可能になってきたと感じています。

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さすがに音場の再現を追求されてきた方のご説明は、解りやすく整理されておられると感心致しました。

第三段階のフルレンジ型のコンデンサースピーカーというところですが、後面から逆相で音が出ている平面スピーカーの再生は、やはり大きな部屋を必要とします。また、全くの同じ位置から低音と高音が出ているESL-57では、この様に聞こえたことはありません。ESL57は音場が出ないSPだと認識しています。この経験に一番近いのは、Hartleyの後面開放型と密閉型の中音・高音SPの水平配置です。SPの中央に座った人だけが、書き割りで書かれた平面の背景が前後に並んで見える、昔のディズニーの映画の奥行き感に近い感覚です。昔のステレオ写真の様ですね。しかし、ESL57もHartleyもその立体感は出なくとも、音質は抜群です。

京都人さんが仰る第四段階の音場が、私も目指すところです。それは、よほどの偶然でもなければ、なかなかその音場は出現しません。角度を持たした配置ですと、ますます難しくなりますし、壁に近いセッティングからは、三次元の立体音響は出ないからです。その45度配置のGRFは、部屋のコーナーに置かれます。その為、前方には音は立体的に展開しますが、後方の音は、壁に反射されますから後方には奥行きを持って展開しません。私が簡単に音場を出す方法で推奨しているのは、部屋の中央になるべく出してきた、平行法の配置です。厳密に平行を出し、モノラル音源で、左右のズレを微妙に調整しますと、ある瞬間、大空間が出現します。それは、魔法のような瞬間です。

京都人さんのお宅では、50畳は有ろうかと思われる大空間の中央に、45度配置された小型SPが理想的な音場を構成しています。音場情報が入っている音源でしたら、そこは、コンサートホールにワープするのです。交差法の部屋の中央配置が、前ではなく、元のソースに入っている後方展開の音場を出している初めての経験でした。この様な大空間でなければ出現しない音だとおどろき感心致しました。

小型SPですから、低音の迫力は有りませんが、この様な音場が交差法(クロス方法)で出現する事が驚きです。出現した音像定位は、聞く場所を変えても変わりません。家でGerman PhysiksのDDDユニットが動かない定位を再現しているのと同じです。360度放射のユニットは、最初から角度の調整をする必要はなく、行うのは、SPの間隔を合わせる調整だけです。左右の間隔を、本当に0.1mm単位で動かしても音はガラガラ変わります。1mm動いたら全く別なバランスになるのです。トントン、コツコツといわれている微調整が、その音場の入り口を発見する手段なのです。

今回の訪問は、はじめてピッタリと調整された音に出会いました。 ユニコーンを導入されたプー博士のお宅ででたあの驚きの音場です。それが、三次元の音響空間=3Dステレオの世界です。勿論、装置の質やクロストークの少なさも影響されますが、どこの部屋でも出ると言っても過言ではないのです。ほとんどの場合は、制約を自分に課しているだけです。オーディオを趣味されるのなら、京都人さんの様に徹底してやらなければ、ゴールにたどり着けないとの思いを新たにしました。






超満員の北海道

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九月に入っても北海道は,大変な人気です。今週の札幌ではその影響で大変な目に合っています。まず宿が取れない。ホテルは軒並み満員。有っても価格がいつもの二〜三倍。一泊五万とか十万も出る始末。香港かシンガポール見たくなってきました。ようやく見付けたいつものホテルも通常の二倍でした。

一番の問題は、羽田から千歳の便が朝から超満員。まだ朝の九時過ぎなのに、午後二時過ぎの便まで全部満席とのこと。それでは会議に間に合いません。中に入って空席待ちを待つことにしました。11時の便に乗るつもりで来たのですが、セキュリティを出たところの61番から10時の便が出ます。ダメ元で聞いてみると、何と空席があるとのこと。マイレージの会員なので、すぐに乗れました。結果は、一便早く千歳に飛べることに。一席だけ空いていた席は一番後ろ。全員着席している中を荷物を持って一番奥まで歩きました。千歳に着くと、一便早かったので、他の空港からから来るメンバーはまだ一時間後です。とりあえず先に札幌市内へと向かいました。おかげで駅のそばの本屋さんで、一時間じっくりと本を漁ることが出来ました。最近は、通販ばっかりですが、本ばかりは実際に眺めてみたり、意匠を見ないと内容が想像できませんね。

夕方、無事に打ち合わせを終えて、ホテルのチェックインの時に顔見知りのフロントに聞くと、秋の学会と、オータムフェスティバル。加えて日本ハムの優勝前の混雑、今一つ、毎週の様に開かれるコンサート等々で、満員なのだそうです。ちなみに今週末からは連休ですから、輪を掛けて一杯だそうです。私は団体客ではないし、常連なので、今日のレートは数万円のデラックスルームにアップグレードして貰い何とか納得。ホテルとしては空いている部屋なら、空けて置くよりいくらでも使って貰った方が良いからです。

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ホテルからは、すすきの方面の予約してある魚料理屋さんまで、早足で歩きました。日頃の運動不足を解消したつもりです。もっとも、帰ると羽田ではまた歩るかされるでしょうが。雨上がりですから湿気を含んだ気候は夏と秋とのせめぎ合いです。それでも、汗ばむほどの気温ではなくなってきたようです。街は、一杯の人ですね。二次会を終えて、戻って来たのは、比較的に早く10時半頃でした。だいぶ涼しくなってきた街の中をゆっくりと歩きました。こうしてブラブラと散歩しながら帰れるのも、後一月ぐらいでしょう。九月を過ぎるとやはり北海道は涼しくなっていきます。

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翌朝、ホテルの部屋で、メール等を片付けて、帰りの飛行機の状況を見たら、何と12時以降の東京行きは、昨日と反対で満席です。仕方がないので、12時丁度の便を予約しました。帰りは、千歳駅前のラーメン店に寄ろうと思っていたのですが、この混雑状況では、飛行場でまた待たされるのいやなので、急ぎ帰りました。先週と違って、空港内は満員です。交通整理が必要な程でした。セキュリティーに時間が掛かり、15分以上遅れて沢山の人が搭乗してきました。本当に満席です。隣の席の人が、傍若無人に咳をしていて、羽田に着く頃には、喉が痛くなってきました。どんどん、回りに気を使わない人が増えて来ているようです。隣のおじさんは、ゲームばかりしでした。何もすることは無いのだろうか?本当に人生は短いのに・・・

和室のユニコーンの調整を

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京都人さんが、「先日のGRFさんとの語らいの中でいろいろ考えさせられることがありました。私の個人的な考えですが、音像音場再現にはいろいろな段階があると思っております。」とのべられて、ステレオの音場再生への段階のご説明をしておられました。確かに、先日聞かせていただいた音は、第四段階まで到達していて、一旦音像が決まる設置にすると、どこで聴いても音がぶれません。私は、360度放射するタイプのスピーカーで無ければ、難しいのではと思って居ましたので、リーディマーやkiso Acoustcの交差法の配置から聞こえる、音場に驚き感心しました。

ただ、京都人さんも述べておられますように、この音は簡単には表れないのです。厳密に合わせるしか有りません。聞いたことがなければ、折角の金鉱山の入り口が見つからないと言う事もあります。そして、部屋の影響は大きいです。学校の教室ぐらいある京都人さんの実験室だから出ているとも言えるストレスがない音でした。普通は部屋の反射がありますから、大きさによって聴ける音量が異なってきますね。しかし、オーディオ機器に大金を掛けるぐらいでしたら、都会に住んでいない方々には、家を作る方が、かえって経済的な方法だと感じました。しかし、装置はシンプルなのですが、入力の質やアンプの能力は問われます。

大阪からの帰り道、ゆっくりと彦根から大垣に出て、一宮から北陸縦貫道経由で、中央道に入りました。遠回りですが、名古屋付近の渋滞には巻き込まれなくて済みます。先日探訪した馬籠の宿の神坂を過ぎて、恵那山トンネルをくぐると、夕日に赤く輝く南アルプスの高峰が見えます。中でも赤岳が夕日に染まり、最後に輝く景色を見たとき、気がつきました。GRFの部屋で出ている音場を狭い部屋の和室で再現する必要はないと。和室では、音場再生ではないオーディオを追求していこうと思い至りました。

狭い部屋での制約を活かして、音場も再現しながらより音質的な方向で、自分の好みを追求しても良いのではと思い当たったのです。最後の陽光が消える前に、輝きを増したアルプスの高峰を眺めながら、行く手の暗い道が、これからの冒険を暗示しているように思い、その行く手が見えないのが、かえって楽しみが見つかった嬉しさも出て来ました。京都人さんの出している音を聞けたので、音場再生の方向が間違っていないことが解り、逆にその音を出しながら、音の反射の有る狭い部屋での再生方法を考えたのです。

その日は、茅野で泊まり、ESL57用のパワーアンプQUAD405IIの聞き比べを行いました。当然ながら、個体の違いや、使っている電源コンデンサーの音の差も出て来ます。しかし、ESL57の場合は、振動板のフィルム一枚の位置の差が音に出て来ます。また、足の精度によるのでしょうか、仰角の差も左右の音が合わない原因になります。モノラル音源をつかって厳密に合わせるのは、使い方のコツですね。そして合った時の音の深さ、細かさ、低音の雄大さは素晴らしい音が出て来ます。近くで、聞くのではなく、4〜5メートル離れて聞かれると良いと思います。

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翌日、松本のITさんのところへお借りしていたテープをお返しして、とんぼ返りで戻って来ましたが、日曜日の渋滞に巻き込まれ、疲れが出て考えを実行するまでには行きませんでした。翌日の月曜日に、和室のユニコーンを、今まで音場重視から、逆に楽しい音質の再現に変えてみました。といっても大きく変える必要はなく、また大きく変えようもないのですが、音の密度を高めるために左右の間隔を3mmづつ寄せて、エネルギー感をあげ、ユニコーンの高域のレヴェルを一段あげてダイナミックなエネルギー分布に変えました。それだけで、クラシック専用からJazzやヴォーカル向きに大きく変わります。早速、jazz用のテストCDを出してきて、シンバルのブラッシングや、塗装が少ないサックスの濡れるような音を楽しみました。

