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Channel: GRFのある部屋
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音は入力の質によって決まる

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トントン・コツコツといろいろな言われ方をされていますが、SPの位置調整の最後の行程を表現していただいた言葉です。位置探しを煮詰めていって最後に到達したポイントから、1mmでも違えると、そこまでピントが合っていたので、ほんの少しの狂いでも、その差が大変目立って聞こえるのです。先日、1mm違うと音が変わると聞いて、ご自分のSPを1mm動かして見たけれど、何にも変わらなかった!1mmで音が変わるなどと人心を迷わす発言はどうかという、ご意見をみました。最初は大笑いしましたが、何重の意味でも、驚き、呆れ、最後に考えさせられました。

平行法と交差法という呼び方は、恐らく私がオーディオ用に命名したのだと思いますが、元々は、立体写真の見方です。ステレオ写真を見るときに右で右の写真を見るのを、平行に見るので平行法、逆に右目で左の写真を見て頭の中で立体像を浮かび上がらせるのを交差法と呼んでいます。平行法では立体像は奥に立体像が展開して、交差法では前に浮かび上がってきます。GRFの様な45度配置をすると必然的に音が前に浮かび上がってくるのです。

その意味では、 SPをコーナーに置いて、角度を微調整する交差法の方が音合わせは簡単かもしれません。気を使うのは、壁からどのくらい離すかです。これは何回か試行されれば自ずと解ってきます。問題は平行法の方で、最初に決めなくてはいけないのは、 SPを部屋のどの位置に置くかです。これが一番難しいかもしれません。そして次は、左右の間隔です。左右の壁に近すぎてはいけないし、と言って、左右の間隔が狭すぎてもステレオが拡がりません。それが決まってから、厳密な意味で位置調整を行うわけです。

モノラルの音源を使って位置を試行錯誤されれば、どうなればどの様になるのかが、だんだん解ってきます。モノラル音源に含まれている残響がしっかりでてくると、ピッタリと定位しながら、広がりと奥行きのある安定した音が出てきます。その段階で、真のステレオ音源を使うと、驚くほどの立体音像が出現するのです。

そのステレオのソースに、スタジオの調整卓で人工的に振り分けられた音源を使っていると、これは迷路に入ります。クラシックの音源でも、なるべくステレオ初期に少ないマイクで収録された音源が素晴らしい立体像を再現します。その時に、自分が一体どの様な音を求めているのだと言う、目標が必要です。それは思い立ったら出てくる物ではなく、実際にいろいろなホールで本物の音を聞いてきた経験が、判断の基準になります。

しかし、ここまでの調整は、装置の前提条件なのです。この位置が決まるとようやく、様々なソースの特徴、利点が見えてきます。もちろん各方式ごとに特徴があり、出来ることと出来ないことはありますが、欠点は音ではなくて、音楽性だけになって来ます。要するに、どのメディアでも究極は音楽が楽しめれば良いのですが、音楽を離れて音の質だけをとらえれば、各メディアの差もはっきりと表れてくるのです。

現在、中古品も含めて、手に入れられる音源を並べて見ると、

1.78回転SPレコード
2.モノラルEPレコード
3.モノラルLPレコード
4.ステレオLPレコード
5.ステレオEPレコード
6.2トラックモノラル・ステレオ オープンリールテープ
7.4トラックステレオ オープンリールテープ
8.8トラックテープ
9.カセットテープ
10.CD (16bit/44.1kHz)
11. dccテープ (18bit/44.1kHz)
12. SACD (DSD 2.8MHz DIF)
13. PCM 配信 (16bit/44.1、48kHz) (24bit/88.2、96、176、192kHz)
14. DSDファイル (2.8MHz/DIF、5.6MHz/DIF)

最後のDSDは、まだ試験的運用ですね。なかなか音源探しが難しいのです。2008年の暮れに、杉並公会堂でBIG BAND JAZZをToddさんの録音で収録しました。ワンポイントマイクでビッグバンドをアンプラグで録るという画期的な試みでしたが、とても上手く録れました。その中の、一曲『A列車で行こう」が、この間、アキュフェーズ社のDEMO用アルバムに収録されました。非売品ですので、販売店の店頭でしか聴けないでしょうが、CDとSACDがシングルレーヤーで収録されていて、各々の特徴が解ります。音源はDSDファイルで提供しましたので、DSDファイル盤も出るのかもしれません。

映画をまるまる収納できるをDVD盤でも、実質4.37GBですから、DSDファイルだと、ぎりぎりCD一枚分の容量です。その意味でDSD5.6MHzは、大変贅沢な仕様だといえますね。いままでテープから変換してきたファイルも1TBの大容量ハードディスクで、250枚のアルバムをようやく収録できるぐらいです。それが実現したのもここ二三年の出来事です。しかし凄い時代になった物です。ハードディスクの信頼性を考えて、バックアップで倍の容量が必要ですから、現在私の机の回りには、8台のハードディスクがあります。少なくとも3台は常時動いていますので、その回転音が、あたかもアンプの残留雑音のように聞こえ、先日、来られた耳の良い方に指摘されました。ハードディスクの音だと説明したぐらいです。

DSDでの収録は、音質を変えることなく後からどの様なメディアにも変換できます。その意味では現在究極のメディアですが、現実的には、24bit/96kHzにするまでもなく、 DATの規格の16Bit/48kHzで充分だと思います。CDとの違いは、44.1kHzと48kHzの違いだけですが、私には、光学系と磁気テープの安定性の差の方が大きく思えます。90年代はプロ用にもDATが主流で使われました。再生する側では、確かに光学系の光ディスクに比べると、アクセス性に問題がありますが、音質と安定度では、充分だと思います。その意味で、24Bit/96kHzでマスターリングされた昔の音源が、オリジナルシリーズとして随分復刻されましたが、アナログ音源に比べて、PCMに変換される過程で、何か不純物を失い、音の危うさみたいな物が消えてしまいました。そこが、DSD変換との大きな違いだと思います。

DSDで収録されたファイルも、そのまま、DSDで聴く音と、PCMに変換された音では、違って聞こえます。誤解を恐れずに言えば、PCMの音は、きれいにラップされた商品見たく聞こえるのです。50年代でも、マスターテープのグレードですと、現在の水準と何も変わりません。レコードで聴く、昔懐かしい音はせず、昨日収録されたような、普通の音なのです。よく映画のプロセスで、わざわざノイズを入れて、色彩を退色させて、昔のフィルの感じを出した画面がありますが、テープでは、普通の音をイコライジングして、レコード特有の音にした物を、有り難がる傾向にありますが、テープには、現在と同じ様な音質で入っており、そのギャップに驚くぐらいです。

78回転のレコードでも、溝に正確に合わせた鉄針を毎回交換して聴けば、その音はやはりテープと同じ音がすることに驚かれるでしょう。瘠せたうるさい音ではなく、柔らかく、暖かい音がして感動します。音の質や、S/N比はもちろん隔世の差がありますが、正しく再生された音の傾向は、皆同じだと断言できます。その意味で、レコードよりもとの音に忠実なテープのDSDファイル化は、残して行かなくてはならない音源だと確信しています。装置の性能は、SPの調整よりも、音源の質による方がはるかに大きいと言えましょう。




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