火曜の夜には、Oさんが、先日の要望に基づいたDACの手直しをされて持って来てくれました。前回お願いしてあった懸案を、丁寧にご自分の機械でも変更して聞き比べを行い、ブラシュアップしてきてくれたのです。アナログ出力段のトランスの接続を変えて増幅度を上げ、デジタル変換方式を電流変換から電圧変換に変更し、アナログ段の電源トランジスタを変更し、負荷抵抗の種類を変えて細かなところで音を作り込んできました。聞いてみると、先日とはまるで違い、安定感もあり、音の雄大さや、周波数帯域の広さも感じられて、満足行く段階に入りました。これで、しばらく聞き込みを進め、隣の部屋のemmに挑戦です(爆)。
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連休ですが・・・

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このところ、出張がつづき連休中もなかなか相互訪問のお約束が出来ません。また、お天気も西から崩れており、台風の影響も心配されます。幸いにも関東地方は、西の山々に遮られて、日曜日もまだ雨が降り出していません。お盆の中日は雨が予想されるので、夏を越したお墓の手入れもかねてお墓まいりに行ってきました。墓誌も半分ぐらい埋まり、次は誰の番だと考えると、感慨もひとしおです。

帰りは、高速の混雑もあるので下道をゆっくり帰って来ました。したはそれなりの混雑でしたが、渋滞することもなく戻って来れました。お墓まいりの帰りの昼食はお蕎麦屋さんが多いのですが、今日は少しだけ趣を変えて、帰り道に何軒かある長崎チャンポンにしました。郊外のお店は混雑していましたが、環八に近い水道道路のお店はゆったりと座れました。野菜が多めで好きですね。

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今日の夕方は、昨日来られるはずだったチューバホーンさんが来られます。Jazz向きに変わった和室のユニコーンとコンサートホール化したGRFのある部屋のTroubadour+TW3の完成した音も聞いていただくつもりです。夕方六時前には来られると連絡があり、頃合いを見計らってアンプのスイッチを入れました。発熱も多い真空管アンプですから、そのままでは部屋も暑くなりますので空調も欠かせません。早く、空調が要らない季節が来ると良いのですが、台風の当たり年の今年は、季節が変わる前にまだまだ一荒れ来そうですね。

チューバホーンさんが前回来られたのは、三月で、実験三号機がなっていた頃です。フィンランド・バーチで作った形状の確認をしていたプロトタイプです。フィンランドバーチは積層の板の厚みが日本の規格よりも薄く、その為同じ厚みでも積層数が多くなります。使用している接着剤もいくぶん堅めで、その響きが音になり硬質な印象でした。本番品はシナ・アピトンなので響きがかなり異なります。また付き板と入念な塗装がされていますので、音の印象は随分と変わりました。また、TroubadourとTW3の間に敷いたコルクの材質が、音に落ち着きと安定感を与えました。最近は、出張つづきですが、帰って来ても以前のようにこまめな位置調整はしなくてもすんでいます。

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最初は、Jazz用?に調整された和室のユニコーンを聞いていただきました。調整と行っても実は、左右の間隔を少しだけ詰めて密度をあげ、高域のレヴェルをシンバルなどが良く聞こえるように、一段あげただけなのです。後ろの壁からの距離も、SPの下の処理も何もしていません。それで、チューバホーンさんが笑い出したほど、Jazzがよく掛かります。エネルギーに充ちて楽しい音です。OさんのDAコンバーターも明るく楽しい音でマッチングが良いですね。

ちなみに、この状態の儘でもCD34改に戻すと、落ち着いた今までの音がします。それも確かめていただきました。コンサートホールの空間の再生を目指していましたが、それは隣の部屋で実現したので、思い切って正反対のオーディオ的に楽しい音を目指しました。3D的な音場もでているのですが、そちらよりも、音質的に舵を切った音で、これなら普通の音の方向でもあるので、聴きに来られる方の共感?を呼びやすいでしょう。今までとは、まったく違う音が、3mm程度の移動で出てしまうのは、やはりオーディオの調整の難しさを証明しているのかも知れません。

一時間ほど、楽しんでから、隣のホールに移動しました。部屋を移ると、静けさと部屋の大きさ、響きの差がはっきりと解ります。チューバホーンさんがどの様に感じられたかは、感想をお待ちしましょう。
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チューバホーンさんのご感想 革命

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先日はお世話になりました。おかげさまで、今までのオーディオに対する概念が、一夜にして崩壊する貴重な体験となりました(笑)。

GRFさんとは、SD05がきっかけでしたので、もう10年になりました。ですから、もう何度お宅におじゃましたのかも定かではないのですが、今回は、異なる方向性を持つ2つジャーマンフィジックシステムの観測をさせていただきました。

まずは、その新しいDAC導入をきっかけに新たな音を再構築されたというユニコーンからスタートです。こちらではJazz音源をメインに聴かせていただいたのですが、量感たっぷりに弾むベース、刺激的なシンバル、迫力満点の音は、シングルコーン一発とは思えないような太く濃い音に変貌していました。

オーディオ的に言えば、いわゆる音像や音質を重視された結果だそうですが、この10年間で何度となく聴かせていただいたGRFさんの音の傾向と異なることは、一目瞭然、いや一聴瞭然でした。ユニコーンのセッティングの変更をしたのみとのことですが、新しいDACの素性も手伝っていることも確認させていただきました。
 
次いで、メインシステムであるトラバドール80+TW3のある部屋に移動して、今度はアバドのブルックナーの演奏から始まりました。この組み合わせは、以前TW3の試作段階でも聴かせていただいているのですが、こちらも一聴して以前に比べ、深く柔らかく滑らかな響きに変化していることがわかりました。

言い方を変えればより自然でニュートラルな響きになったようです。何枚かのCDを聴き進めた後、SACD盤に変えて再度聴かせていただいたのですが、CDに増してよりリアリティが向上しています。

トラバドールの音を、いわゆるオーディオ的な言葉で表現すればホールそのものの音場の中に立体的な音像が展開するといった表現になってしまうのですが、今までの2chステレオの音との違いをオーディオ的な言葉で表現することは、残念ながら私には出来ません(泣)

例えば、先のユニコーンの音は、自分のシステムに比べてオーディオ的にどうのこうのと比較することは可能なのですが、トラバドールの音はオーディオという括りの範疇にはない、未体験ゾーンの音なので、比較対象が出来ないのです。

それでもあえて比較の対象物を探すとすれば、それはどこそこのホールであり、楽団や演奏者の表現の違いのうんぬんといったことしかないのではと思いました。クラシック音楽の豊富な実体験と、高度なオーディオスキルがあってこその再生音であることは間違いないと思いますが、クラシックファンの一人としてはあまりにも衝撃的な一夜になりました。

GRFさん、貴重な体験をさせていただきましたこと、改めてお礼申し上げます。

今までにも何回か、家の音を聞いていただいているチューバホーンさんも、今回は、相当驚かれたようです。今までは、同じ方向を目指していたのですが、今回は、コンサートーホールと近接ライブハウスの異なった方向に音を変えてみたからです。家でお聞きになられて気に入られたCDは、ほとんど求められておりますから、今回掛けたCDが今までの音の範囲ではないことはすぐに解られました。オーディオ的な強調が無く、音が素直に伸びてきます。夕方、こられてかえられたのは、深夜を回っていました。近くだから、問題は無いのですが、アルコールが入らず、4時間近く音、音楽に集中したのは初めてでした。一緒に、聞いていて、音楽を途中で止められないのです。故に、いきおい試聴する時間は長くなります。

夜香さんの新しい音

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家を出ると雨は本降りになり、地下鉄の駅までで上着はびしょびしょになりました。新宿駅の構内を横断して、半分代々木のホームから湘南ラインの篭原行きに乗りました。ホームで780円チャージされて二階建て車両に乗り込み、ゆっくりと流れる外の雨の風景を眺めていると、今日は休日だとの実感がわいてきました。

今日は、七月に電撃的に永年愛用してきたATCをJBLのオリンパスに替えられた夜香さんのお宅を訪ねます。二階建ての車両は、線路の音も聞こえずゆっくりとそして静かに走っていきます。大宮を過ぎると各駅停車になり車窓に田園地帯が見えるようになります。約束の篭原駅を下りると、夜香さんが改札口で待っていてくれました。先にお車で到着されていたAionさんと合流、早速、VOLVO S60T4Rから乗り換えたばかりの新車S60D4 Dynamic Edに乗せていただきました。明るいベージュ色の車内は雨の日でも明るく気分が晴れます。走り出すとすぐに圧倒的なトルクに驚かされました。4リットル以上の大排気量車のようにぐいぐいと引っ張られるトルクにおどろきました。街を出ると雨に煙る田園風景はヨーロッパの田舎道のようで、そこを容赦なく進んでいく車の力強さに、音を聞く前に車に感動しました。

また、近くの中華食堂でお薦めの定食を頼むと、今度は値段の安さにもビックリ。東京の半分でしょう。このあたりは中国の人がどんどんお店を出して価格競争になっているとのこと。静かな農村地帯にもグローバル化の波は押し寄せていると実感しきりです。

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夜香さんのお宅訪問は、12年の7月以来ですからもう四年も経っています。あの時は横浜のMさんと来て大変楽しい時を過ごしました。私の数ある訪問記の中でも忘れられない経験です。お客様を迎えるときの気構え、準備に掛ける入念な気配りを学ばさせていただきました。部屋の入ると、そのオリンパスの勇姿が目に飛び込んできます。思ったより小振りに見えるその姿は、それ故にそこはかとない品が感じられ、高精度の格子細工が見事な芸術品ですね。音を聞く前から、これは良い音がするに違いないと予感に充ちていました。

夜香さんの、お客様を迎えるときの気配りは特別です。ピッタリと揃えられた、装置の配置だけでも音が予感されました。Aionさんにソファーに座っていただき、私は後方から聞かせていただきます。最初に掛かったのは、辛島美登里のサイレント・イブでした。真っ白な粉雪が♪と掛かったとき、私の頭も真っ白になっていました。

壁一面に音が拡がりあたかも、OLYMPUSの上に乗っているELACのSPが周囲に音をまき散らしているように、音が上に拡がっているのです。以前とATCの間隔とほとんど同じなのですが、横長のそれも低い位置から出てくる音だとは、にわかに信じられません。JBL特有のきつくなる音もなく、どこまでも柔らかく、スムーズな肌さわりには、横浜のMさんのところのパラゴンで経験済な筈なのに、ConeQの音のマジックに魅了されます。おもわず被り付きまで行ってその圧倒的な定位の良さを確かめに中央のマッキントッシュ2600の前までいってどこから音が聞こえるか確かめたほどです。

参りました!これは凄い音です。

スクリーンの収納を考慮して、後方の壁から20センチほど離れているのも、音離れの良さに貢献しているのかもしれませんが、その広帯域のどこまでも力強く優しい音に痺れました。私の目指しているクラシックのコンサートホールの空間を再現する音では無く、JPOPSやヴォーカルのレコード、CDを聞きやすく、迫力を持って目の前に展開する音では、最高峰ですね。横浜のMさんと同じユニットなのですが、パラゴンのエネルギーが集中するサウンドではなく、柔らかく甘い低音で静かに包み込まれて、ヴォーカルや楽器の実在感を見事に表現しています。

脱帽です!

夜香さんは、何時も言われます。第一曲目でどこまで、聞く人の心を摑めるかと。今回もがっちりと掴まれました。完璧ですね。この様な音が掛かるのだとしたら、オーディオはどんなに楽しい趣味になるでしょう。こちらまで嬉しくなりました。二曲目は、安全地帯のTo meがかかりました。どうしたらこの様な音が出るのか、いろいろと聞きたいことは山ほどあります。フォーカス間が凄いです。一番前まで行って竹内マリアの告白の電話のベルがなりました。これは自然です。そして、甘い竹内マリアの声を支える、おそらく打ち込みの打楽器の定位感。これがびっしりと決まります。中央の一番前、パラゴンで言えば中央パネルの直前10センチの位置でも、音の定位はピッタリで音像がぼけません。

参りました。

竹内マリアもここまでの音が掛かれば言うことはありません。横浜のMさんのパラゴンの音がしてきます。定位の立ち方が凄いのです。次ぎに夜香さんが出してきたのが、Jazzの定番のHelgen Lien TrioのSpiral Circleというアルバムから、良くデモンストレーションで掛かるTake Fiveです。目の覚めるようなハイカットが鳴り響き、ドラムの音が目の前に炸裂します。Piano Trioが目の前で演奏している様です。この手の音は本当にJBLの独壇場ですね。LE15は40までしか出ていないし、075は15,000以上はびったっと出ていないそうですが、40~15,000の8オクターブ以上を完璧に出していますから、オルガン曲以外は掛からない物はないでしょう。

しかし、それで音がきついことは全くなく音楽が楽しく聴けます。一番大切なことですね。次はヘレン・メリルのユービー・ソ-・ナイス・カム・ホームです。これは彼女の暗い音をずーっと聴き慣れた耳には、少しモダンすぎるかなと思いました。でも、クリフォード・ブラウンのトランペットは輝きとても良いですね。

この音の秘密はどこから来ているのでしょう。そこで、この3ウェイはどの周波数で繋いでいるのかと尋ねると、言下に500ヘルツと7キロヘルツ以外には無いと断言されました。ここまで言い切るには、どれほどの数値を試したのでしょうね。数限りないチャレンジをして、やはり指定通りの音が一番だと確認する事は大切です。途中でConeq無しの音も聞かせていただきました。それも良いのですが、少し暗くなり、音が沈みがちになります。どこかに昔のジャズ喫茶の音がしました。それがconeqが入ると明るく音が拡がり、上に立ち上ります。

それまで、ずーっと聞かれていたAionさんも、とても嬉しそうに、現代技術と伝統あるスピーカーの融合だと言われました。前のATCの時は、ときとして堅い音も有ったけれど、今回は音は柔らかくヒューマンな感じがしてすばらしいといわれました。私も同じ感想です。明るくて柔らかいそれでいて必要な音は全部聞こえていると思いました。横浜のMさんのところでも、前回の夜香さんの時よりも、今回のconeqの効果には驚き、とても好意的に感じました。

ここで休憩です。お車で来られたAionさんには清涼飲料水、我々は、持参の赤ワインを開けました。私もAionさんも部屋にピッタリと収まっているオリンパスの勇姿にほれぼれと見つめています。近くによって綺麗な格子をみつめていると、格子は檜だと言われました。そうなるとこれは日本の伝統の格子技術が使われているのでしょうね。SPの後ろが少し開けているのは、音の為なのかとAionさんが聞かれると夜香さんは、それはスクリーンが下りてくる隙間だと言われます。でもその為に音にも奥行き感が出ていると思いました。

Aionさんは音の切っ先が軟らかいと表現されました。尖った音がしないと。楽器の音は全て柔らかい音です。どんなに衝撃的な音がしても、楽器としてなり立つためには、きつさだけではダメで奥行きのある柔らかさを持っていなければなりません。それがオーディオだと、きつい表現、シャープさだけを求めがちです。この音には、そういう未熟なところが無くとても熟成されたヒューマンな音がしていると表現されました。竹内マリアの告白の最初の電話の音は、電子音だから似ていて当たり前ですが、きつさが無く柔らかなとても自然な音がします。

夜香さんは嬉しそうに、きのうから皆さんをお迎えするのに0.1dbごとに細かく調整をされてきたと言われました。この気配りが素敵ですね。Aionさんのお顔と私の顔が交互に浮かんできて、どこが落としどころかと悩まれたそうです。やはり夜香さんの怒濤の攻撃が更新されていく日記の端々にも表れていましたが、この集中力がこの音を出されたのでしょう。

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お酒が入らぬ前に、この音を出している構成をお聞きしました。NASに入っているファイルから、LANを通してOPPOでアナログ化します。愛用のマッキントッシュの34Vでコントロールされて、ASHLY XR1001というチャンネルデバイダーで3ウェイになり、LE15の低音は、これも愛器のMC2600。375の中音用と075の高音用には、片側づつTHOMANNのS150MK2という、何と一台3万円のアンプで駆動されているのです。

音を聞いてとても3万円台とは思えません。何でそんなに安いのでしょう。中を見るとと手もお金が掛かっている部品を使っているのでプロである夜香さんが驚かれているぐらいです。これは、夜香さんの作戦勝ちですね。075の素性の良さが引き立ちます。Mさんが言われるように、ネットワークを通じて075や375を使うと砂を噛むような音が出てしまうのです。この様に、チャンデバもアンプも三万円でも、全く蘇るようにすなおで柔らかく、迫力有る音が出て来るのです。

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しかし、低音がしっかり出ていなければ音楽に為りません。500までを受け持っているLE15とドローンコーンの役割はとても大きく、この柔らかい音の音質だと感じました。堅くなったエッジを秘密兵器のゴム柔軟剤を染み込ませると蘇るそうです。オリンパスの小さめのエンクロージャーにきっちりと、375と075を配した配置の妙もあります。ちなみに大きさは、先日まで使っていたタンノイのヨークを寝かすとそちらの方が大きいそうです。音の秘密は、075の15k以上は全く出てこない事にもありそうです。2405と違って振動板自身が15K以上を出さないように設計されているのでしょう。その余分な音を出さないと言うことがどうやら大事なようです。

そして何と言っても、この音の秘密は、coneqに有ります。入念に測定してこの部屋と聞かれる音楽にターゲットを絞った調整は、音に深みと高さを与え、壁前面を音で埋めます。LE15のユニットは、やはり永年の経過で特製が異なっていたそうですが、coneqはその差をピッタリと埋めて、後からではどの様に違うのか全く解りません。

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coneqの調整は何回か聞かせていただきましたが、今回が一番上手くいったようです。ヴィンテージ物の特性でしょうか。以前使われていたATCやTANNOYの時よりもconeqの効果が大きいようです。これに奥行き方向の音場もでれば私も考えなければなりません。現在は奥行き方向も何回か測定して、そういう要求にも応えられるような開発も行われているそうです。

話が進むと同時にワインも刻々と香りが開き、味も変わって来ます。SPと同じですね(笑)。私はズーーとJBLを使ってJAZZを聞いてきた人達に、この新しいJBLの音を聞かせてみたいと思いました。それはMさんおパラゴンと同じ感想です。人によってはJBLの音では無いと拒否される方もおられるでしょう。それでは、美味しい花開くワインを冷蔵庫に入れてそのまま飲んでいるようなものだと、もったいないとつくづく思いました。

Hさんの熟成してきた音

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今週は、変則的な秋の連休の週ですが、例年のごとく、また例年以上に雨が続きました。先々週の週末満員の北海道から帰ってきたら、チューバホーンさん、お墓まいり、雨の銀座ヤマハホールのタカーチ弦楽四重奏楽団、電車に乗っての夜香さんの訪問と予定が連日つづき、なかなか秋葉原のHさんのところにお邪魔できませんでした。前日、夜香さんからのお宅から帰り道、送って頂いたAionさんお車のなかで、酔っ払って寝ていると、大山さんから連絡があり、無事に特注ラックがHさんのお宅に入り、音が良くなったと連絡を受けました。

翌日の夕方もまた雨。週末の夕方の雨の電車は大変なので、車で向かいました。まだ仕事の時間帯ですから、打ち合わせをしながらいくと、いつの間にか秋葉原に着いていました。神楽坂から新しく出来た道で、後楽園を突っ切り、そのまますすむと秋葉原のHDXビルの横に出ていました。むかし、青果市場の跡地の駐車場時代はよく秋葉原に車で来ていました。その頃はここに車を停めていました。もう二十年以上前の話ですが・・・Hさんの隠れ家は、そこからほど近いマンションの中です。

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待ちわびていたHさんにすぐに案内されると、部屋の中央に昨日入った大きなラックが鎮座されていました。家の和室で使っているマグネフロートを組み込んだラックです。大きさはGRFの部屋の方の機器類が三台並ぶ大きさのラックに、フローティングボードを組み込みました。Hさんの要望で、ラックの板厚を倍の60ミリにしてあります。ラックの天板の形状は、薄く見えるように工夫をしてありますが、本当の厚さは、二段目に入っている厚い板の厚みです。凄いですね〜。Hさんは音がまったく変わったと興奮気味です。私も、その出来映えを見させていただき、このタイプにしないと行けないと思いました。

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早速音を聞かせて頂きました。ほう〜、これは変わりましたね。音の深みが増し、ステージの実在感が一気に増えています。やはり左側のラックに入れていたときは相当音が引っ張られていたのでしょう。床からのフィードバックが減って、音の精度が格段い上がりました。上部のフローティング部は見えている部分は薄いのですが、実際は30ミリ以上もあるしっかりとした合板です。それをネオジウムの強力な磁力で浮かしています。今回は30キロの負荷に耐えられるように磁石の数も増しているそうです。二段目の棚にもそのフローティングが入っています。詳しいお問い合わせはPSDの大山さんに聞いてください。私も作っていただかなければ!

この状態でしばらく聞かせていただくと、やはり中央にきたラックのおかげで、より正確な音場の再現が可能になってきました。いままでの左のラックに合わせていたSPの位置調整を見直さなければなりません。思い切って左側のSPを20mm程前に持って来ました。 大きな調整値です。そして、右側のSP都の位置を微調整します。それと、Hさんが用意してあったシャンパン用の高級なコルクを輪切りにして、トラバドールの下に敷いてみました。やはり、これが変わりました。再度微調整をして聞くと、驚きました。ほとんど私のところと同じ音が出て来たではありませんか!音量を上げると部屋の定在波の影響が出て来ますから、いままでより一時間ぐらい小さな音量設定で聞いてみました。

12時前後の音量でも音が浸透してきます。家で苦労して開発してきた同じ音が、そのまま再現されているのは、開発者としては最大の喜びですが、個人としてはとても複雑な思いです(涙)。50年間培ってきた全ての経験とノウハウが、寸分も違えず再現出来ているからです。Hさんの追い求め方は理想的です。自分がこれと決めたら迷わず、その通りにやってみる。弟子入りして師匠のやり方を学び・盗むことが最良の方法なのです。emmのCDプレーヤーとDAC。シンプルなSD05の採用。そして私と大山さんで一年がかりで開発してきたTW3。それらを迷わず模倣をして、一つずつ自分の身につけ、その中から自分の音を見付けていくという事を実践して短時間の間に、わたしの50年分のノウハウの結果を得たわけです。

定番のCDをいろいろと掛けてみました。あまりにも家の音と同じなので、Hさんは喜び、わたしは複雑な気持ちでした。良い面もあります。うちより部屋が反射するので、小さな音量でも朗朗と鳴ります。反面、音量を上げすぎると部屋の定在波が鳴り始めます。とくに地下ピットの共鳴振動が聞こえてしまいます。でも、家でなっているSD05より良い音がしています。SD05のファンは一度聴いて欲しいほどです。

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GRF様

本日は、本当にお忙しい中、わざわざ秋葉原まで、来て頂きありがとうございました。

昨日、SD05用のテーブルが大山さんに作っていただいたものが出来上がってきました。写真のように、スピーカーの前にやっと設置することが出来ました。天板は6cm厚、天板上にリラクサのようなマグネットのフローティングしている3cm厚のものが組み込まれています。完全なオーダーメイドです。下の段には同様のフローティングセットが2個設置してあります。それぞれ、SD05、emmのCDプレーヤー、LINNのKlimax 、IOデーターのハードディスク、下段には、emmのDAC、PCオーディオの電源を配置しました。

以前、左のスピーカー側のオーディオラックに全て設置していたのですが、スピーカーの前に持って来たことで、まず、音が変わりました。当たり前といえば、当たり前何でしょうか。それから、天板厚6cmの完全オーダーメイドのテーブルに機器を設置したことで、まず、音の安定感が得られました。さすがに、天板厚6cmの威力はすごいです。特筆すべきは、ピレスのモーツァルトが、今まで、ピアノの弦がむき出しの音のように聞こえていました。それは、それなりに、生々しいピアノの音でした。しかし、このテーブルの上に設置したことで、ピアノの響板や側板などのピアノ全体の響きが出て来ました。実在感が違います。

私としては、これで完璧と思っておりましたが、GRFさんに本日来て頂いて聞いていただくと、開口一番、左が、奥に入っている、少し調節しましょうと、いつものように、スピーカーの調律をやって頂きました。到底、私には、そのような現象すら掴めていませんでした。何とのんびりした聴き方をしていたものかと、反省致しました。

GRFさんが来てくれたこのチャンスを待っていた私は、すかさず、シャンパンのコルクを差し出しました。トロバドールの下にコルクを敷くためです。約2mmにカットしていただいた物を、トロバドールとウーファーの間に敷きました。それは、GRFさん宅の音は、このコルクによって、凄まじく音の改善がなされたとの事であったためです。そのため、この日の来るのを待っておりました

そして、この時、トロバドールがなっている時に触って、いろんなところが振動している事に気付きました。そんな単純な事が今まで、なぜ、分からなかったのか。その制動が、音の改善に繋がることは当たり前ではないか。その事に考えが至った時、自分がいかに、漫然と音楽を聴いていたか、思い知らされました。

もう一度、ピレスのモーツァルトを聞きました。今までも、生々しい音でしたが、よく考えてみれば、色彩で言えば、モノトーンの白黒の映像を見ていたようでした。なぜなら、このコルク敷く事で、色彩の鮮やかな画像に変化したからです。こんな綺麗な画像がくっきりと映し出される音を聞いたのは、初めてでした。いや、今、最高のピレスを聞けております。

次に、シュライヤーの冬の旅をを聞きました。もう、そこには、等身大の彼が、我が家に来て歌っているではありませんか!音楽を聞くのにこれ以上の何が必要と言うのでしょうか。

思えば、私は超ラッキーでした。GRFさんを、Sさんに紹介して頂き、GRFさん宅の音楽に驚嘆し、その音楽への情熱、努力を垣間見て、その音楽の世界に近づきたい一心でここまで来ました。今のこの家の音は、GRFさんも認めてくれました、GRFさん宅の音がしていると。私は、GRFさんの弟子として言われることをほぼ実行して、多大なご指導、ご協力を得ながらから、ここまで来ることが出来ました。GRFさんの長いオーディオ人生の究極の結果を共にさせて頂けて、オーディオ人生を堪能させて頂いております。この場をお借りして、GRFさん、Sさんありがとうございました。今後とも、よろしくお願い致します。

H

私もとても嬉しいですね。同じ音が別のお宅でも再現されていることは、再現性があると言う事ですから、普遍性を証明していただきました。しかし、同じ機器を揃えても、そのままでは同じ音は再現しません。最後の調整をどの様にするかを考えています。

GRF邸で聴いた「スピーカーの存在が消える音場感」

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クラシック音楽とオーディオに造詣が深いマイミクのGRFさんから「一度、わが家の音を聴きにきませんか?」とお誘いがあり、9/24に上京してお宅を訪問してきました。私はクラシック音楽は大好きですが、オーディオに関しては知識には疎く、感想を書くのはちょっと恥ずかしいのですが、とりあえず感じたことを書きたいと思います。

私が自宅で使っているオーディオは、GRFさんと比べると恥ずかしいような標準的なものです。本物の音は実際にライブの音をコンサートホールへ聴きに行けばよいと思っていました。しかしGRFさんの御宅の音を聴いて、ホールと同等の音響がオーディオで再現されていたことの大変、驚きました。GRF邸には2つのオーディオ・ルームがあり、それらにはよく調整されたスピーカーが設置されています。この2つのスピーカーは360度に音が出ることです。一般的な2次元に音がでるものとは設計コンセプトがまるで違っています。

・6畳の和室のジャーマン・フィジック社のユニコーン

・40平米ぐらいの洋室の同社のトロバドール80

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午前中は和室の音を聴かせていただきました。ユニコーンという名称は、そのスピーカーの姿が「一角獣」を思わせるものだからでしょう。最初に掛けられたのはピアノ・トリオのジャズのCD。最初のコントラバスの一音の「量感」にまずビックリしました。見えないはずの音が塊のように見えた。目の前でプレイヤーがボンボンと弦を弾いている姿が感じられます。まさにライブハウスの音。スピーカーが鳴っている感覚ではなく、和室そのものが本物のスタジオのような音場感。

私がビックリしていると、さらにサイモン・ラトル指揮&ベルリン・フィルのベートーヴェン作曲・交響曲第4番のCDが掛けられました。またビックリ。木管の音がよく立っています。それらの音が高い位置から聴こえてきて、微妙なニュアンスもよく感じられます。再生された音楽でこのような音を私は聴いたことがありません。

次にGRFさんはユニコーンについているボタンを操作しはじめました。するとサントリーホールの1階席のステージ前で聴いているかのような音場が、音源が遠ざかりもっと後ろの席で聴いているような感じになりました。音域別によるエネルギー分布を変えることで、このようなことが可能だそうです。よく考えると、音も性質によって反射の仕方が違うので、高域の音が聞こえやすい場所、全体の音が混ざりあった音がする場所など、席によって聴こえてくる音の特性があるので、そのようなことができるのでしょう。GRFさんは音域のエネルギー分布に変えることで、コンサートホールやライブハウスなど様々な仮想空間を作って楽しまれているようです。普通の和室でこのような音が再現できるなんて心底、驚きました。

そのあと、白井光子が歌うブラームスの名歌「野の寂しさop86-2」を掛けていただいた時、目をつぶると目の前に歌手が立っているかのような錯覚を覚えました。音響だけでなく、音源となる演奏者の姿まで映し出してしまうとは本当に究極のオーディオです。

スピーカーの正面に座らせていただいて、ジーッとスピーカーを観察していて気づいたことがあります。左右のスピーカーのメープルの根で作られたというボックスの柄が左右対称になっていたことです。これは同じ木から切り出したパーツが左右が対称型になるように慎重に組み立てられたことを意味します。すごい手間です。スピーカー内部の密度感が均一になるような配慮です。これならスピーカーそのものから出る音のバランスもよいはずです。まさに左右の箱は双子といっても言い。こういう手法は建築の石貼りでも見られます。水戸芸術館にはオニックスという石の柄がそのように左右対称に見えるように貼られています。このスピーカーはドイツの職人魂を感じさせますね。

もうひとつ気づいたのは、傍らに見たことがあるCDプレイヤー(マランツCD34)が置かれていました。これは30年ぐらい前に私が最初にかったCDプレイヤーです。懐かしいなぁ。でもよくよく訊いてみると、中身はスーパーカーのように改造して、音はベツモノらしいですw。

ユニコーンに驚愕している私に、GRFさんは「驚くのはまだ早い」というような表情で、ランチを食べに行こうと誘われ、近所のイタリア料理店でパスタをご馳走になりました。その時、オーディオ歴50年の話などをいろいろ伺いました。

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ランチの後は洋室に移ってトロバドール80です。部屋はおよそ40平米ぐらい。ヴェルディ作曲のオペラに「イル・トロバトーレ(吟遊詩人)」という作品がありますが、そのスピーカーの風貌も羽つき帽子を被ったかのような吟遊詩人と重なって見えてきます。

トロバドールは壁から3m程度離された位置に置かれています。最初、午前中に和室で聴いたのと同じベートーヴェン作曲の交響曲第4番が掛けられました。トロバドールが鳴った瞬間、私は「刺し身のよう…」と思わず失礼なつぶやきを無意識に言ってしまいました。これは鮮度がよく、まるで生きているようなな…ということです。この演奏が、今、そこで演奏されている生の音のようというニュアンスでした。機械が出している音とは思えなかった。そして驚いたのはスピーカーから音がするというよりも、部屋全体の空間が鳴っている感じです。音楽専用ホールに座っているかのような思いです。全方位型のスピーカー、恐るべし。ユニコーンよりも音が鳴っている全体の空間のイメージがよく分かるような気がしました。

するとGRFさんが「聴く位置を替えると音が違って聴こえるから試してみて…」というので、部屋内を動き回ってみると、正面の椅子ではサントリーホールの1階中央のSS席ぐらいの定位感だったのに、壁の側面に行くと2階RA、LA席の音に聴こえるし、背面に移るとP席の音がするのにはビックリでした。それぞれの楽器の音が分解されて細かいニュアンスが明快に聴き取れます。

次に聴いたクレーメル&アルゲリッチのプロコフィエフのヴァイオリンソナタ第1番では、演奏者の演奏する様子が立体映像のように浮かび上がるように音が聴こえてきます。演奏者の息遣い、弦の倍音、ビブラートをする右手、フラジオレットの弓使いがみえる。音が映像化してる。

その後、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」の冒頭の低弦の符点のリズムで始まる箇所をいろいろなCDで聴き比べ。弱音の中で振動のような微妙な音の違いが明瞭に聴き取れます。私はヤンソンスとRCOのキレがある演奏が気に入りました。

マリア・ジョアオ・ピリスが弾くモーツァルトの幻想曲は同じ録音を異なる3種類のCDで聴きました。1枚もの、廉価版のBOXセットの2種。聴いてビックリ。音の厚さとコクが全然ちがう。これはCDに焼き付けられている情報量の違いだそうです。トロバドールから響くピリスのピアノの音色が微妙にちがっていて、細かいニュアンスまでが鮮明に聴き取れます。ピアノのいち音いち音が言葉になっていることがよく分かりました。私の安スピーカーでは聴き取れないと思います。

GRFさんが中央の窓の吸音効果があるドレープを少し開けると、出窓奥にある音の反射面のガラスが威力を発揮し、より正面からの音が響くように感じられました。コンサートホールは入場者の数などによって音が変わりますが、このトロバドールの部屋も家具やドレープ、スピーカーの位置によって音が変わってきます。GRFさんは今、かかっている音楽に合わせてそれらを微調整しながら、最良の響きになるように常に動いていました。ちっと変えるとすぐ音響が変化するこの音空間は、まるで生きているですね。

私は建築の設計の仕事をしているので、この部屋をつくるにあたって工夫したことをいろいろ聴かせていただきました。遮音を厳重にすることは必須、それとスラブ振動がオーディオルームにに伝わらないように、部屋が躯体から縁が切れるように床下地材を構成したこと、音と部屋が共鳴しないように壁の下地材の貼り方を工夫したこと、音響効果を考えた吸音材の布置など、いろいろ訊いて、ガッテンしました。

GRFさんが余興として、いきなりフランク永井のCDを掛けました。トロバドールがつくる音場感がまったく変わってしまったのでビックリ。ムード歌謡が二次元的な音になってしまい、はじめてスピーカーの存在に気づいた感じがしました。これは録音方法が全然ちがうので、このような音になるそうです。

スピーカーからの音がその部屋を楽器化したように音を鳴らすというのはまさに至高の域と言ってでしょう。私はGRFさんに「ここまで来てしまったら次は何処へ行くのですか?」と訊くと、「ほぼ満足な音が出てきたので、好きな音楽に没頭できそう…」という答えでした。キュビズムの画家のジョルジュ・ブラックの「当初の構想が消え去った時、絵画ははじめて完成する」という言葉がありますが、GRFさんもほぼ同じ境地ではないかと想像しました。

そろそろ失礼しようとした時に、「ちょっと一杯どうですか?」と赤ワインを用意していただきました。「かんぱーい」とグラスを軽くタッチしたら「ゴーン」という聞き慣れた音がしました。私、思わず「これはリーデルのグラスですね!」と言ってしまいました。もちろん当たり。私が使っているグラスを同じだからです。リーデルのボルドーグラスは香りが外へ逃げないようにするために、グラス内に香りが籠もるような断面になっているので、「ゴーン」という鐘のような音がするのです。GRFさんと私のオーディオの音は天と地の差がありますが、グラスの乾杯の音だけは同じでした(笑)

帰路、聴かせていただいた白井光子が歌うブラームスの名歌「野の寂しさop86-2」を思い出しました。「美しい白い雲は遠くへ流れ、深い青さは、まるで美しい静けき夢のようだ。私はまるでずっと昔に死んでしまっていて、永遠の空間を幸せに漂っているかのようだ。」という歌意だったと思います。録音する時に消えてしまった音が、トロバドールによって再び命を与えられ、GRFさん宅の空間を幸せに漂っているイメージを持ちました。

すばらしい音を聴かせていただき、ありがとうございました。

マイミクで、紀尾井ホールでも良くお会いする、エビネンコさんが、土曜日、高速バスに乗って私のうちの音を聞きにきてくれました。音楽にとても造詣が深く、今回の訪問記でもオーディオファンとはやはり観点が違います。初めて聞くオーディオなのに、的確に家の音の特徴を捉えて表現していただきました。とてもうれしいです。オーディオファンの方と話すより遥かに楽しかったです。エビネンコさんも楽しんでいただけたようで楽しい週末を過ごす事ができました。

12月には、ポゴレリッチを聞きに水戸まで遠征します。今度は運が良ければ、皆さんとアンコウ鍋を突っつけるかもしれません。楽しみです。

賢者の選択

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先日、湘南ライナーで篭原まで行き、そこで待ってていただいた夜香さんの新しいVolvoのディーゼルに乗りました。明るいベージュの室内で、ボルボらしく質素だけど実質的な車内のつくりや、圧倒的なトルクの走行に感心しました。前の車は、毎日100キロぐらいの通勤に使われていたので、三年間で7万キロぐらいだったそうです。そこで、ガソリン車から力のある熟成したディーゼル車に換えた決断力と、経済力に驚きました。しっかりした会社の管理職ですから、購入出来て当然ではあるのですが、オーディオの方もSPを高級機に換えられたばかりなので、つい下世話な心配をしてお聞きしました。

すると、私は節約していますからと自信を持った回答です。しかし・・・と、思いながら昼のランチをとりに近くの中華料理屋さんに入りました。ランチメニューは、麺類とご飯どんぶりが二つセットになって680円という安さです。思わずどうしてと聞きました。すると最近はこのような中国系の人が経営する中華定食屋さんが増えて、競争しているので味もまあまあだし、何しろ安いと嬉しそうです。節約の秘密ですねと高笑されました。美味しくて安いお昼をご馳走になって、気分はハイになります(笑)。

今日のお目当ては、二ヶ月前に突然?購入されたJBLの往年の銘器オリンパスです。パラゴンと同じ構成で、LE15と375に075の定評ある組み合わせです。いずれも、50年以上の前の製品ですね。いまだに使えるのが不思議なぐらいですが、ウェスタンからの基本を押さえたホーンドライバーやウーファーは時代が変わってもびくともしません。横浜のMさんが、ネットワークを外して、マルチアンプにされて、その音を生き返らせた音を夜香さんは、何度かお聞きになったのです。美しいパラゴンから聞こえてくる極めて広帯域のひずみの無い音を。

私も何回も聞いていますが、ヴィンテージのJBLからは決して聞こえてこない音がMさんの音です。その音に感銘を受けた夜香さんが熟慮の上に選んだのが、パラゴンと同じユニット構成のOLYMPUSでした。格子造りの美しいキャビネットに上向きに設置されたLE15、2インチのドライバーの375、そして定評ある075のホーンツイーターです。それらをキレイに鳴らすだけではなく、実在の人が鳴らしている生きた音が鳴っているのです。色気が大事だとMさんはいわれます。ひとが奏でている魂の入った生身の音がしなければなりません。

横浜のMさんは、若い頃に演奏会場でのPAの音作りにも関わってこられました。ステージ上で気合いの入った音を聞き、それを如何に聴衆に伝えるか、エネルギーに満ちて、魂も入った音楽を伝える仕事をされてきたのです。その経験とノウハウ活かし、普通のパラゴンからは決して出ない、ゴージャスな音を出しているのです。

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夜香さんが、そのMさんの音の洗礼を受けて選んだのが、パラゴンと同じLE15/375/075のユニット構成のOLYMPUSだったのです。夜香さんの以前の装置は、モニター用として開発されたATCのモニターSPのSCM100でした。硬派の代表ですね。それと、使わなくなったチェロのプリアンプと交換が出来ました。少しおつりが来たそうです。そうして、チャンネルデバイダーや中高音用のパワーアンプには、何とプロ用だけど、極めてコストパフォーマンスが良い、なにしろ一台三万円台という機器をご自分で改造して使われているのです。

要するに、オリンパスを使ったマルチチャンネルの3ウェイに、ほとんど出費無しで交換できたわけです。そこには、coneqという魔法の機器の存在があります。部屋の周波数特性、左右のユニットの差の補正、部屋の特性を補正して位相を合わせます。JPOPSに代表される、スタジオで作られた音楽を豪華に再現するには、もってこいのツールなのです。coneqを外して聞くと、やはりオリンパスにおとは集中して、少し暗めの聴き慣れた60年代の音がします。SPから音は出てくるのです。しかし、イコライザーを入れた瞬間、おとは壁一面に立ち上がり、40〜15000まで過不足無く、明るい音で壁全体がなります。SPが前に行っている分、奥行きも充分で、クラシック音楽を聞くにも問題ない音が出ています。

何よりも私が驚いたのは、竹内マリアの告白を聞いていたとき、SPの前面と同じ位置のラックの前まで行っても、目の前から音が出てくるのです。鳴っているSPはホーン型の075と375です。ホーンの前面からは完全に外れているのにです。和室のユニコーンのSP間に頭を入れて聞いている様な定位感が、50年前のオールドオリンパスから聞こえてくるのです。恐るべしconeqですね。

だからといって、いまやっている360度の音場型とはまったく違った音です。だから楽しいのですね。横浜のMさんの豪華な音。UNICORNさんのお宅で最初に聞いたユニコーン、そして岡山の是枝さんのところで聞いたHartleyが、本当に驚き、その後自分もやり始めた音です。今回の夜香さんの音もその中に列せられる音であることは間違い有りません。大量のJPOPSのレコードが生き返る予感がします。

断捨離の真似をはじめたのに、手持ちのSPで実験して見るしか無いですが、楽しみがますます増えましたね。私の場合は、賢者の選択にはならない事は解っているのですが・・・

ようやく次の車が

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雨が続いていた9月の連休の間の火曜日の午後、ようやく時間を見付けて近くのVWディーラーに用意して貰った、懸案の2.0Lのパサートの試乗に出向きました。去年の大スキャンダル以降、日本に入ってくる予定だったVWグループのディーゼル車は全く影を潜めました。VWだけではなく、Audiもポルシェもディーゼル車は御法度になったのです。何年も前からVWジャパンは、ゴルフ以外の車の戦略を小排気量の経済性に絞って、大型のシャランまで1400ccのダウンサイジングになってしまいました。それ故、Golfでは残っている2リッター車を大型のパサートからも外してしまったのです。

その段階では、経済的で力の必要とする長距離用には、いよいよ定評あるディーゼルエンジンTDIを持ってくるつもりだったのでしょう。事実、2015年の冒頭の導入予定車のなかには、はじめて2Lディーゼル車の名前も載っていたのです。仕事で、ドイツやオランダによく行く私は、レンタカーがほとんどディーゼル車になっている実情をよく知っています。去年のスイスのA5も、13年の時のドイツの旅のA6も、ディーゼルターボ車でした。圧倒的なトルクで、アウトバーンを快調に飛ばすことが出来る、ディーゼル車の優秀さを知っています。車内では、ディーゼルの音も全く気になりません。

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ところが、肝心なときにそのディーゼル車で大スキャンダルを起こし、その時点では日本には正式には一台もディーゼル車は入っていなかったのに、ヒステリックな日本の消費者の目を気にして、ディーゼルの輸入をやめてしまったのです。VWは日本以外の国では、直後は影響があった売れ行き減も、最近は回復してきて、地震の影響があったトヨタを抜いてまた世界一の座を射止めているのですが、日本では、売り上げはほぼ半減しました。VWJは、有効な積極策を出せないままに、BMWやボルボ、ベンツ、最近では、プジョー・シトロエンにも、どんどんとディーゼルを導入されて、シェアを落としてきたのです。

私は、パサートには、元から有る現在も使い続けている2リッターのターボ車をディーゼルの代わりに復活すべきだと主張してきました。経済性ばかり追わなくても、充分性能も燃費も良いのですから。しかし、現状の14.リッターでは、やはりギリギリの性能ですので、長距離を移動する私には、その余裕の無さが、疲労に繋がるように感じました。待望の2リッターターボが復活すると聞いて,その試乗を楽しみにしていたのです。

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今回の2Lターボは、AudiのA4で言えばFF車の方の経済性も追ったバージョンで、quattro用に使われている252ps(185kW)/(370Nm)高性能版ではありませんでした。これは10年前にロムチューンした私のパサートと同じ数値です。今回の数値は、220PS(162kW)/ 350Nm の方ですが、1.4リッターの150ps(110kW)/250Nmよりは遥かにパワフルです。排気量の差がそのまま数値に表れています。実際に乗ってみると、14.リッターで動く車に、2リッターを乗せているわけですから、その差は全部余力となって表れます。最初からこのヴァージョンを発売してくれれば、この一年半悩まないでも済んだのに、VWJを恨みました。

出足も違いますが、何よりも大きいのは、走行中の加速力です。前の車をよけたり、追い越したりするときの余力がまったく違い、1.4リッター車に感じていたフラストレーションは、全く感じませんでした。だが、問題は違うところにありました。それは、スポーツタイプといわれるR-Lineの仕様です。一番の問題はシートです。スポーツタイプなのでしょうか、持ち上がって支える部分の材質は炭素線維です。バケットがきつく底の部分も皮で滑りやすいのです。安っぽいロゴも理解できません。私は、現用のファブリックのシートが一番だと思っています。少なくても、ハイライン用の普通の皮シートにして欲しかったです。VWジャパンの企画の人間は、パサートを購入する人達のリサーチをしているのかと疑います。現場の営業マンも同じ感覚のようです。他のお客さんからも同じ事を聞いているからです。

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それと、R-Line仕様でやり過ぎなのは、19インチの重いタイヤですね。元々は、17インチのサイズの筈です。18でもやり過ぎだと思っています。折角、サスペンションの堅さを換えられるDCCも装備してありますが、その効果を相殺するような仕様ですね。それと、最近のMQB仕様の車は、軽量化されて燃費も向上していますが、なじめない物がありました。それはオルガン式ペダルではなく、上から吊り下がっている形式なのです。そして、R-Lineの仕様は、それがメッキ仕様で、雨の日は滑りますし、その小さな足や開いた姿勢ではそのペダルに届かないことがあります。試乗する度に困っていました。これは新しいAudiも同じです。
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MQBのプラットホームは、軽量化や性能向上を果たしているそうですが、客側から見ると、合理化されすぎて全体に安っぽくなっています。現在乗っている10年前のパサートの方がインテリアの材質や装飾が上質だったように思えます。そこまで思い至ったとき、上質といえばと、急にパサートの上級機種、クーペタイプのCCのことを思い出しました。今年の7月にカタログ落ちした機種です。VWとしては大変おしゃれな車ですが、そういうお客はAudiに行きますから、日本ではあまり人気が無く、新しいモデルが発表されていないにもかかわらず、販売中止になったのです。

家に帰って、程度のいい車が、載っていないか検索してみました。すると、人気がなかった機種なのか、販売を終えたばかりで在庫が残っていました。528万の車でしたから、諸費用を入れると、580万を越してくるのが、0.1〜0.4万キロの展示車で440〜460万でした。100万ぐらい安くなっていますね。1.4Lの安い方の仕様で込み込み400万でしたから、いろいろな装備をすべて含んだ高級車の仕様のCCは、車の代金を比べると、200万ぐらい安くなっていると思いました。
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ccは現在のプラットフォームモデルではなく、私が乗って来たタイプの最終形です。ですから、ハンドルの形状は、上の写真様な今の下が平らな変形ハンドルではなく、前のタイプの丸い形状です。実際に回してみればすぐに解りますが、丸の方が自然です。下の写真を見れば分かりますが、ウッドパネルの質感も旧型の方がお金が掛かっていました。10年経ったのに、同じ車に乗っているとも言えますが、10年間いろいろなところが進歩した最終形に乗るとも言えます。ダッシュボード回りの質感、本物のウッドパネル。自動追従装置や、衝突防止ブレーキ、レーン変更の警告、など必要な装置を積んでいます。ハンドリングや乗り心地が変わるDCCなどは欲しかった装置です。日本では発売されないフェートンの代わりのVWの最高車種なりますので、300万以上も高価なライバル車に積んである装置は全て含んでいます。

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ロムチューンした2Lターボ車に比べれば、やはり1.8Lは見劣りします。トルクカーブもフラットではなく、ピークを持つタイプなので、ある程度回さないと力が出ないことでしょう。この車も、専用のチューンを施すつもりです。そうすればストレスが無く載れると思うのですが。

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10年目でようやく、次の車にバトンを渡せる今の車を久しぶりに掃除しました。内装もきれいにしてみました。10年前のこだわりがウッドパネルに現れています。今は、このウッドドパネルが手に入らなくなってきて、超高級車にしか見られなくなりましたね。落ち着く内装なのですが、残念です。

10月1日は

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忙しかった九月の末日をようやく越した10月1日は、いろいろな約束が入っている忙しい日になりました。本来はお客さんが来られる予定で、演奏会はキャンセルして、有楽町のオーディオショーは夕方だけ参加する予定を組んでいました。その方が来られなくなったので、それならばと、午後は紀尾井ホールのでの、小菅優さんとそのお仲間の室内楽のコンサートに行きました。

紀尾井ホールのスケジュールが来年度から変わるので、その間に、普段と少し違うアンサンブルを仕様という試みです。小菅さんはソロピアノより、アンサンブルをするときの方が皆さんと良くあわせているので聞き応えがあります。暗譜で演奏するピアノソロやピアノ協奏曲は、例えばエジュエーワや遠くはリヒテルのような常に楽譜で確認する演奏に比べると、いいい意味では主観が、悪くいうと少し独りよがりになる事もあります。今日はアンサンブルなので、いい方に出ると期待していました。

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最初の曲は、ショパンのピアノ協奏曲を弦楽五重奏と演奏するというなかなか聞けない演奏です。ピアノの音量がオーケストラではないのでコントロールが必要です。小菅さんは、暗譜でなおかつ皆さんの演奏に合わせてうまくアンサンブルにしていました。深刻な曲というよりも、楽しく音を合わせるというなかなか聞けない演奏スタイルでした。

第二部は、サンサーンスのデンマークとロシアの歌による奇想曲という変わった曲で、フルート、オーボエ、クラリネットとピアノの競演です。N饗トップのオーボエとクラリンットは、音が安定していました。フルートは新日本フィルの人で、音色が繊細できれいでした。新日本フィルの音色とN饗の音色の違いが図らずも出て面白かったです。小菅さんはアンサンブルを合わせる役割を負って大変そうでしたが、終わったときの満足そうな顔を見るのは楽しいです。

さて、最後は、サンサーンスでは、一番有名かもしれない動物の謝肉祭です。室内楽版はPHLIPSのアルゲリッチが有名です。アルゲリッチ、フレイエのピアノ、クレーメル、マイスキーに代表される演奏者が名人ばかりの超有名版です。音の良さも特筆もので、しかし、再生は大変難しいCDとしても知られています。また、オーケストラ版では、プレヴィン・ピッツバーグ饗がすばらしく、これもPHILIPSの初期版で愛聴しています。弦楽器のこすれるリアルな音が、最初期のCDから聞こえてきて、この音が再現できればレコードと惜別できると思った盤です。GRF+SD05のコンビで、最初に聞いた感激は忘れません。これと質感がすばらしいのはハイティンクのマーラーの四番ですね。CDの音がレコードより悪いとお嘆きの諸兄にはこのCDのオリジナル版(必須)を手に入れて、装置の調整をし直してもらいたいです。

という訳で、私には大変おなじみの曲です。二台目のピアノが大事なのですが、伊福君のピアノは少しテンポが小菅さんと会わず、タイミングが遅れていました。指揮者がいないアンサンブルですから、勢いタイミングの取り方が難しくなります。配置が難しいですね。アンサンブル重視でいえば、ピアノ奏者とその他の楽器奏者が向かい合った方がアンサンブルがとれると思いました。曲間もあけずに連続して演奏した方が、曲と曲のつながりも良く、躍動感もより出たと思います。しかし、全体には小菅さんの陽気なキャラクターが発揮されて楽しい演奏でした。

演奏会が終了すると、会場であったBellwoodさんと一緒に四谷駅に向かいました。信号をわたって四谷駅に入る直前で、そうだ!こちらは離れているけど、オーディオショーの会場には有楽町線が早いといいだして、そこから有楽町線まで歩かされました。有楽町線まではかなりあります。後からはかったら700メートルでした。時間的にはやはり電車の方が早かったですが、遠回りするJRではなくそのまま丸の内線で、銀座でもよかったのです。Bellwoodさんの背中を見て、息を切らして歩きました。毎週、水泳をして鍛えているBellwoodさんとの差がでます。この年になると、歳の差も実感する事になりました。ようやく着いた麹町駅から電車に乗ったら有楽町までは二駅ですからあっという間でした。運動になったからいいか!と思い直しました(笑)。

会場に着くと自由行動です。先に登録用紙に記入していた私はそのままカードをいただき、来たエレベータに乗ると隣に「にらさん」がいました。早速、彼の高いシンクロ性が発揮されて笑ってしまいました。会場の外はそれほど人が多いとは思いませんでしたが、各ブースの中は満員です。評論家の先生の稼ぎ時ですね。おなじみの先生が、ブースごとに全く違う事をいうのは、連続して聞くと笑ってしまいます。当たり前ですが、何事も仕事になると大変です。

京都人さんからいわれていたキソ・アコースティックを最初に訪れましたが満員です。それでも滑り込むと、外人の人が流暢な日本語でレコードをかけていました。音は、京都人さん宅で聞かせていただいた、驚異的な音場は無く、最新機のウーファーが4本ついた機種がなっていました。私には、折角のオリジナル機のよさがスポイルされていると思いました。値段を聞くと驚きます。レコードの再生だけでは定位のよさがでない場合もあると思い、その後三回ぐらい訪れましたが、いずれの印象も同じでした。あの様な会場で、繊細な音を聞かせるのは、難しいと思いました。またセッティングのずれも気になりましたが、これは出品者の責任ですね。

EMMの新機種を見に、Hさんや大山さんと落ち合って訪れました。こちらもいい音ですが、新機種の違いはわかりません。ただ、鳴らしている音量も適正で聞きやすいとは思いましたが、それ以上の差は会場ではわかりませんね。昔のベーゼンドルファーのSPも聞きにいきました。こちらは最近s.yさんが、B&Wから換えられたので、薦めた手前聞きにいきました。しかし、音量も大きく、私が気に入っていたベーゼンドルファー時代の音はしませんでした。こちらもセッティングをし直さないとだめですね。

10社ぐらいまわったでしょうか、どのブースも満員で、皆さんの関心の高さと、あこがれの大きさを感じました。しかし、どの機種も平気で数百万以上を示しており、一通りそろえると、フェラーリーが買える値段には驚きます。会場で大山君と我々が実験している費用に比べるとあまりの高さに驚き、Hさんも、今回の実験から完成した我々の装置のコストパフォーマンスの高さに今更のように驚きました。

六時を回って、近くの中華料理屋さんに向かっている途中で、幹事役のvafanさんから連絡が入りました。時間を過ぎていてご心配をおかけしました。目標のビルの地下ちょうど正反対側でした。お待たせして申し訳ないです。参加人員はなんと26名でした。幹事役の皆さんのご苦労を思うと感謝しても仕切れません。いつもは、こういう会を担当する事が多いので、幹事さんの苦労は身にしみています。

オフ会では、皆さんの楽しい挨拶が面白く聞かせていただきました。出席者では、s.yさんとBellwoodさんが一番歳が近いのですが、気がついていたら私が一番年寄りになっていました。いつの間にかそういう時代になったようです。挨拶も最後にさせていただきましたが、ピッチャーでのビールのピッチが早かったので、無いをはしたのか、良く覚えていませんが、ただ皆さんにお会いできてうれしいということと、オーディオは個人的な趣味ですから、何をしなければならないとか、決まりがある訳ではなく、その人の経験や趣向によって千差万別で、だから楽しいとか話したように思います。いずれにしてもこのような会に参加できて、またいろいろな方にお会いしてよかったと思いました。

二次会に繰り出す若い?メンバーを置いて、S.Yさんを有楽町駅で見送り、丸の内線の銀座まで歩きました。おそらく私には最後のオーディオショーでしょう。商売としてのオーディオのマーケットとして日本のマーケットは年々小さくなっていくのでしょうか。会場に沢山来ている外人の話を聞いていてそうもいました。こういうショーに来られる若い方は、価格が高いからこそ憧れるスーパーカーマニアみたいな心境なのかと思いました。地下鉄はいつもワープです。いつもの駅まで地下鉄で戻ってくると結局、雨は降っておらず、忘れてきた傘を思い出しました。幹事さんからメールが入っていて、預かっておられるそうです。ご迷惑をかけてすみません。いろいろとありがとうございました。

明くる二日の日曜日は 

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土曜日のオフ会は飲み放題の店だったので、次から次へと出てくるピッチ入りのビールをやはり飲み過ぎたようです。加えて、紹興酒なども飲んでいたようです。それでも、時間限定ですから助かりました。最近多い中国人の経営の店ですから、中の雰囲気は上海の大衆店の感じで、料理はいろいろ出てくるのですが、美味しいというレベルに行かないのは仕方がありません。でもこういうような会合でなければ、これないので、いい経験でした。

日曜の朝は、のんびりした感じあるのですが、いろいろする事があるので、忙しい感じも交錯します。それでも、起きだしたのはいつもより遅い八時半頃でした。飲んだ割には、時間が短かった所為か、それほどダメージは無かったようです。強いお酒を飲んでいないからでしょうね。最初の一時間は、昨日できなかった仕事をしていたら、やはり日曜という気分ではなくなりました。今日は、11時にお客さんが来られますので、それまでに片付けなければ行けない事があります。また、先週は忙しかったので、GRFの部屋の音のチェックもしなければなりません。

和室の方は、DAコンバーターの調整もあり聞いていたのですが、前のお客さんの後はGRFの部屋の方はあまり聞いていませんでした。Oさんが来られたときに少し聞いて、今少し調整をしなければと思っていました。結局音が聞けたのは、10時を回ってからです。ほとんどいいのですが、今少しと触ったのが、行けませんでした。触る前の音であっていたのです。元に戻すのには、最初からやらなくてはなりません。ようやく、あってきたのは、お客さんが来る10分前でした。

最近は、お招きする方のお宅に先にお邪魔して、聞かれる音楽や音を聞かせてもらっています。その方が、ピントが合いやすいからです。初めてお会いする方はその点がわからないので、時に困惑する方もおられます。私のブログを読まれていて、時として、初めての方も来られる事があるのですが、そう人に限って、その後、メールもくれない方もおられました。別に、感想を強要しているのではないのですが、何もその後連絡が無いのは、こちらとしても不安になります。結果として、一見さんお断りになってしまいます。当方も仕事で疲れている、休日をあけています。来られる前には、山のようにメールが来て、来られると一枚も来ないとこれは残念だし、不安になりますね。常連さんとご一緒でも、後からいわれない嫌がらせを受けた事もありました。当方は、個人の家に招き入れるのですから、それなりの礼儀は必要だと思います。

今日のお客さんは、昨日も有楽町でお会いした「にらさん」とご友人の「genmiさん」です。にらさんは、来られていますが、genmiさんは初めてお会いする方です。どういう音楽をお聴きになっているのか存じ上げないので、何をおかけするか考えましたが、にらさんにいつもお聞かせしているCDにしました。

来週早々の出張の準備もあるので、今日は早く始めて、早めに切り上げるように努力しました。興が乗ってくるとなかなか止まらないので、これが意外と難しいのです。


GRFさん

昨日はお忙しいところお邪魔させて頂きありがとうございました。また、美味しいお酒とお蕎麦をご馳走になり夢心地でした。ありがとうございました。

にらさんやベルウッドさんからGRFさんのことは何度もお聞きしてしていまして、以前からずっ興味がありました。そのようなこともあり、かなり期待して伺ったのにもかかわらず、その期待を裏切るどころか、想像を絶する音がしたので最初はただただ呆然としてしまいました。

和室のユニコーンは存在感抜群なのにスピーカーをまったく感じさせない独特の音場感や、身の詰まった力強い音に十二分に感動し、すでにその時点で未体験のサウンドだったのですが、メインシステムの音はもうオーディオといった枠から飛び出したサウンドで、一瞬にして私の「オーディオ」の概念が変わりました。高音や低音、バランスがどうのこうの言っている次元ではなく、ただそこに実在の音楽が広がる世界でした。

様々な音楽を聴かせて頂きましたが、私が普段聴かないオペラや知らない曲も音楽的にとても魅力的に聴こえて音楽の世界に引き込まれてしまう感覚は今まで経験したことがありません。2chオーディオでもここまで立体感が出せることや、14ビットのCDプレーヤーでも素晴らし音を奏でることなど、本当に勉強になり大変すばらしい経験をさせて頂きました。

ですが、家に帰って自分の音を恐る恐る聴いてみましたら、GRFさんやキリンさんのサウンドとはまったく違っていわゆる「オーディオの派手目な音」なのですが、それはそれで自分の好きな音なので気持ち良く聴けました。違うベクトルのオーディオなのか、行きつく先はGRFさんのサウンドなのかは正直今の自分では判断できませんが、生の演奏に匹敵する音がオーディオ装置から出せるといった事実を知れただけでも非常に大きな収穫でした。

このような貴重な体験をさせて頂きありがとうございました。これに懲りずにまた色々と教えて頂けたら幸いです。よろしくお願い致します。

という丁寧なご連絡が、翌日にありました。感心したのは、帰って聞いたら自分お好きな音だったので気持ちよく聞けたというところです。先日のオフ会でもお話しさせていただいたのですが、100人いたら100通りの好きな音があるのです。同じ音にする必要はありません。ただ、こういう音もあるのだと、経験として聞いていただければそれでいいと思っています。


GRF様

先日はお忙しいところ大変お世話になりました。
自分にとっては、前回のエポック体験であります「音場放浪記〜阿佐ヶ谷編」がなにしろ一つの節目になっています。

さらに今回は別のアプローチをされているとのことで、ただただ期待は高まるばかりでした。

和室のシステムは敢てジャズ向きにセッティングをされたとのことですが、一聴してなるほどと感じました。以前はやや遠目のステージに音像が映写機のように現れ、その精緻なリアル表現に息を飲むような、ある種の緊張感のようなものがありました。

しかし、今回はそれよりもほんの少しだけ音が前に出てきて、ダイレクト感と多少の大らかさのようなものを感じました。とはいえ、根底となる音楽的なバランスは確固としてありますから、その辺の絶妙なスパイスがGRFさんならではの遊び心と受け止めました。

とにかく聴いていて楽しい。

最後のカウントベイシーは本当に和室がスイングしてました。昔からのシステムみたいにどっかの帯域を誇張したりぶった切ってるわけでもなく、最低域も良く伸び、全域フラットで位相が完璧に揃って尚あれだけの凝縮感と色彩感溢れる鮮烈さは、並々ならぬ機材の使いこなしや感性の賜物なのだろうなと改めて痛感しました。

また、前回の体験を一つの指標とさせていただいておりましたので、拙宅との共通点も見出すこともできました。平行法でセッティングを詰めていくと出音が似てどんどん自然になっていく、そして最終的にはそれぞれの機材の位相特性やニュートラル特性が個性として露わになる。それが(自分も最重要アイテムとしている)MITの仕業でもあり、共通項なのかなと感じました。

とはいえ、まだまだうちは甘い部分が多くありますし、今回再確認できたことを持ち帰りさらなるステップを踏んで行きたいと思います。引っ越しなさいは無しでお願いします(笑)しかしまあ、どの椅子で聴いても全く同じ音がするし、部屋サイズを超えた相変わらず凄い空間でした。

さて大きい方の部屋です。

和室では拙宅との共通性やなんやら調子よく考えていたのも束の間、跡形もなくまた突き放されてしまいました。

相変わらず圧倒的なぶっ飛びワープな非現実空間。

いや、あまりに音が等身大リアルすぎて非現実的な超現実サウンドというべきか、なんだかよく分からない表現になってしまう(^_^;)コンサート体験すら無い浅学な自分ですが、想像だけしていた擬似ホール体験が本当のホールに来てしまったような、気がつけばまたあの緊張感を強いられていました。

リスニングポイントから先の空間全てがリアルステージとなり、各楽器が等身大で実在し、ホールの響きが丸々と存在する。前回同様、そこにオーディオの存在は無く、リアルに演奏者だけが目の前にあるということに変わりはありません。

しかし、今回はさらに立体的で前後の奥行きや、暗騒音やホールの厳荘な雰囲気をも色濃くあるといいましょうか、すみません、リアル体験の無い者がいくら言葉を重ねても説得力ないですね・・。

和室はどこに座って聴いても同一サウンドでしたが(それだけでも普通の方からすれば信じられないでしょうけれど)ここでは席を移動するとそのままリアルにホールで座席移動をしたかのような違いができます。まさに3Dサウンド!

記録された歴史上の世界の名演奏が実物大で目の前で楽しめるという、夢のような現
実がここにありました。

来られる方々は、どうしてもGRFさん宅の目立つ部分が反則技のように感じてしまうのでしょうけれど(凄い部屋構成や構造等の環境、思いきったSP設置、改造機器や360度指向性のユニットなど)実はそれらはあくまで表皮的な部分に過ぎず、核心となる部分は理詰めでかつ、徹底的に基本に忠実な事をやられているなと感じました。

そういう基本的なことを疎かにして、アクセサリーや何やらで音を弄るのは如何なものか、というご意見なのだと受け止めています。ごもっともです。

GRFさん、今回もまた貴重な機会を頂き誠にありがとうございました。

にらさんからのご感想も、すぐいただきました。過分なおほめですが、詳細な感想で、核心を突いています。どのような方法であれ、上り道は沢山あっても頂上に近づくと同じような風景が見えてきます。また、富士山ばかり望むのではなく、裏山の小道にも自然の驚きは沢山あります。音の世界という自然に戻って楽しまれると沢山の驚きと喜びが待っていると思っています。

先日のショーでのような高価な装置である必要はありません。基本的なSPでも、中古でも使い方一つで奇跡のような音の世界が開かれます。高価な装置に憧れるのではなく、ご自分の知識を最大限に発揮して、工夫をされて、『賢者の音』を出していただきたいと願っています。

中学生のときに、初めてステレオサウンドに触れていらい、その驚きと感動を求めて、50年以上走ってきました。つい最近、見晴らしのよい尾根道に出られたようです。上を見れば遥かな高峰もあるのですが、雲海の隙間から下を見ると、一歩一歩上ってきた現在の標高によく上ってこられたという驚きと、達成感もあります。

稜線上を吹く風は、涼しく汗が引く気持ちよさですが、そのまま同じところにとどまっていたら、今度は体の芯まで冷えてしまいます。折角の稜線上の景色ですから、踏み外さないように気をつけながら、次のピークに向けてゆっくり進もうと思いました。


初めてのスカイライナー

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急ぎの打ち合わせで、オランダとベルギーに行きます。飛行機が混んでいて行きと帰りが違う便になってしまいました。成田から出て羽田に帰ってくるのです。これでは、成田に車を置いては置けません。いつもは車なので困りました。出発が朝のラッシュアワーの時間帯なので、バスは時間が読めません。そこで電車で行く事になりました。新宿から成田エクスプレスもあるのですが、時間帯があわないのと、朝のラッシュの時間に新宿駅の構内を端から端まで荷物を持って歩きたくありません。成田に行くのが一番早い電車は、やはり京成ライナーです。問題は、そのラッシュの時間帯に日暮里までどうやっていくかです。早めに出て高円寺まで行き、すいた車両を見つけて神田まで我慢する事にしました。

ところが、晴れて天気はいいのに青梅街道でタクシーが拾えません。乗っていたり回送の車ばかりで、10分以上待たされました。高円寺駅につくと、ホームはそれほど混んでいません。しかし、次の電車は通勤ライナーでゆっくりと通りすぎていきます。こうなると行けません。前の駅から待たされた乗客が満員で来ました。とても、荷物を持って入れる状態ではありません。次に列車も一番後ろで待ちましたが、やはりラッシュになりあっという間に満員です。

困りました。隣のホームを見ると総武線の各駅は座れるぐらいの混み方です。荷物を持って、またエスカレーターを乗り継ぎ隣のホームへ。すぐ来た総武線に乗ると次の中野で座れました。仕方がありません。このまま秋葉原まで各駅で行くしかありませんね。日暮里駅からは20分ごとにスカイライナーが出ています。8時22分発に乗りたいのですが、このまま行くと8時15分に着くようです。乗り換えや切符の購入を考えるとぎりぎりですね。でも、スカイライナーは次の列車でも間に合うので、悩むのはやめました。各駅停車で代々木、千駄ヶ谷、信濃町、市ヶ谷、飯田橋、水道橋と普段止まらない駅を楽しむ事にしました。秋葉原から日暮里は、京浜急行です。山手線よりすいているのは、通勤と反対方向になるからですね。
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日暮里は、京成への乗り換え口なのに、エスカレーターが無く、荷物を持って皆さん歩いているようです。エレベーター張るのでしょうが待ってられません。特急券と乗車券を買って、通り抜けようとしたら、駅員に止められました。JR側の改札を終えていないからです。それはそうだと思いました。スカイライナー専用のホームがあり、指定の列車番号の前に着いたら、ゆっくりと列車が入ってきました。ほとんどの人が、日暮里から乗る為停車時間は取ってありますが、列の後ろの方だったので乗って荷物を台に載せたら発車しました。荷物棚から一番近い席だったので楽です。
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滅多に乗らない京成線ですから、小学生のように窓にかじりついていました。残念なのは、洗う隙が無いのでしょうか、中国の列車のように窓がきれいではありません。折角、中国からのお客さんに日本のきれい好きを見せられるチャンスなのですが。それはともあれ、常磐線とわかれ、すぐに隅田川を渡り、千住大橋をすぎると大きな荒川を渡ります。この放水路を掘ったのですから大したものです。
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荒川を渡ると堀切菖蒲園。ゆっくりと見物をするように列車は走ります。右から押上線が近寄ってくると青戸駅です。この辺りは下町の典型ですね。中川を越えると京成高砂駅。寅さんがいつも乗り換えていたところです。そこから京成本線から分かれて北総線に入ります。見慣れない新柴又駅をすぎるとすぐに江戸川です。寅さんの映画に出てくる堤防は、左手の窓に見えています。

列車は、江戸川を渡って千葉県に入った途端にスピードを上げ始めました。早いです。京成線は関東では珍しい標準軌を使った線路です。京浜急行との乗り入れができるように換えたのですね。そのため安定して速度を上げられます。最高速度は160キロだそうです。十分な早さです。高架が多い北総線は新幹線みたいな作りです。委細構わずワープするように飛ばしていきます。鎌ヶ谷、白井、印西と通り過ぎてあっという間に印旛沼が見えて来ました。遠くの台風の影響でしょうか、夏の空と秋の空が混じっているようです。
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北総線から、成田空港アクセス線とターミナルに乗り入れている成田空港高速鉄道徒をつないで空港に入ります。利権の巣窟です。これも石原慎太郎が運輸大臣の時に行われました。豊洲と同じ構造ですね。その結果、日暮里から37分で空港に着きます。しかし、当初の計画は、成田の地下から新幹線を通して羽田の地下まだつなぐ予定でした。駅は当初から両方のターミナルにできていました。新幹線ならば、羽田ー成田間を30分で結んだでしょう。港湾の行政と同じようにどれほど、仁川や上海に遅れを取ったのでしょうか?誰も責任を負わず国家的損失を与えてきたのです。初めて乗ったスカイライナーは、窓からの風景と同時に日本の談合体質、利権体質を考えさせてくれました。
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